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【121カ月目の汚染水はいま】「ふるさとの海を守れ!」 いわき市小名浜で海洋放出反対の緊急スタンディング 「聖火リレーのどさくさで決めるな!」

「決定を急ぐのは間違っていると思います。私たちの声を聴いて決めて欲しいです。どうか汚染水を海に流さないでください」─。原発事故後に大量発生している〝原発汚染水〟の陸上保管を求めている福島県の市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」(織田千代、佐藤和良共同代表)が11日午後、いわき市小名浜で緊急スタンディングを行い、改めて海洋放出反対を訴えた。

政府は13日にも海洋放出を正式決定すると報じられているが、「暴挙であり愚挙。認める訳にはいかない」と、あきらめずに反対の声をあげ続ける。



【「暴挙であり愚挙だ」】


 「福島第一原発の過酷事故が10年前に発生しまして、いまだ多くの住民が避難しています。あの時、大気中に放出された放射能によって、いまだに多くの方が苦しめられています。農林水産業に携わる多くの方々が苦しめられてきた。それがこの10年です」

 共同代表の佐藤和良さん(いわき市議)は、日曜日の昼下がりで交通量の多い幹線道路に向かって語りかけた。

 「125万トンという汚染水を希釈して、薄めて、40年間も海に垂れ流すという計画。これを13日に『廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議』で決めようとしているんです。実はこれ、原子力災害対策本部の下部組織なのです。政府が閣議決定をして決めるのでは無いのです。つまり政府は責任を取らないんですよ。基本方針は決めたから後は東電が考えろ、という事なのです。政府は責任を取らない。東電も、国に言われたからやっているんだと。こういう無責任極まりない話が問題の本質です」

 「私たちが、福島県民が、漁業者が、一次産業従事者が、再び被害を受けるのです。これは暴挙で、しかも愚挙です。認める訳にいかないし、一人一人の力で撤回させる必要があります。30年も40年も汚染水が私たちの海に流されたら、漁業者は廃業せざるを得なくなりますし、水産加工業者の皆さんもそうです。子どもたちは海水浴場で安心して泳げるのでしょうか。様々な形で地域社会を壊してしまう。地域経済を壊してしまう。13日に決めようとしている海洋放出は、それだけの被害を及ぼそうとしている計画なのです」

 共同代表の織田千代さんも「昨年10月から今日までに、何か安心出来る材料はあったでしょうか。2月、3月と地震があって、原発の状態を心配しました。最近、原発敷地内で管理されていない謎のコンテナが発見されたというニュースもあります。ちっとも『アンダーコントロール』では無いじゃないですか。決定を急ぐのは間違っていると思います。私たちの声を聴いて決めて欲しいです。どうか汚染水を海に流さないでください」と訴えた。






「アクアマリンふくしま」と「イオンモールいわき小名浜」の間で行われた緊急スタンディング。13日には福島県庁前でも抗議行動を予定している

【「安心して海水浴させたい」】

 三春町の女性は「何でこのタイミングなの?聖火リレーのどさくさ紛れの中で決めようとしているのかしら。総選挙の直前にならないようにしているのでしょうか」とマイクを握った。

 「これだけの反対がありながら強行しようとしている。これが『国民の合意形成を得るプロセス』なのでしょうか。63核種の放射性物質が含まれる代物を海に流すなんて、怒りでいっぱいです。放射性物質には半減期がありますから、地上保管を続ければ放射能は減っていくのです」

 地元いわき市の男性は「海洋放出には反対です。いわき市民だって『関係者』です。きれいな海と美味しい魚は私たちの誇りです。自慢なんです。そもそも今はコロナ禍です。海洋放出を急ぐより、感染症対策に力を注いで欲しいです」と訴えた。

 小名浜で生まれ育ったという30代女性は「幼い頃から海水浴や磯遊びが夏の楽しみでした。子どもたちにそういう楽しみを味わわせてあげられないのかと思うと悲しいです。海水浴が出来ないとか海産物を食べられないというような事態は絶対に避けて欲しいです」と想いを口にした。

 別の母親も「道路にごみを捨ててはいけないとかごみは拾いましょうとか、子どもたちには日ごろから教えています。では、汚染水を海に流すという事を子どもにどのように説明したら良いのでしょうか。分かりません。汚染されていると分かっているものを、他の方法をとらずにあえて海に流すという事に大人として疑問があります。子どもに説明できない事をするべきでは無いと思います」と訴えた。

 参加者の一人はこう話した。

 「東電はタンクの中身を全て検証して公表したでしょうか?日本政府はそれを国民に示したでしょうか。海に流すといっても、世界の賢明な科学者から『何を流すんですか?中身は何ですか?』と問われる日が来ます。だから現実には海洋放出など不可能だと思っています」





改めて「海洋放出反対」を訴えた佐藤さんや織田さん。「汚染水の中身を世界の科学者に説明できるのか」と疑問を投げかけた参加者も



【「世界で流しているから安全?」】

 抗議行動は1時間で終了した。最後に全員で「ふるさとの海を守れ!」、「漁業を守れ!」、「子どもたちを守れ!」とシュプレヒコールをした。

 終了後、取材に応じた佐藤さんは「世界中で同じ事をやっているじゃないかと言うが、世界が危ないんですよ。IAEA体制、ICRP体制で原発推進側がやっている事であって、世界でやっているからといって安全が担保されているわけではありません。福島こそ、事故を経験して、一番安全な原子力防護策を講じるのが政府の責任だし、私たち被災者の義務だと思います」と語った。 

 「これ以上海を汚すな!市民会議」は20212年から汚染水問題に取り組んでいる。毎年、海の日に集会やシンポジウムを開くなどして海洋放出反対を訴えてきた。

 昨年9月には、経産省資源エネルギー庁廃炉・汚染水対策官の木野正登参事官との意見交換会をいわき市内で開催。一般市民向け公聴会の開催や陸上保管を改めて訴えた。翌10月には政府が海洋放出を正式決定するとの報道が流れ、今回と同じように抗議行動を展開。反対の声に押されるように政府が決定延期を決めた経緯がある。

 政府が海洋放出を正式決定するとされる13日には、福島県庁前での抗議行動も予定している。当日は梶山経産大臣が来庁すると言われており直接、梶山大臣に陸上保管継続を訴える。(了)

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