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問われる大学全入時代の入試の在り方(前編) - 樋口 健

画像を見る 大学数が増加する一方で、少子化の影響で減少する18歳人口。選り好みさえしなければ誰もが大学に入れる「大学全入時代」が、いよいよ現実のものとなってきました。そんななかで、当事者である学生自身は「大学受験」にどのように向き合っているのでしょうか? 
ベネッセ教育研究開発センターでは、今年8月、現役大学生を対象に受験体験と入学後の学習実態に関する調査(大学生が振り返る大学受験調査)を行いました。その結果をもとに、特に「推薦・AO入試」の実情と、「受験体験と大学入学後の満足度の関係」についてお伝えしていきます。

私大で増える推薦・AO入試とは?

より多様な学生を求める大学側の意向により、1990年代頃から増え続けている推薦・AO入試。文部科学省の資料によれば、私立大学では推薦・AO入試を受けて入学した学生が半数を超えています。そこでまずは、そもそも推薦・AO入試とはどんな入試なのかについて簡単に説明します。

《AO入試》
正式にはアドミッションズ・オフィス入試と呼ばれ、アメリカで生まれた入試形態です。学力に加え本人の研究課題が問われ、「この大学で何をやりたいのか」「そのためにどういう努力をしてきたのか」などといった内容の面接が行われ、学生の意欲を見て判断されます。国立大学では最終的にはセンター試験の受験が必要な場合が多いのですが、私立大学では面接などが中心で学力試験が課されないケースも多く見られます。また入学後に研究するような論文を提出させる学校もあるなど、多面的に人物を評価して合否の判断がなされます。

《推薦入試》
「指定校推薦」「公募制一般推薦」と大きく分かれます。指定校推薦は、大学から高校に募集枠が示されて、高校の中で応募、選定が行われ、学校長の推薦によって合格が決まります。原則として、併願はできません。一方の公募制一般推薦は、大学が提示した高校での成績等の基準を満たせば誰でも応募でき、一般入試と併願できるものも多いようです。試験の形はさまざまあるようですが、芸術や体育などの実技系学部などを除くと、一般的には面接を受け、小論文などを提出することで合否が決まることが多いようです。

大学入試が、受験生のハードルではなくなっている!?

これは一般入試にも言えることなのですが、近年特に、推薦・AO入試によって入学した学生の学力不足が指摘されるようになっています。一部の国立大学や難関私立大学の中には廃止する大学も出てきました。

今回の現役大学生を対象にした調査でも、推薦・AO入試の入学者の約半数が、高校3年時の学習時間が1日1時間未満という結果が出ています。また推薦・AO入学者の5人に1人(20.1%)が「受験対策をしなかった」と答えています。そしてその傾向は、入試難易度(偏差値)が低いほど強まっています。つまりこれは、学生にとって入試が学習する努力の対象として見なされにくくなったという状況を示しているのではないでしょうか。一部の競争原理が働いている大学は別ですが、無競争で入れる大学が非常に増えたということは、やはり問題だと言えるでしょう。

受験期の努力が大学入学後の満足度を向上させる

とはいえ、推薦・AO入試の入学者にも、入試に向けてしっかり努力を重ねた層は一定数存在しています。今回の調査で学生自身の受験に対する態度を尋ねたところ、推薦・AO入試入学者の38%が「あきらめずに努力し続けた」と答え、一定の学習時間をしっかりとキープしています。さらに、大学生活について思うことを受験に対する態度別に尋ねた設問では、「あきらめずに努力し続けた」学生ほど大学への満足度や学びの意欲を実感している割合が高くなるという結果に。しかもこれらの割合は一般入試入学者よりも高い傾向にあり、努力をし続けて合格したAO・推薦入学者たちのモチベーションの高さがうかがえます。ですから、ひと口にAO・推薦入学者といってもその実態はさまざまなのです。

明確に大学入試がハードルだった時代に比べれば、全入時代といわれる今は、さして努力しなくても入学できる大学も出てきています。そんななか、大学側には、以前のような「研究機関」としての役割以上に、若い学生を育てる「教育機関」としての側面が求められるようになっていると言えるのではないでしょうか。
後編では「全入時代」における大学入試の在り方についてお伝えしていきます。

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