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黒人差別とアジア系への暴力

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写真:アジア系への差別反対を訴える人々 クイーンズ-ニューヨーク 2021年3月27日 出典:Emaz/VIEWpress

井上麻衣子(ジャーナリスト)

【まとめ】

・黒人vsアジア系の対立問題と、その団結を阻む白人至上主義。

・「モデルマイノリティ」が有色人種間の差別や暴力を生む要因に。

・声をあげ始めたアジア系。黒人とアジア系の団結呼びかける動きも。

アジア系に対するヘイトクライムが急増しているアメリカ。 各地で被害者への追悼や抗議が行われ、バイデン大統領が被害者への支援金増加や監視強化などを盛り込んだ政策を発表している。

これまで、アメリカの人種問題と言えば、白人vs黒人間の闘争を、おとなしいアジア系が一歩引いて傍観してきた感がある。しかし今回のヘイトクライムをきっかけに、今後は大きく変わっていく可能性が高い。しかし、そこに立ちはだかるアジア系vs 黒人間の問題と、その団結を阻む白人至上主義について考えたい。

1.根強いアジア系差別と、黒人との対立

コロナ禍とトランプ前大統領の煽動により一気に拡大したアジア系差別だが、歴史を紐解けば、1882年にアジア系移民がアメリカ市民になることを禁じた中国人排斥法や、1942年の日系人強制収用など、アジア系差別は常にそこにあった。しかし、同じ差別される身であっても、常に自由と平等を求めて団結し、戦ってきた黒人層とは違い、アジア系は声をあげることが少なかった。

抗議よりも、アメリカの社会に同調し溶け込んでいくことを目指したアジア系移民を襲ったのが、1992年のロサンゼルス暴動だ。白人警官による黒人男性への過剰な暴力がきっかけとなった暴動だが、当時、移住してきたばかりの韓国系移民たちが次々とビジネスを拡大する一方で、貧困に苦しんでいた黒人層との対立を巻き込み、結果的には韓国系移民たちの店が暴動のターゲットとなり大きな被害を受けた。

当時の韓国系移民たちは、 貧困エリアでの開拓しか許されず、黒人同様に、白人社会から差別を受けていたにもかかわらず、互いに敵対するという構図が生まれてしまった。

▲写真 ロサンゼルス暴動(1992年4月29日) 出典:Steve Grayson/WireImage/Gettyimages

2.ヘイトクライム急増に重なる犯罪増加

ブラックライブズ・マター vs ヘイトクライム

そんな過去の対立を思い起こさせるのが、昨今のアジア系へのヘイトクライムである。

ヘイトクライムといえば、白人至上主義者による、有色人種への犯罪が多いと言われてきたが、例えば、ニューヨーク市で起きているアジア系へのヘイトクライムは、白人よりも黒人によるものが圧倒的に多い

▲写真 アジア系への暴行容疑者のビデオを公開するNYPD(2021年3月25日) 出典:Michael M. Santiago/Getty Images

コロナ禍以降、急速に進んだニューヨーク市の治安悪化には、今年度、約10億ドルがニューヨーク市警の予算からカットされたことが大きな影響を及ぼしている。ニューヨークだけでなく、ロサンゼルス、ミネアポリスなど全米の各地で予算カットに続く、治安悪化が起きている。

全米でこの警察予算の縮小が広がったきっかけは、昨年5月ミネソタ州で、黒人男性が白人警官に不要に抑え付けられたことにより後に死亡した事件である。

警官の黒人犯罪者に対する過剰な暴力行為を非難するブラック・ライブズ・マター運動が広がり、白人警官の横暴に苦しんだ黒人層と、それを支援する人々が、警察の行き過ぎた力を市民の手に戻すために望んだ改革だ。しかし、結果として治安が悪化。そして黒人層によるアジア系へのヘイトクライムが増えるという、悪循環が起きている。

VOXニュース(*3月15日)では、「アジア系アメリカ人は、昨今の攻撃に対する正しい答えは警察なのか思案する」と題した記事で、「チャイナタウンなど、アジア系へのヘイトクライムに怯える人々の間でも、警察を増強するべきだという声と、警察ではなく、民間の護衛や市民によるパトロールにするべきだという声など意見は分かれる」としている。安易に警察の増強を望むことは、警察力減少を訴えてきた黒人層やそれを支援する層を否定することになり、さらなる対立を生みかねないことを思案しているのだ。

▲写真 黒人犠牲者の名前が書かれたマスクを着けて会見に臨む大阪なおみ選手:2020 USオープンの11日目女子シングルス準決勝戦後(2020年9月10日) 出典:Al Bello/Getty Images

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