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財務省によるバイデン「The Made in America Tax Plan」補足説明

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昨日、上院財政委員会によるクロスボーダー課税改正案フレームワークに触れたけど、今度は財務省がホワイトハウスFact Sheetで提案された「The Made in America Tax Plan」の補足説明を公表した。

立法府の財政委員会と異なり、財務省はホワイトハウスと同じく行政府に属するだけに案自体はホワイトハウスのFact Sheetに記載されていたものを踏襲している。っていうか、方向は逆で、財務省のインプットに基づきホワイトハウス案が策定というか取りまとめられた訳なんで規定内容は同一。財務省の補足説明は、実際の規定の説明よりも、いかにTCJAで大企業がラッキーし、一般市民は窮地に陥り、オフショア化が加速したか、っていう民主党のナラティブに多くのページを割いている。これはホワイトハウス案や昨日特集した財政委員会フレームワークと共通のメッセージだ。

法人税歳入の各国比較

財務省の補足説明では、ホワイトハウス案同様、法人税率引き上げが正当っていう理由のひとつに、GDP比で米国の法人税歳入は他国より低いっていう指摘が数か所に出てくるけど、他国はCheck-the-Boxとかパススルー主体の活用が米国ほど普及してない点、環境が異なるんじゃないかな。米国では上場企業を除き、基本、ビジネスはパススルーなんで事業所得でも歳入は個人所得税って形で認識されるケースが他国より多いはず。

TCJAの法人税率の引き下げ、199Aの使い勝手が思ったほど良くない点、で定量分析のバランスは若干シフトしたとは言え、同族企業とかがC Corporationというストラクチャーを採択するのはかなり稀。以前は買収時に必ずC Corporationに転換させてPEファンドだって、今ではポートフォリオカンパニーの多くをパススルーのまま所有することが普通になっている。敢えて言えば、ストックオプションとかのEquity報酬の設計を考えるとC Corporationの方がいいことがあるんで、一部のセクターではそれが理由で二重課税覚悟でC Corporationってストラクチャーでスタートアップすることはあるにはあるけどね。

パススルーのProfits InterestをEquity報酬に使うこともテクニカルには問題ないけど、規則がややこしいし、従業員にW-2とは別にK-1とか出すと受け取った方は「何これ?」ってなって大混乱必至なんで確かにEquity報酬だけのことを考えるとC Corporationに一日の長があると言える。

ちなみに米国の法人(C Corporation)数は170万社と言われている(Tax Foundation調べ)。一方パススルー主体(S Corporation含む)は740万社、個人事業主2,300万人。個人事業主っていうと伝統的なSole Proprietor、フリーランサーとかギグワーカーを想像するかもしれないけど、DREを通じて事業を展開している個人単独オーナー(Community Property(夫婦共有財産)制度の州では夫妻2人オーナーのケースも可)を含むから結構な規模のケースもあり得る。日本の法人数は国税庁のデータによると約270万と米国より100万社多い。日本の個人事業主の数は明確ではないみたいだけど、YouTuberとかサイドでお小遣い稼いでるようなケースまで含むとフリーランサーが1,000万人程度と言われている(ランサーズ調べ)。

絶対額では米国の法人税歳入は$280B、パススルー経由の所得に対する最終オーナー課税を含む個人所得税が$1,900B程度。給与税(厚生年金や国民年金、老齢者医療保険等の社会保障税トータル)が$1,300Bだ。日本の財務省データによると日本の法人税歳入はザックリ10兆円。所得税は19兆円だ。100円換算で法人税$100Bなんで、主体数の割に米国法人税歳入は悪くない気がする。

これらの数字を見ても、ホワイトハウス案が法人税増税を正当化する一つの理由としているデータ、「法人税」歳入がGDPに占める割合の他国との比較、は実際のところ比較可能性が低いと思われる。前々回の「バイデン政権下のタックスポリシー(10) ホワイトハウス ・インフラ増税案「Fact Sheet」公表(2)」で、CTBのヒストリーとかチラッと触れたんでそちらも参照して欲しい。

財務省の補足説明にはOECD加盟国の法人税歳入のGDP比ランキングが載ってるんだけど、一等賞はなんとルクセンブルク。法人税歳入がGDPの6%を占める。確か法人税率17%程度なんだけどね。僅差で2位に付けるノルウェーも法人税率は22%。米国が21%から28%に引き上げる理由としては説得力に欠ける感じ。そもそもルクセンブルクもノルウェーも米国と経済環境違い過ぎるしね。ちなみに日本は6位。最下位はギリシャで%が表示されてないように見える。法人税は普通にあるはずだからGDPとかのデータがなくて計算できないのかな。まさかね。米国は36各国中33番に位置し、ビリから4番目。

またイエレン長官が必死で他国にメッセージ発信しているのと同期する形で、自国が世界一レベルの法人高税率に復活するに当たり、「Race to the bottom」を避けて法人税率を高止まりさせないといけないと他国を牽制している。OECD加盟国の平均法人税率は1980年には45%だったものが、2000年には32.2%、現在では23.3%まで凋落していると嘆いてるけど、まさかみんなで結託して45%レベルに戻そうって訳じゃないよね。

23%を「Bottom」な異常値とみるか、VAT等も組み合わせて正常なレベルと見るかは解釈によるけど、経済のグローバル化やデジタル化に伴い、法人税っていう制度自体が経済実態に馴染まなくて限界に近くなってしまい、そんな制度下でグローバル課税ルールをあれこれ変えても所詮は時間稼ぎに過ぎないことを認識し、米国も少なくとも使用地ベースのVAT導入、欲を言えば2017年の税制改正前にUC Berkeleyの経済学者が押していた斬新なDBCFT的な抜本的な新制度の導入を真剣に考えるべきだろう。そうすればグローバルで真の「Leadership」を発揮できるし、Base Erosion とかInversionの懸念も大概において払拭される。

で、具体的な税制内容に関して、財務省の補足説明には、ホワイトハウス案に関して面白い追加説明がいくつかあるのでそれらの点に関してまとめておく。

BEATはSHIELDに

BEATは撤廃し、代わりにStopping Harmful Inversions and Ending Low-tax Developments、略して「SHIELD」を導入するとしている。BEAT、GloBEとかSHIELDとかバンド名みたいで名前はいかしてる。ただ、Low-tax Developmentsってチョッと無理やりSHIELDにした感がありあり。僕だったら「Sheer Heart Innovation and Extremely Lean Discipline」とかにしたかも。意味をなしてないって?確かに。SHIELDは概念的にはピラー2のUTPR。国外関連者に支払う費用のうち、支払先の国でグローバルミニマム税率以上の法人税が課されない場合には、損金不算入とするというもの。

トリガー税率は今後合意する「Strong」なグローバルミニマム税率としてるけど、グローバルミニマム税率に合意する前にSHIELDを導入する場合には、GILTI税率を参照するとしている。っていうことは21%。そんな国いっぱいあるだろうし、CFCに費用支払ってSHIELDで28%の損金効果が否認され、その上それがTested IncomeでフローアップしてきてGILTIで21%課税だとすると、100の費用支払って実効税率49%?算数おかしいかな。

SHIELDのBase Erosion にかかわる説明で面白いのは、「外国」法人がタックスヘイブンに所得を迂回させているのでSHIELDが必要と記載している点。外国法人より米国法人が激しくBase Erosion しているのは2008年に財務省自らが取りまとめたレポートで明らかになっていたはず。同じ外国法人でも昔米国法人だったInversion法人は派手にBase Erosion に従事しているっていう結果も出ていた。

で、これがSHIELDのELD部分だとすると、次はSHIの部分。すなわち米国税法がTCJA前の著しく不利なものに逆戻りしてしまうと、米国法人では国際競争に勝てないということで国籍離脱のInversionが横行するのでは、っていう懸念に予め釘をさすためInversion規制強化。

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