記事

欧州の中流以上の家庭が「アンティーク家具」を置いている合理的な理由

1/2

欧州の中流以上の家庭には、当たり前のように数十年前に作られたアンティーク家具が置かれている。イギリス在住で著述家の谷本真由美氏は「安い家具は10年ほどしたら古ぼけてしまう。だが質の良い素材で丁寧に作られたアンティーク家具は何十年ももつ。彼らはそれが最も経済合理性が高いことを知っているのだ」という——。

※本稿は、谷本真由美『日本人が知らない世界標準の働き方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

アンティーク家具でいっぱいのリビングルーム
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mikolajn

アメリカの富裕層は「投資」を増やす代わりに「消費」を減らす

世界の経営学者や社会学者の中には、お金持ちのライフスタイルを研究している人々がいます。収入区分や職業からアンケートやインタビューの対象となるお金持ちを探し出し、数年間にわたってライフスタイルを聞き出し、数値的な処理を施して、「お金持ちのライフスタイルの共通項」を探し出すのです。

このような研究の方法は、起業家を研究する経営学者や、特定集団の行動様式を研究する政治学者や社会学者が行っている方法です。マスコミやジャーナリストが、雑誌の売り上げや、テレビ番組の視聴率を狙い、センセーショナリズムを前面に押し出して紹介するお金持ちとは異なっています。

トマス・スタンリー博士とウィリアム・ダンコ博士は、アメリカの富裕層研究の第一人者として知られています。20年間にわたり、地理学者と協力して1万人以上の億万長者にインタビューとアンケートした結果をまとめた『The Millionaire Mind』(Gallery Books, Reprint版)(邦題『なぜ、この人たちは金持ちになったのか』日本経済新聞出版)は参考になる書籍の一つです。

この調査は、全米の国税調査対象地域から、100万ドル(1ドル=120円換算で約1億2000万円)の純資産額(持っている資産から負債を引いた額)を基準に億万長者の比率を割り出し、お金持ちのライフスタイルを丹念に調べたものです。スタンリー博士は、もともと富裕層向けのマーケティング研究を行っていましたが、その結果は驚くべきものでした。

アメリカの富裕層の84%は一代で財を築いた人々であり、そのほとんどは、中小企業の経営者だったということです。彼らの多くは普通の住宅地に住み、普通のファミリーカーに乗り、同じ配偶者と長年生活をともにし、最も気にしていることは、投資を増やす代わりに消費を減らすことでした。

ヨットもなければタワーマンションに住んでいるわけでもなく、パーティーに顔を出すわけでもありません。世間一般で想像されているような富豪のイメージとは正反対の、地味で実直な人々だったのです。

億万長者が「家族や友人を大事にする」合理的な理由

『The Millionaire Mind』
出所=『The Millionaire Mind』

図表1は『The Millionaire Mind』から抜粋した、アメリカの億万長者733人の、1カ月のライフスタイルに関するアンケートの結果です。

この結果で驚くべきことは、その上位を占めるのが、家族や友人と過ごす時間であることです。これには、アメリカの億万長者の多くは、中小企業を経営する、もしくは個人事業者であることが関係します。彼らの多くは時間が自由になるので家族と過ごす時間があります。さらに、事業の多くは個人や家族で起こした「家族企業」(Family Firm)なので、仕事も私生活も家族と一緒であり、家族の絆が強いのです。

家族や友人と時間を過ごすことは、精神的な面でも合理的です。オーストラリアのフリンダース大学が、1500人の高齢者に対して10年間にわたって実施した調査では、幅広い友人のネットワークがある人は、ない人に比べ、平均寿命が22%も長かったとの結果が報告されています。

スタンフォード大学のデビッド・スピーゲル教授が、1989年に「Lancet」誌に発表した研究では、ガンのサポートグループに参加したガン患者の女性の生存率は、参加しなかった人の2倍であり、痛みも軽減されたとの結果を報告しています。

友人が少ない若い人は、お酒やドラッグに走る傾向が高いという調査結果も報告されています。また友人が多い人は心臓発作からの回復が早いというのです。

つまり、家族や友人と過ごす時間を増やすことは、精神的なリラックスや健康の増進に繋がり、仕事にも集中できるというわけです。その上、豪華なパーティーや買い物にお金を費やすよりも、居間や食卓でおしゃべりをすることにはお金がかかりません。節約したお金を投資に回すことができるので、さらに合理的です。

欧州の職場は「社員の家族事情」まで考慮する

家族と一緒になって、ペットと遊ぶことは、さらにリラックス効果を増進します。Robert Wood Johnson FoundationとHarvard School of Public Healthの研究によれば、ストレスを抱えたアメリカ人の47%はペットと時間を過ごすことで、ストレスが軽減されたと答えています。

お金持ちは、無意識で、合理的に資産を増やし、健康を増進し、自分の生活を、精神的にも豊かにする行動を選択しているのです。

仕事に追われるサラリーマンは、家族や友人と過ごす時間を軽視しがちですが、それは、体の健康の点から見ても、仕事の効率や創造性の点から見ても、実は間違った選択だということです。ストレスを溜めて体を壊してしまったら、仕事もできませんし、勉強だって不可能です。ストレス解消にお金を使い、そのお金を稼ぐために仕事をするのでは本末転倒です。

欧州の職場は、富裕層のように大変合理的な考え方をします。サラリーマンに、いきなり辞令を出して、家族の事情を考慮せずに転勤を強制することはまずありません。家庭生活がメチャクチャになってしまったら、その人の生産性は下がり、会社にとっても本人にとっても良くないことを知っているからです。転勤を頼むときは、家族の事情も考慮するのが一般的ですし、会社によっては転勤先で、配偶者の仕事まで用意します。

そうした方が、社員の生産性が上がるので、会社にとっても本人にとっても良いことを知っているからです。

また、有給休暇も消化するのが当たり前ですし、子供の学校や、配偶者の誕生日に早退する、というのも当たり前です。これも、家族との関係が良くなった方が、生産性が高まる、という考え方が下地になっています。不安定な時代だからこそ、ワークライフバランスを踏まえて、家族や身近な人との関係を、重要視しなければなりません。

あわせて読みたい

「富裕層」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    看護師や女子高生の盗撮を15年間続けた医師 撮りためた動画は驚愕の3.63テラバイト

    阿曽山大噴火

    05月11日 08:08

  2. 2

    菅首相はオリンピックファースト?レッテル貼りで責め立てる野党に医師が苦言

    中村ゆきつぐ

    05月11日 08:24

  3. 3

    「人権派弁護士」が牙をむく時。正義感の暴走、池江璃花子選手への中傷は異常だ

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    05月10日 09:51

  4. 4

    コロナ感染者増加の主因は街の「人流」ではなく、PCR検査への「人流」

    自由人

    05月10日 08:22

  5. 5

    国の反論は「性風俗は不健全」 デリヘル給付金訴訟の原告が法廷で語った思い

    小林ゆうこ

    05月10日 19:56

  6. 6

    「人と違うことは個性だ」差別と戦い続けたプロサッカー選手・鈴木武蔵が見る日本

    清水駿貴

    05月11日 08:06

  7. 7

    日本の音楽シーンは宝の山 70~80年代シティポップが世界でブーム

    NEWSポストセブン

    05月10日 18:15

  8. 8

    五輪開催是非について、口を開き始めたアスリートたち

    諌山裕

    05月10日 15:51

  9. 9

    選手団の行動制限、セレモニーの簡素化…感染防止策の徹底で東京五輪は開催できる

    船田元

    05月10日 12:10

  10. 10

    山積みの課題を前に「活動停止中」の東京都議会。最大会派は署名集めの前に、臨時議会を開催せよ

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    05月11日 08:23

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。