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警察が本格的に「ダンス仕分け」をし始めた件について

12月17日に客に「ダンスをさせる営業に係る質疑応答について」 という通達を出したワケですが、警察庁もいよいよ「危ない橋」を渡り始めたなと見守っておるところです。

客にダンスをさせる営業に係る質疑応答について
http://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/hoan/hoan20121217.pdf


上記通達は、昨今ちまたを賑わせている風適法によるクラブ規制問題に関連して公表されたもの。「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(略称:風営法or風適法)は、その規制対象となる業種として「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」を定めており、この法律違反の容疑で現在警察は絶賛摘発中なのですが、それに一部のクラブ事業者達が反対運動を繰り広げているというのが問題の構図であります。

但し、警察側の論にも色々とブレがありまして、そもそもダンスには盆踊りからヒップホップまで様々なバリエーションがある中で、警察が問題視している「ダンス」ってのは一体何なのよという素朴な疑問が出てくるのは至極当然の事。それに対して警察庁が、「4号営業の規制の対象となるダンスは基本的にペアダンス(二人で踊ることを前提としたダンス)である」との指針を示したというのが前回までのお話なのですが、今回はそれに引き続き「ペアダンス以外でも、3号営業では規制の対象とする。さらに、そこには例外を設ける」という論を組み立てております。


ペアダンス以外のダンスをさせるものであっても、併せて客に飲食をさせる営業については、3号営業として規制対象となる。ただし、外形的には「設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」に当たる営業であっても、当該営業の実態に照らして明らかに「享楽的雰囲気が過度にわたり風俗上の問題等を生じさせるおそれがある」とは認められないものについては、3号営業としての規制の対象とならないものと解される


法律の運用の中に行政判断の余地というのは当然あるワケでして、これが一概に「悪」であるとはいえません。例えば、風適法におけるゲームセンター(8号営業)にかかる規定では以下のように定められています。
 

遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗


いわゆる「法権限の委託」と呼ばれるものですが、風適法には上記のように「国家公安委員会規則で定める」など、政令や条例にその詳細内容の決定を委ねる条項が沢山含まれておりまして、これまでの風適法に関する批判というのは、これら法権限の委託の範囲やその内容が曖昧であるが故に、「そこに恣意性が生まれる余地がある」というものでありました。

ところが、今回の警察庁の発表はそれとはちょっと種類が違うもののように見受けられるところ。何故なら、風適法のダンスに係る営業に関しては、上記で例示したゲームセンターに関するもののような明確な法権限の委託を示す条項はないんですね。そのような中で、警察庁は「法律で規定された要件が外形的に揃っていたとしても、警察庁の判断の元で規制の対象から外す」ということを声高らかに宣言しておるワケでありまして、法治国家たる我が国における行政機関の公式発表としては、ちょっと危険な領域に踏み込みつつありませんか?と思うわけです。

上記、警察庁による通達には「ヒップホップは規制対象、盆踊りは対象外」などとの記述もありますが、このまま行くと世の中にゴマンとあるダンス種を全部並べた上で、一つ一つのダンス種を法の規制対象とすべきかどうかを判断するための、警察庁による「ダンス仕分け」大会を開催せざるを得ない状況。そんな事を警察が出来るわけもなければ、法律がその権限を警察庁に委任しているとは到底思えないのです。

ま、これは以前の投稿でも述べたところなのですが、警察庁の気持ちは判るのですよ。ダンスが義務教育の中で必修となってしまった現代の世の中で、数十年前に成立した制度体系を何とか維持しながら、運用解釈の中で時代の変化を反映させようと努力しているのでしょう。ただ、正直もうそろそろ限界ではないでしょうかねというのが、専門家たる私の主張です。

どの法律においても、時代の移り変わりによってその内容が陳腐化する事は至極当然の事であって、別にそこに行政運営上のミスがあるのではありません。むしろ、変に運用で乗り切ろうとして解釈に解釈を重ねた挙句「その運用は逆に法律違反だろ」と非難を受ければ、そちらの方が責任問題となるワケでありまして、早い時期に警察主導の風適法改正を進めた方が良いんじゃないのでしょうか?と思います。私としては、現状を至極客観的に眺めた上で建設的な意見を述べているつもりですが、如何なものでしょうか?

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