記事

【読書感想】日本の構造 50の統計データで読む国のかたち

1/2

日本の構造 50の統計データで読む国のかたち (講談社現代新書)
作者:橘木 俊詔
発売日: 2021/03/17
メディア: 新書






Kindle版もあります。

日本の構造 50の統計データで読む国のかたち (講談社現代新書)
作者:橘木俊詔
発売日: 2021/03/17
メディア: Kindle版

50の項目で、日本の「いま」を総点検!
この不安な時代に必要な、すべての議論の土台となる一冊。

Q 日本で10年以上同じ企業に勤続している人の割合は?
(『データブック国際労働比較』2019年)
A ア:75% イ:60% ウ:45%

Q 日本よりも長時間働いている国は?(OECD調査、2019年)
A ア:イタリア イ:イギリス ウ:ドイツ

・男女間、役職者と一般社員、正規と非正規、大卒と高卒……、賃金格差は?
・なぜ日本の開廃業率は他国の3分の1しかないのか?
・高年収家庭は低年収家庭の3倍、学校外教育費に支出
・60代後半の就業率、男性は50%超、女性は30%超
・社会保障給付、高齢者・遺族への給付が51・2%
・なぜ日本では必要な人の10~20%しか生活保護を申請しないのか?
・資産額5億円以上は8・7万世帯
・東京の地方税収入は長崎県の2・3倍
・学力調査トップは秋田県と北陸3県……

数字からいまの日本が浮かび上がる!

 イメージと現実の乖離、あるいは、古い時代の情報がいつまでもアップデートされないまま、というのは、よくあることですよね。
 よく知られているものでは、「最近の世の中は怖い、若者の凶悪犯罪が増えてきている」と思っている人は多いけれども、統計的には、若者の犯罪は太平洋戦争後の混乱期をピークに、どんどん減ってきている、というのがあります。
 若者の凶悪事件は、マスメディアで大きく、長時間にわたって採りあげられるため、印象に強く残りがちなのです。

 この本、日本版『FACTFULNESS』という印象を受けました。

fujipon.hatenadiary.com

 われわれの思い込みに対して、実際のデータで、「事実」を紹介し、議論の下敷きになる情報を共有するための本。

 「世界全体」に関して書かれた『FACTFULNESS』を読むと、「人々は思っている以上に豊かになってきて、教育も充実してきているのだな」と、光明が見えた気分になるんですよ。

 ところが、この『日本の構造』を読むと、日本の諸データは、悪い意味での「想定通り」のものがほとんどなのです。

 例えばどのような項目が調査されているか。いくつかの例を記しておこう。企業と労働者の生産性、企業の開業率と廃業率、人々はどの産業で働いているのか、労働者は一企業に何年勤めるのか、定年制の実態はどうか、賃金や所得をどれだけ受け取っているか、女性の労働の実態はどのようなものか、日本人は幸福な生活を送っているか、そして何を生きがいにして生活しているのか、など多種多様な点がわかるように記述して、日本の企業と人々がどういう状況にいつかを知ることができるようにしている。

 僕が若い頃、1990年くらいの日本はバブル景気に浮かれ、日本全体の地価で、アメリカ全土が買える、なんて言われていました。
 その一方で、日本人は勤勉で、働きすぎだと諸外国から批判されている、という話もよく耳にしました。

 日本人は、太平洋戦争後から1960年頃までの日本人は、敗戦による荒廃からの復興、少しでも豊かな生活をしたい、という欲求から、長時間労働を労働者の側も積極的にやっていたのです。当時は、年に2400時間を超す長時間、日本人は働いていました。
 それが、経済成長や生活の安定とともに、1960年頃から減少傾向となり、1975年から90年くらいまでは横ばいでした。この期間は、日本にとっては安定成長期でした。

 1990(平成2)年あたりから再び労働時間は減少した。それもかなりの減少率である。日本人は働き過ぎという外からの批判と、内からの反省が、労働時間減少を促進したと考えてよい。この頃から日本人が働く以外のことに関心を持ち出したこともある。

 では日本人は本当に働き過ぎか検証してみよう。OECD(経済協力開発機構)が各国の労働者一人あたりの年間労働時間の統計(2019<令和元>年)に注目して公表しており、主要国を掲げてみる。

 韓国:1967(時間) アメリカ:1779 イタリア:1718 カナダ:1670 日本:1644 イギリス:1538 フランス:1505 スウェーデン:1452 デンマーク 1380 ドイツ:1386

 韓国人やアメリカ人は日本人よりも長時間働いている。逆にドイツと北欧諸国の特に短い労働時間は特筆に値する。G7のなかでは日本は中位にあたる。働き過ぎでも遊び過ぎ(?)でもない。

 労働時間にはいろいろな論点がある。もっとも重要な論点は、法定労働時間と呼ばれるもので、原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて働くのは禁止されている。この法定労働時間は戦後減少する傾向にあった。この法定労働時間を超えても、労使の合意があれば時間外労働(残業)をしてもよいが、1時間あたりの賃金を割増しせねばならない。日本は25%増であるが、ヨーロッパの50%増と比較すればまだ低い。

 このデータをみると、「もはや、日本人は『働き過ぎ』ではない」みたいです。

 では、働く時間が短くなった代わりに、「生産性」が上がったのか?

あわせて読みたい

「日本経済」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    国会終盤戦は荒れ模様。一部野党の審議拒否連発で、非生産的な国会運営が続く…

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    05月15日 08:35

  2. 2

    「最も忙しい四大臣、待ちぼうけ」官房参与の“嘘”追及で立民らが退席 80分超える空白の時間

    BLOGOS しらべる部

    05月14日 18:36

  3. 3

    ガザ地区の友人から届いたメール「地獄と同じ。なす術も行くあてもない」

    田中龍作

    05月15日 09:35

  4. 4

    新型コロナワクチン接種進むハワイ、米本土観光客は例年並みに

    WEDGE Infinity

    05月15日 11:54

  5. 5

    検査拡大に橋下氏「無症状者への闇雲な検査をしても感染抑止の効果は出ない」

    橋下徹

    05月15日 10:01

  6. 6

    無策を繰り返す政府からの休業要請にエンタメ界が上げた「狼煙」

    松田健次

    05月15日 08:03

  7. 7

    できない言い訳ばかりの政府、恐怖煽るマスコミ…情けない日本のコロナ対応に怒り

    青山まさゆき

    05月15日 09:28

  8. 8

    変異株の真実/感染力は増して若干の軽症化が数字からの結論

    青山まさゆき

    05月14日 22:10

  9. 9

    「緊急事態でも通勤ラッシュは三密状態」日本人が自粛をしなくなった本当の理由

    PRESIDENT Online

    05月15日 11:42

  10. 10

    コロナ禍で「肺炎死亡者が減少」の謎

    自由人

    05月14日 08:12

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。