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コロナ禍で8月の子どもの自殺者は2倍。対策は?

 コロナ禍で自殺者が増えている。数値を見ると若い世代と女性が増えていることが分かる。武蔵野市など自治体では「自殺総合対策計画」をつくり対策を進めているが、コロナ対応で見直しが必要ではないか。

■文科省は自殺対策を求めていた

 平成28(2016)年の自殺対策基本法の改正で自治体だけでなく、学校にも対応が求められるようになった。

 対応は、努力義務ではある心の健康などを行うことが求められ、また、社会の困難に対してSOSを出せるようにする教育も求め「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」を設置し、対応を協議している。

 令和3年2月15日にあった同会議の資料に「コロナ禍における児童生徒の自殺等に関する現状について」があり、ここに上記の驚くべき数値が示されていた。

 文部科学省は、令和2年5月27日に通知を自治体の教育委員会に出し、「新型コロナウイルス感染症に伴う長期にわたる学校の休業では,通常の長期休業とは異なり,教育活動の再開の時期が不確定であることなどから,児童生徒の心が不安定になることが見込まれる」と指摘。

 さらに「18歳以下の自殺は,学校の長期休業明けにかけて増加する傾向がある。特に新型コロナウイルス感染症に伴う長期にわたる学校の休業においては,通常の長期休業とは異なり,教育活動の再開の時期が不確定であることなどから,児童生徒の心が不安定になることが見込まれる。

 そのため,学校として,保護者,地域住民,関係機関等と連携の上,教育活動再開後の児童生徒の自殺予防に向けた取組を積極的に実施すること」として、「学校における早期発見に向けた取組」「保護者に対する家庭における見守りの促進」「ネットパトロールの強化」を自殺予防として求めていた。

 だが、8月には前年の倍の自殺者数となってしまっている。

■原因

 自殺の原因は、多様かつ複合的な原因及び背景を有しており、様々な要因が連鎖する中で起きているとしてはいるが、令和2年度では下記が上位5つの理由としている(<>内は令和元年度の人数と順位)。

 1:進路に関する悩み 55 <41②>
 2:学業不振 52  <43①>
 3:親子関係の不和 42 <30③>
 4:病気の悩み・影響(その他精神疾患) 40 <26⑤>
 5:病気の悩み(うつ病) 33 <20⑧>

 自殺の理由には、複合的な原因、背景があり単純に分けることはできないが、コロナ禍で学校が休みになり進路への不安や「うつ」の傾向が増してしまったのでは、と思えてしまう。

 このこともあってか、令和2年11月30日付けで再び通知を出し、5月通知に8月には2倍になったことなどを加えて、さらに予防策を行うことを求めている。その概要は下記だ。

■対応策は?

 18歳以下の自殺は、長期休業明けの時期に増加する傾向があること、特に令和2年8月における児童生徒の自殺者数は、前年度と比較し約2倍、そのうち、女子高校生の自殺者数は前年度と比較し約7倍となっていることを踏まえ、以下に掲げる取組を、学校が保護者、地域住民、関係機関等と連携の上、実施することを周知。

○ 各学校において,長期休業の開始前からアンケート調査,教育相談等を実施し,悩みを抱える児童生徒の早期発見に努めること。学校が把握した悩みを抱える児童生徒やいじめを受けた又は不登校となっている児童生徒等については,長期休業期間中においても,全校(学年)登校日,部活動等の機会を捉え,又は保護者への連絡,家庭訪問等により,継続的に様子を確認すること。

○ SOSの出し方に関する教育を実施するなどにより、「24時間子供SOSダイヤル」や、SNS等を活用した相談窓口の周知を長期休業の開始前において積極的に行うこと。

○ 保護者に対して,長期休業期間中の家庭における児童生徒の見守りを行うよう促すこと。保護者が把握した児童生徒の悩みや変化については,積極的に学校に相談するよう,学校の相談窓口を周知しておくこと。( ※「24時間子供SOSダイヤル」について児童生徒・保護者ともに利用できることを周知。)

○ 長期休業明けの前後において,学校として,保護者,地域住民の参画や,関係機関等と連携の上,学校内外における児童生徒への見守り活動を強化すること。

○ 都道府県教育委員会等が実施するネットパトロールの強化
都道府県教育委員会等が実施するネットパトロールについて,長期休業明けの前後において,平常時よりも実施頻度を上げるなどしてネットパトロールを集中的に実施すること。

■SOSの出し方教育

 この日の会議では、子どもたちがSOSを出せるようにする教育についての検討が行われたが、その資料を読むと、興味深い指摘がされていた。

 対策として有効と思われるのは、相談機能を拡充することと、ゲートキーパーなど相談を受ける人を増やすことがまず考えつくが、SOSの出し方に関する教育に関して下記の指摘がされていたからだ。

○SOSの出し方に関する教育の授業自体は1回で取り組めるということはあるが、子供たちの危機をどれだけ見極める目を周りの大人が持てるかという点に関しては、このプログラムでは非常に危険な気がする。

○(略)教員研修にどれだけ力をかけるかという合意形成の部分だと思うが、SOSの出し方に関する教育ではその部分が十分ではないのではないか。

○ 自尊感情の涵養は重要だが、それが1回の授業で、しかも外部からやってきた人のメッセージとして子供たちに定着するかというと、子供の環境が整わないと難しい。

○ 子供にしてみると、苦しみを語っていいのかどうか、信頼関係がないところでは、SOSの出し方を技術的に学んでも、SOSを出していいと思えないと思う。そういう意味で、下地を作るという、子供が大人を信頼してもいいんだというところがとても大事。

○ 自殺のリスクの高い子供たちに、SOSの出し方に関する教育を実施しても、周囲の者に相談してくれるなどの変化はあまり望めない。むしろこれらリスクの高い子供たちのSOSに周りの子供たちがいかに気付けるか、また、大人が相談されたときに適切に受け止められるかが重要であり、そのための体制を整えることが必要。

 つまり、これらの指摘を考えると、相談機能を拡充しても、そもそも相談者との信頼関係がないと相談にならない。さらにいえば、防ぐことが難しいということだ。

■横たわる多忙化問題

 さらに、教職員の間で、SOSの出し方に関する教育を実施する意味や目標について共通理解を形成しておくこと、授業を実施した後には児童生徒のSOSに対応することができるようにするために事前に研修を受講することは必要だが、そのための十分な時間をとれるのかの大きな問題が横たわっている。

 ただでさえ忙しすぎるのが教職員だ。子どもの命を救うために必要な時間を確保できるように「働き方改革」が求められているともいえる。それも夏休みまでに。大至急だ。

 11月通知を受けて各教育委員会が具体的にどのように動いたかまでの情報は、この日の会議では示されていなかった。倍増は単年度だけの数値となるかは分からないが、今年の夏休み以降が心配され、各自治体での対応を確認することが必要といえる。

※写真はイメージ

【参考】
文部科学省 児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(令和2年度)(第1回) 配付資料
※データは同会議資料より作成

コロナ禍で自殺者増。対策は? (2021年04月08日)

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