- 2021年04月15日 16:53 (配信日時 04月14日 11:15)
冨山和彦「東京にある企業のほとんどは日本の経済成長に貢献していない」
1/2どうすれば日本経済は復活するのか。経営共創基盤グループ会長の冨山和彦氏は「日本経済に必要なのはGAFAなどのグローバル企業ではない。重要なのはGDPの7割を占め、ローカルで商売をしているL型企業だ。L型企業のデジタル化を進め、人手を集めることで日本経済は活性化していく」という――。(第1回/全5回)
※本稿は、冨山和彦、田原総一朗『新L型経済 コロナ後の日本を立て直す』(角川新書)の一部を再編集したものです。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MarsYuグローバルIT企業は雇用を減らし格差を生む
【田原総一朗】冨山さんは今の時代を代表するGAFAのようなグローバルなIT企業は、雇用を生んでいないし、その結果として中産階級がやせ細ってしまうと言った。
端的にいえば格差社会だ。じゃあ、どうしたらいいんだという話になる。日本型企業の代表格だった企業はどんどん凋落(ちょうらく)していて、雇用の絶対数は減っていく。そうなると、持っている人と、持っていない人の格差は広がるし、地方も衰退していくまま。日本はこのままじゃダメだけど、何もできないのか。
【冨山和彦】たしかに日本型企業の代表格だったグローバル市場で戦う企業、私の言葉で言えばG型企業と呼んでいるものですが、そうした企業が今後大きな成長をすることは難しいでしょう。特に国内で大きなGDPや大量の中産階級雇用を生むという意味では。
デジタル化に関しては、もう多くの大企業で取り組んでいて、業務改善的な部分では遠からず世界に追いつくでしょうし、経営の多様化についても、行わない企業は衰退していくことは目に見えているので、どこかで改革は行われます。それでも伸び代は大きくありません。
日本のG型企業が生み出すGDPはせいぜい3割程度で、今後何かイノベーションが起こって30%が32%になろうが、33%になろうがマクロで見た時の影響はさほど大きくない。現実に雇用が劇的に増えるということも考えづらい。G型企業で雇用されている人々は全体で見れば2割程度で主に国公立や中堅以上の私大卒が中心となっています。彼らの雇用は新しい技術革新で減っていく可能性すらあります。
目を向けるべきなのは「L型企業」
そこで目を向けるべきは、残りのGDPの7割(人材でみれば8割)の世界です。グローバルではなくローカルで商売をしている、私がL型企業群と呼んでいる小売、卸売り、飲食、宿泊、エンターテインメント、地域金融、物流、運輸、建設、それに医療や介護、農林水産漁業です。
これらはコロナ禍で私たちの社会生活を支えてくれている、なくてはならない働き手、エッセンシャルワーカーとしてその重要性が再認識されている人々の多くが働いている産業群でもあります。
L型の特徴は地域密着で、その地域にいる人たちとフェイス・トゥ・フェイスでサービスをしている産業が多いことです。人と人とが顔を突き合わせて成り立っている産業は、結局のところ、グローバル化がいくら進んでも空洞化しませんし、工場のように移転をすることもありません。そして、デジタル化で効率化は進むかもしれませんが、最後は人手がどうしても必要な産業になります。
たとえば5G導入による遠隔医療の可能性なども議論されていますが、遠隔手術を行うにしても、現段階では画面の前に人はつきっきりになります。何かが起きた時のために患者さんの近くにも医師や看護師は必要です。
いま挙げたような産業は、新型コロナ禍で影響を受けてしまいましたが、メディア上の危機感はイマイチ薄かった。テレビ局は消費増税の影響などを新橋の街頭で大企業勤務のサラリーマンに聞きたがります。
しかし彼らは人口的にはマイナーな存在です。結局、GDPの7割を担うL型産業に8割の人材が従事しているのに、彼らの話は後回しです。
G型が日本経済の中心であり、G型企業が凋落していることが日本経済の根源の問題であるかのような言説がまかり通っています
日本にGAFA級の企業ができても経済成長できない
もちろんコロナ禍によってG型企業も打撃はあります。全日空は大きなダメージを受け大幅な人員削減を視野に入れた経営再建策を打ち出していますし、LCCのエアアジアは破産申請を行いました。それでもL型に比べれば概して体力がある人たちの打撃であり、グローバル製造業は中国経済の急回復や巣ごもり需要で下支えされている部分もある。実はもっと弱いところに痛みもダメージも生じているんです。その大半がL型産業に従事しています。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fannrei私の主張は日本経済の主流はG型産業ではなく、L型にあり、地域経済、地方経済が全国的に回復することなしに日本経済の復興はありえないというものです。GAFAのような企業が日本から生まれても日本経済全体を回復させることはできないんです。
そして、L型のほうがその先の日本の経済成長の上でも伸び代がはるかに大きい。付加価値生産性で言えば2倍、3倍の成長が見込める企業群が大量に残っています。なぜかといえば、まだまだ生産性が低く、デジタル化も進んでおらず、旧態依然とした日本型経営が主流だからです。
ポテンシャルや事業の割に低賃金な産業が多く、ここが変われば確実に消費の向上、経済成長の底上げになります。GDPとは付加価値生産額の総計ですから。生産性を上げるためにはデジタルシステムの導入がかなり効果を持ちますし、私が以前から主張しているように、最低賃金については政治主導でもっと上げるべきです。
産業構造が大量生産大量輸出型の加工貿易型でなくなった現在、歯を食いしばって低賃金で頑張る産業や企業を国内に残す意味はありません。実際、そういうモデルの工場に行ってみてください。大半が外国人労働者だったりする。それもブラックな働き方をしている。
【田原】L型のほうがかかわっている人が多い。
【冨山】だから、インバウンドに力を入れ、イベント誘致を進めるようになったわけで、観光業で人を雇用しようという動きが高まりました。地方都市を中心に飲食業もコロナ以前は好調でした。
【田原】L型企業の多くは今ね、元気がない。おまけに今回のコロナでやられているので、さらに疲弊している。さらにいえば、後継者がいない。本当に地方経済が再生できるのか。僕はよくわからない。
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