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「日本で働くから英語は要らない…」これからノーチャンスになる人の根本的勘違い

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在宅勤務やビデオ会議の大きな利点

在宅勤務を実際に導入してみると、さまざまな利点があることが分かった。

働く側から見て、在宅勤務の利点は多くある。何よりも、満員電車で長時間通勤しなくてもすむのは、大きなメリットだ。企業の立場から見ても、都心に広いスペースのオフィスを借りる必要がないので、経費を節約できることが分かった。

このため、多くの企業が在宅勤務を本来の働き方として導入しようとしている。コロナが収束したあとでも、これを続けようというのだ。

在宅勤務への移行は、仮にコロナがなかったとしても、いずれは実現していたかもしれない。しかし、多くの人がその利点に気がつくには時間がかかっただろう。

コロナによって半ば強制的に導入せざるを得なくなったため、多くの人が在宅勤務を実際に経験することができた。つまり、これまでも進んだであろう変化が、コロナによって加速されたことになる。

こうして、働き方が変わり、生活が変わる。そして、ビジネスモデルが変わり、社会の構造が変わる。さらには、人々の考え方や価値観が変わる。このように、変化が連鎖的に起こる。

国境の消滅とテレマイグランツ(遠隔移民)

在宅勤務の広がりは、国内だけのことではない。地球的な広がりを持つ変化だ。

「リモート」とは、「物理的な距離に関係なく勤務できるようになった」ことを意味するからだ。その距離は、30kmであろうが、1万kmであろうが、同じことだ。

したがって、言葉の壁さえ克服できれば、日本に住んだままでアメリカの企業に勤務することが可能になった。

Twitter社は、新型コロナウイルス対策で始めた在宅勤務について、従業員が望めば永続的に続けられるようにすると発表した。日本を含む全世界の約5000人の従業員が対象だ。

また、企業は、全世界から優秀な人材を(本人はその国に住んだままで)リクルートできる。インド人がインドに住んだままで日本の企業に勤務することも可能になっている。リモートとは国境の消滅を意味するのだ。これがもたらす変化は、想像を絶するものだ。

リチャード・ボールドウィンは、『GLOBOTICS(グロボティクス)──グローバル化+ロボット化がもたらす大激変』(高遠裕子訳、日本経済新聞出版社、2019年)の中で、これを、「テレマイグランツ(遠隔移民)」と呼んでいる。

ノートパソコンでビデオ通話

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chaay_Tee

誰もが世界中の有能な人材と競争する

実は、こうした形態の勤務は、アメリカではすでに2000年頃から実際に行われているものだ。

とりわけ、インドとの間でこのような勤務形態が急拡大し、アメリカ企業のコールセンターは、事実上インドに移転した。また、データ処理や会計・法律の仕事についても、インドの専門家がインドに住んだままアメリカ企業で働く形態が一般化した。これがアメリカ経済の生産性を引き上げることに大きく貢献したのは、間違いない。

ビデオ会議の広がりによって、こうした勤務形態はこれから一層拡大するだろう。こうなると、誰もが全世界の有能な人材と競争することになる。

こうした時代に、生き残れるかどうかが問題だ。日本では言葉の壁があるため、これまでは、多くの人がこうした国際競争からは守られてきた。しかし、その状況が急速に変わりつつある。対応できなければ、日本が世界の潮流からさらに遅れてしまうことが危惧される。

しかし、逆に言えば、労働力人口が減少する日本において、経済を再活性化するための切り札ともなりうる。

要は、新しく可能となった働き方を、どのようにして活用するかということなのだ。

いますぐ勉強を始めよう

書店で英語学習書が目につくようになった。特別コーナーを設けている店もある。

「プロフェッショナルの条件は英語の実力!」「外資系に就職するには、まず英語!」「英語を駆使して、国際舞台で活躍しよう!」などという勇ましい宣伝文句が並んでいる。日本企業に見切りをつけて、世界を相手に仕事をしようという時代になってきたのだ。

英語学習熱の高まりは、大歓迎だ。社会人が勉強する必要性は、コロナ以前からあった。それは、社会の変化が加速しているからだ。

急激に変化していく社会においては、学校で勉強したことだけを元に仕事を続けていくことはできず、常に新しいことを勉強していかなければならない。

仕事に必要な知識は10年経てば一変する。「人生100年時代」と言われるようになり、働くことができる期間が長くなっていけば、学校で勉強したことだけですませようと思っても、できないことは明らかだ。

1日1つ、新しい知識を得る

社会人が勉強をするには、目的をはっきりさせたり、カリキュラム(勉強すべき内容と、スケジュール、教材など)を決めたりする必要がある。

これらは、大変重要だが、同時に、簡単にできるものではない。そうすると、「準備ばかりで、いつになっても始められない」ということになりかねない。

勉強は、今日からすぐに始めよう。とにかく始めるのだ。

そのために、1日1つ、新しい言葉の意味を調べることにしたらどうだろうか? テレビやラジオで見たり聞いたりした英語で知らないものがあったら、調べるのだ。新聞に出てくる英語の略語も、片端から調べよう。SDGs、GDPS、DX等々。これは、いますぐできることだ。だから、まずこれから始めてみよう。

スマートフォンで音声検索をすればあっという間だ。これを続けていると、自分がどういう面で社会から立ち遅れているかが、分かる。それが分かったら、その分野をもっと深く勉強するのだ。

ただし、やってみると分かるが、毎日続けるのは、それほど簡単なことではない。夜寝るとき、「今日は、新しい言葉の意味を知ったか?」と点検しよう。

ポジティブに生きるのは、危機の時代においては最も重要なことだ。そして、勉強することは、ポジティブな生き方の中で最も素晴らしいものだと思う。

今日から1日に1つ新しい知識を得る。これをぜひ始めていただきたい。

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野口 悠紀雄(のぐち・ゆきお)
一橋大学名誉教授
1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。近著に『経験なき経済危機──日本はこの試練を成長への転機になしうるか?』(ダイヤモンド社)、『中国が世界を攪乱する──AI・コロナ・デジタル人民元』(東洋経済新報社)ほか。
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