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世間知らずが原因? 「厚労省役人23人の飲み会」を深読みする

厚労省の役人はなぜ大人数飲み会を開いてしまったのか

 新型コロナウイルス感染防止のために、大勢での会食を控えるように呼びかけられているなか、厚労省の役人23人が飲み会を開いていたことが発覚した。彼らは一体どうしてそんな飲み会を開いてしまったのだろうか。体験取材でおなじみの“オバ記者”こと、ライターの野原広子が役人たちの気持ちを推察する。

 * * *

 オバ記者として、年がいもないお転婆をして記事を書くと同時に、さまざまな人の離婚・不倫・職場の愚痴を聞いてきた私。他人の不幸は蜜の味というけれど、仕事もそう。

 世間的にあまり知られていない仕事をしている人から、その内実を聞くほど楽しいことはなくて、知れば知るほど、世の中や時代の輪郭が見えてくる。

 な~んて、偉そうなことをいうほどの記者でないのは、ハイ、皆さま、ご存じの通り。好奇心は人並み以上だけど、話を聞くだけで完全燃焼しちゃって、書く余力が残っていないのよ(笑い)。でも、今度ばかりはちょっと違う。

 厚労省の官僚23人が銀座の居酒屋で飲み会を開いて、ワイドショーで袋叩きにあったでしょ?

「コロナ禍の中、国民を指導する立場の省庁の役人が深夜まで居座り酒? 何やってんだ!」って、まったくそう! 「何か言い分があるなら、ツラ並べて言ってみやがれっ」と私、テレビに向かって毒づいたもの。

 で、その直後、なぜ彼らがそんなことをしたか、ちょっとわかっちゃったんだ。

 さまざまな人から取材をしたと言ったけど、実は霞が関の役人とはこれまでまるで縁がなくて、お見合いパーティーや、飲み屋のカウンターに並んで座ったことすらない。それが60才を過ぎて議員会館でアルバイトを始めたら、「ああ、聞いたことあるわ」くらいのレベルだった省庁の役人が、たえず事務所に現れるようになったんだわ。

 私がバイトで仕えている代議士は、国会で答弁をする前に、関連した省庁の役人からレクチャーを受けるんだけど、会議室のテーブルに着く役人と、たとえ席が空いていても並んだ椅子から頑なに動かない役人がいるの。お茶出しをする私からすれば、お茶の置き場がなくて困るわけよ。

 で、そのうちにわかったの。テーブルに着いて代議士と話す人たちはキャリア官僚で、椅子席がノンキャリアだって。時代劇じゃないんだから、と笑うにはあまりに真剣な顔してやっているから、アルバイトの私は引っ込むしかない。

 そうして3年目を迎えたこの春のこと。ある日、気づいたら議員会館のエレベーターホールの雰囲気がヘンなんだわ。

 30代半ばのお役人の、まぁみすぼらしいことといったら、センス以前の話。みんな、男盛り・女盛りのはずなのに、若い女性役人なんぞは、膝丈のスカートの下から裏地がベロ~ンとのぞいているではないの! ある役人は書類の束をドでかいトートバッグに入れて持っているし、そうでなくても独特の雰囲気があるから、見ればすぐわかるのよ。

 先日、わが事務所に、どこを叩いても高級官僚で、40才をちょっと超えたHさんが人事異動の挨拶に来た。服装はマトモだけど、肌はボロボロ、目はうつろ。原型がわからなくなるくらい髪が伸びて、一言で言 えばヤバい変質者風なんだわ。

 思わず「どーしちゃったの?」と聞いたら、「異動前に片付けなくちゃならない仕事が終わらなくて、1か月くらいまともに家で寝てないんですよー」って笑う目の、まぁ、怖いこと。

「追い詰められると、まず味覚が鈍くなって食べたくない、眠くならないんですよね」と、これは別の官僚の武勇伝?だ。

「なんでこうなるの?」

 さっそくSNSで仲よしのOさん(38才)にチャットで聞いたわよ。Oさんは大手建設会社に勤めた後、議員秘書になった人だ。

 そしたら、「霞が関って、異動のときに、まともな引き継ぎをしない、というかできないんです」と言う。1週間か10日前に内示が出て、バタバタと次の職場に移っていく。後任の役人には1時間くらい会議室で話をしておしまいなんだって。

 それから、こうも教えてくれた。「役人の異動通知には、必ず出身大学と入省年度が書いてあるんです。2つとも役人がものすごくこだわるところで、大学4年生で卒業して、“5年生”で入省。その後“大学10年生”“20年生”になる」って言うの。

 なるほど、学業優秀で高学歴とされる大学にストレートで入って、滞りなく卒業して、国家公務員試験のハードルもサラリと乗り越えた彼らにとっては、どこぞの省庁に入省しても、「お給料の出る大学」って感じ? 回り道も寄り道もせず、というより、そうした道があることも知らず(私に言わせれば、そんな楽しいことも知らず)に役人の一本道を堂々と歩んできた彼らは、世間ズレのしようがないのよ。

 顔見知りの何人かの役人の、老けた少年顔を思い浮かべたら、厚労省の飲み会が行われたのも、なるほど納得したね。世間知らずの大学15年生が、3月の人事異動のドタバタで疲労困憊。判断力をなくした誰かが先輩風吹かせて、「緊急事態宣言明けたし、関係ねーよ。集まれ~!」と号令かけた、かどうかは知らないけど(笑い)、ま、そんなもんでしょ。でなきゃ、このご時世に何の疑問も抱かず、23人もの人たちが深夜まで宴会を開いていたなんて説明つかないもの。

 でも……飲み会よりマズイ、国を支える役人たちのビックリな現実が、まだまだありそうよ。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする

※女性セブン2021年4月22日号

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