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「デフレ脱却なしに財政再建はできない」は嘘

 安倍次期総理が本日経団連の会議で「デフレから脱却せず、そして成長せずに財政再建は絶対にできない。断固たる国家意思をもってデフレから脱却し、円高を是正させ、経済を成長させていく」と言ったとか

 この台詞、どこかで誰かが言っていたような内容です。オリジナルな部分はと言えば、「断固たる国家意思をもって」という箇所だけではないでしょうか?

 いずれにしても、肩に力が入り過ぎです。

 国家が断固たる意志を持てば、円安にすることができるのか? そして、国家が断固たる意志を持てば、経済を成長させていくことができるのか?

 Where there is a will, there is a way.

 精神一到何ごともならざらん!

 確かに、強い意志を持ち、そして目標を立てて努力することが人生にとっては必要かもしれません。そうしなければ進歩がない訳ですから。

 しかし、そうはいっても、思いどおりにならないのが人生というもの。むしろそう感じている人が多いのです。国も同じようなものでしょう。私は、逆にこれだけ少子高齢化が進む中で、日本が、僅かでも実質経済成長率プラス維持できていることこそ素晴らしいと感じているのです。

 こんなに子供の数が少なくなりつつあるなかで、どうして高い経済成長率実現できるなんて思うのでしょう? 例えば、国民一人ひとりが、毎年働く時間を例えば5%ずつ増やしていき、そして、消費も5%ずつ増やすようなことをすれば、それなら例えば実質でも3%ほどの成長率を実現できるかもしれません。しかし、そのように恒常的に労働時間を増やすことなど実現不可能なのです。

 それに、意志の力でデフレを脱却させたいというのであれば、意志の力で少子化の流れをなんとか変えることの方がどれだけ効果があるか! そう思いませんか?

 いずれにしても、デフレ脱却なしに財政再建はできないというのは、本当ではありません。嘘なのです。少なくても今の日本にとっては。

 確かに、日本がギリシャのように海外から多額の借金をしていて、そして家計や企業の蓄え限られているとするならば、国家の生産力をアップしない以上、財政再建できないでしょう

 しかし、日本は違う。

 何故ならば、日本の家計部門は1500兆円の金融資産を保有しているからなのです。負債を差し引いたネットの資産みても、1150兆円ほどの資産を有している。一方、政府部門は、負債が1100兆円強であるのに対し、資産は500兆円弱であるので、ネットでは650兆円ほどの負債があるということになるのです。

 安倍次期総理の言う財政再建が具体的に何を意味しているか分かりませんが、理屈の上では、国民が保有している資産を政府部門に移し替えさえすれば、すぐに財政再建は実現できるのです。

 違いますか? そうでしょう?

 もっとも、そんなことをすれば、確実に選挙で負ける。だから誰も実施できないでしょうが‥

 日本の家計部門が、江戸時代以前の人々のように、年貢を極限まで搾り取られているというのとは訳が違うのです。

 しかも、国民の多くが、日本の家計部門が1500兆円の金融資産を保有しているという事実を承知している。それなのに、何故、デフレから脱却できなければ財政再建はできないなんて言うのでしょう?

 誤解のないように言っておきます。私は、そんなことを実行すればいいなど少しも言うつもりはありません。そんなことを突然実施すれば、失意の余りに病気になってしまう人々が続出するでしょう。

 だって、そうでしょう? これから先の老後をそうした預貯金を取り崩して生きていけると思っていた、いきなりそれを奪い取られてしまう訳ですから

 だから、断じてそんなことをしてはいけません。

 しかし、そうであるにしても、家計部門のネットの資産と政府部門のネットの負債を合算すれば、まだ資産が多い状態にあるということは、誰も否定できないのです。

 そして、それについて一番よく承知しているのは、安倍さんを含むリフレ派の人々ではないのでしょうか? だからこそ、政府は借金はそれほど深刻に考える必要がないと言い、そして、借金をしてでも財政出動が必要だと言う。そうでしょ?

 なのに、何故安倍次期総理は、そのような間違ったことを言うのでしょうか?

 誰かがそのような考えを吹聴したのですよね。

 それに言っておきたいのは、デフレの脱却なしには財政再建ができないなんて言って公共事業の大盤振る舞いをするから、国の借金が膨らむのじゃありませんか?

 もう一つ大事なことを言っておきたい。

 今はまだ家計部門は大幅な資産超過になっているのですが、それにしてもこの10年間ほど家計の保有する金融資産は殆ど増えていないのです。そして、その一方、政府部門の負債は急激に増大している。つまり、少しずつ政府部門の借金が手に負えない状態に変身してきているのです。

 昨年我が国は、貿易収支が赤字に転落しました。このようなことが定着するようになると、我が国の純債権国家としての地位もいつまで持つか分からないのです。つまり、ひょっとしたらギリシャのような状態に近づくかもしれない、と。

 そして、中国が我が国の国債保有額を増やしていることも決して無視できない

 いいですか? これから先も国債を発行し続けると、中国の保有する割合がどんどん増えることになり、その意味でも我が国は中国に頭が上がらなくなる可能性があるのです

 それでいいのですか?

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