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JTBの絶望的「バーチャルジャパン」計画

さて、JTBから「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」なる謎企画が発表され、日本中に爆笑の渦を呼んでいます。以下、公式youtubeチャンネルより。



2003年にリリースされ一斉を風靡した、圧倒的な「セカンドライフ」感。これが2021年に観光業界の巨人ともいえるJTBから威風堂々とリリースされた最新事業であるという点で、失笑を禁じえません。2000年代後半から起こったOTA(オンライン旅行代理店:Online Travel Agency)の潮流に乗り遅れ、「古くて大きい」だけが取り柄の「恐竜」企業JTBが、コロナ禍で縮小する観光産業で何とか生き残ろうと、ワケも分からず「観光DX」の旗を振るとこういう企画が出来上がるんだなあ、と心から感銘を受けた次第であります。

そもそも日本の観光業界におけるバーチャル活用というのは、スタート地点から間違っている部分が非常に大きいのです。例えば上記のJTBによる「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」ではプレスリリース内で以下のように謳っています。



アジア地域の125万人の会員からスタート!「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」事業を開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000727.000031978.html

XR技術(※1)を駆使した仮想空間上にバーチャルな日本をつくりあげ、進化し続ける街や施設に世界中の人々が集い、観光やショッピング、様々なコンテンツを楽しみながら交流を深めることができる 「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」事業を開始します。このプラットフォームを通じて、仮想空間上の日本を巡る交流・商流・情報流を生み出し、人流が制限されるなかでも地域との持続的な関係性を維持するとともに、コロナ後の新しいリアルな人流を喚起し、観光産業の回復と地域活性化を図ってまいります。

圧倒的な勘違いとしか言い様がない訳ですが、もし「バーチャル・ジャパン」がこのプラットフォームを更新し続け、そこで「観光やショッピング、様々なコンテンツを楽しみながら交流を深める」機能を拡充させる続けるとするのならば、それは観光の「代替」であって、観光の推進になるものではありません。バーチャル渋谷でリアルに遜色ないショッピングが出来るのならばリアル渋谷を訪れる必要はないですし、バーチャル東京ビッグサイトでリアルに遜色ない商談ができるのならばわざわざリアルの東京ビッグサイトで開催される展示会を訪れる人は居ないのです。

XR技術を担う側の企業や技術者というのは、XR技術によって現実を「代替する」もしくは、もっといえばそれを「超える」ことを目標に日進月歩の技術競争を行っています。例えば、日本には寺社仏閣を主要観光資源とする観光地が沢山ありますが、そういう観光資源は立入禁止区域ばかりで予め定められた順路を巡るだけの周遊観光となりがちですが、それをバーチャル空間上で再現すれば自由にどの様な視点からでも各種史跡を楽しめますし、何ならその史跡の建造当時の時代にさかのぼり、当時の人達の生活を再現した姿を体験することもできる。なんなら、バーチャル空間上に再現された日本のお城を舞台に、プレイヤー参加型の攻城戦ゲームを提供することだって将来的にはすぐにできるようになる。

まあ、上記の動画で拝見する限り、少なくともJTBさんがご提供する「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」レベルでは幸いにも(不幸にも?)現実の代替とはならなそうですが、少なくともその分野で先端にいる事業者は既にそういうレベルのものを提供し始めているわけで、繰り返しになりますが彼らは現実を「代替する」もしくは、もっといえばそれを「超える」技術を日々争っているわけです。

対して、日本の観光業界はどうでしょう。「我が国は豊かな観光資源に恵まれー」というのは日本の観光業界を語る時の枕詞のように繰り返し使われるフレーズではありますが、一方で我が国は未だ「来て観て廻って」の周遊型観光資源が主力であり、一方で長らく過大視されてきた体験/滞在型観光は未だ定着していません。そんな日本の観光業界で「XR技術をー」というお話が語られるわけですが、「観る」の分野はXR技術が最も得意な分野であり、その技術的進歩によってあっという間に追いつかれる。しかも、現実では実現不可能な様々な時間/空間的な制約を容易に乗り越える形で。

今のままの日本の「来て観て廻って」型の観光スタイルは早晩XR技術に取って代わられるのが目に見えているわけで、それをテレビやネットを使って単純な観光番組を制作する様な感覚で「観光アピールになる」などと宣うのは、ハッキリ行ってナンセンス以外の何物でもないようにしか見えないわけです。今の日本に必要なことは、バーチャルの世界に取って代わられない体験型・滞在型観光へと日本の観光資源を切り替えてゆくことであり、それなくば寧ろ日本の観光地は徐々に衰退してゆくしかない。そういう危機感を持って技術の発展とその導入を語ってゆくことが必要だと思うのです。

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