記事

「病気の診断を受けたら更新拒否」「治療途中なのに継続できない」トラブル続出!?  ペット保険に潜む“闇” - 相澤 洋美

 高額の医療費に備えて入ったはずのペット保険。しかし、「契約更新を断られた」「いざ病気になったら適用外といわれた」などのトラブルの声も聞く。飼い主はどのようなことに気をつけたらよいのだろうか。ペットに関する事件や動物虐待事件を手がけ、動物の法律に詳しい細川敦史弁護士に聞いた。

【写真】この記事の写真を見る(4枚)

◆ ◆ ◆

 コロナ禍で癒しを求める人が増え、ペット需要が高まっている。(社)ペットフード協会の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大で巣ごもり需要が増えた2020年は、新たに飼育されたペットの頭数が増加。飼育理由も、犬・猫ともに「生活に癒し・安らぎが欲しかったから」というのがトップとなっている。

 病気や怪我などの心配をする飼い主が、ペット保険に加入する割合も年々増えている。ペット保険契約件数はここ数年、毎年10%以上も増加していて、2021年には18年の1.4倍になるという予測もある。


©iStock.com

 しかし加入が増える一方で、ペット保険に関するトラブルも多く聞かれるようになっている。実際に、SNSでも「病気の診断を受けたとたんに、契約の更新を拒否された」「治療途中にもかかわらず継続できないと言われた」といった、ペット保険への不満投稿をよく見る。

 しかしこうしたトラブルに関し、「保険会社が一方的に悪いとは言い切れない」と、動物の法律に詳しい細川敦史弁護士はいう。

「人間も動物も、年齢があがるほど病気にかかりやすくなりますので、年々保険料が高くなるのは仕方のないことだと思います。加えて犬や猫の平均寿命は15年くらいといわれています。人間に比べかなり短いので、『去年(保険に)入れたから、今年も同じ契約で入れる』という契約が成り立ちにくいのです」

「終身」=「一生涯」の保証ではない

 ここで気をつけなくてはいけないのは、ペット保険は人間の医療保険とは異なる損害保険であるということだ。

 一般的に「生命保険」が将来経済的な損失が起こった場合に保険金が支払われるものであるのに対し、「損害保険」は、(事故や災害などで)発生した損害に対し、契約した金額(実費)が支払われるものという違いがある。

 ペットは家族同様であっても「ヒト」ではなく、「モノ・財産」というカテゴリに入るため、自動車や家と同じように「損害保険」の対象となる。

 ペット保険の契約は基本的に1年更新が多く、たとえ保険に「終身」という言葉が入っていても、人間の医療保険の「終身」とは意味が異なるということも知っておかなくてはならない。

 ペット保険で「終身」とうたっている場合、詳細は各保険会社によって異なるが、一般的に「更新年齢に制限がない」という意味で使っているケースが多い。

 ペット保険の保険契約期間に1年間が多いのは、「終身」であっても更新のたびに保険料があがったり、毎年審査を行って審査内容によっては次年度の契約更新が結べなかったりする「契約」を設けているからだ。

「どんな契約を結ぶかというのは、法的には当事者同士の自由です。『もう1年(同じ内容で)契約を継続したい』というのが加入側の“自由”だとしたら、『年齢的に契約の継続はできない』と保険会社が主張するのも“自由”なのです」

 こうした細かい契約で「騙された」と悔しい思いをしないためには、加入時に免責事項(保険金が払われない場合)の確認をすることが重要だと細川弁護士はいう。

「保険会社には、保険契約に関する重要事項についての説明義務があります。免責事項は約款や重要事項説明書にも記載されているはずですので、加入前に必ず確認しておくべきです」

 また、「病気になったとたんに、その病気は(保険の)適用外だといわれた」というトラブルについても、契約時に約款、重要事項説明書をきちんと確認しておくことで避けることができる。

「そもそも、『いざ病気になったら(保険金が)払われない』というわけではなく、『もともとそういう契約だった』という場合が多い。『そんな説明は聞いていない』『後から言われて約款を見たらたしかに書いてあるけれど、小さすぎて読めない』と言っても簡単には認められないでしょう」

ネットでのつぶやきが恐ろしい事態を招く恐怖

 細川弁護士はこうしたトラブルに、「ネット加入の手軽さ」や「高揚感」をあげる。

「たとえば、スマホに新しいアプリを入れる場合などもそうですが、規約を全文読まないと次のステップに進めないようなしくみになっていても、実際には、ほとんど読まずにスクロールして契約できてしまう。ネットで加入できる保険にはこの危険性があります。

 スマホで簡単に申込みができてしまうのは確かに便利ですが、『保険料が安い』『手続きが簡単』だけで加入すると、後悔することになりかねません。金融庁の免許もしくは登録のある保険会社なのか、保険内容はどうなっているのかなどを加入前にしっかりと確認することは契約者側の責任です」

 また、ペットショップで犬や猫を買う際に同時にペット保険に加入する場合には、「流されないことが大事」だと細川弁護士はいう。

「高い品種だと何十万円もする犬や猫を迎える場合、嬉しさや高揚感が先走り、購入金額に比べたら格安のペット保険については、あまり深く考えずに加入してしまいがちです。保険で補填されない先天性の疾患などについて、冷静に確認してから加入することが重要です」

 こうした「契約者の責任」を果たさず、「一方的に契約を更新拒否された」「保険料が支払われなかった」などと感情的に行動すると、とんでもない「事件」に発展するおそれもある指摘する。

「こういうことはあまりないと思いますが」と前置きしたうえで細川弁護士が教えてくれたのは、ハッシュタグのデマ拡散による危険性だ。

「たとえばペット保険の契約更新を拒否されたことで頭に血が上り、『悪徳保険会社』のような投稿をしたとします。それが何かのタイミングで広まり、会社の経営に大きな影響を与えたとする。その場合、悪意のある虚偽情報を拡散したとされ、信用毀損や損害賠償で保険会社が対応を検討するという事態を招く可能性もあります」

 そこで細川弁護士がおすすめするのは、消費生活センターへの相談だ。

「保険の免責事項の未説明や、生体と保険の抱き合わせ販売などは、典型的な消費者被害のパターンです。まずはお近くの消費生活センターに相談に行くのがよいと思います。

 また、各自治体には、無料で開催している法律相談窓口もあります。開催日は自治体によって異なりますが、お住まいの地域で調べてみるのもよいかもしれません」

闇業者撲滅には飼い主の責任も重要

 最近は、格安でペットの生体販売を行い、かわりにペットフードの購入や保険加入を強引にすすめるケースもあるという。こうした「ペットショップで半ば強制的に保険に加入させられた」という問題には、別の「闇」が潜んでいると細川弁護士は眉をひそめる。

 コロナでペット市場に参入した業者のなかには、儲けだけを考え、劣悪な環境で飼育販売したり、病弱なペットを平気で売りつけたりするケースも少なくない。

「2019年に動物愛護管理法が改正されました。ここ20年の間に動物虐待に対する処罰の厳格化が進んでいますが、それには、どんどん刑罰を重くしなければいけないほど動物虐待が目立つようになってきたという背景があります。

 たとえば人気の高い犬を、劣悪な環境下で工場のように繁殖させ続けた結果、先天性の病気や遺伝子疾患を抱える子犬が市場に多く出回るようになった、などという痛ましい事件も起きています。新しくペットを購入する場合に、そのペットがどういう環境で生育したのかをきちんと調べる人が増えれば、悪質な業者は減っていくと思います。ぜひ、こうしたところにも意識を向けていただきたいです」

 また、大事に飼育されてペットの平均寿命が延びたことで、ペットの介護問題も大きな課題となっている。

「ペットの飼い主になるためにライセンスは不要ですが、改正動物愛護管理法では飼い主への責任も一層強化されています。ペットは人間に癒しを与えてくれる存在ですが、生き物です。

 10万円のコロナ給付金でペットを購入した人も多かったと聞いていますが『小さくてかわいい』『いま、自分がつらいから癒されたい』という目先の判断だけでペットを飼うのではなく、ペットへの責任をしっかり果たせるかどうかをまず考えてほしいと思います」

(相澤 洋美)

あわせて読みたい

「ペット」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    森ゆうこ議員「北朝鮮にワクチンを提供せよ」立憲民主党の驚愕の外交センス

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    06月12日 08:49

  2. 2

    コロナ不況で住宅ローンが返せない人急増 持ち家の売却は急いだほうがいい理由

    NEWSポストセブン

    06月12日 09:41

  3. 3

    経済大打撃の日本 政府はいますぐ「消費税ゼロ」と「粗利補償」を実施せよ

    田原総一朗

    06月11日 12:16

  4. 4

    部分的に集団免疫が発動したという論文も ワクチン接種拡大でゴールは近いか

    中村ゆきつぐ

    06月12日 08:25

  5. 5

    ひろゆき氏、電話不要論を展開「若い人が嫌がるのは当然」 職場の“TELハラ”問題

    ABEMA TIMES

    06月12日 14:22

  6. 6

    「常識外れの賠償は却下に」文在寅大統領には徴用工問題を解決する責任がある

    PRESIDENT Online

    06月12日 10:36

  7. 7

    「日本が気にするのはお金、メンツ、総選挙だけ」イギリスが疑問視する東京五輪開催

    小林恭子

    06月11日 11:39

  8. 8

    「社説で五輪中止を求めるのにスポンサーは継続」朝日新聞が信頼を失った根本原因

    PRESIDENT Online

    06月11日 10:55

  9. 9

    人生を変える一番簡単な方法は「付き合う人を変えること」

    内藤忍

    06月11日 11:28

  10. 10

    支持率は37%に激減…それでも五輪に突き進む“菅政権のホンネ” - 広野 真嗣

    文春オンライン

    06月12日 09:55

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。