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ステイタスか?コントラクトか?結婚の重さと軽さ - 山口真由

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同性婚と選択的夫婦別姓――あなたは、どちらを支持しますか?

こう尋ねたら違和感を覚える人もいるだろう。なんでどっちかだけ支持しなきゃいけないの? どっちも賛成したいんだけど? とね。

(写真:iStock.com/isaxar)

2021年3月17日、札幌地方裁判所が画期的な判決を出した。同性婚を認めないのは憲法14条1項に定める平等原則に反すると判示したのだ。ただし、諸外国で同性婚を認める動きが広がったのはここ最近だから、直ちに民法を改正していなくても国家賠償の対象にはならないとして、原告は敗訴になったのだけど。

2021年4月2日、自民党は新たな作業チームを設けて、選択的夫婦別姓制度(正確には「選択的夫婦別氏制度」ですね)に向けた党内の議論の再開を決めた。9割を超える女性が、結婚に際して夫側の名字に変えている。名前を変えることは、女性のアイデンティティを削り取ることだというジェンダーの議論からも語られがちな夫婦別姓。

さて、“多様性”を標榜するならば、同性婚も夫婦別姓もどちらも応援するのは当然なのだろうか?

1. 結婚はステイタス(社会的地位)か? コントラクト(契約)か?

結婚はステイタスなのか? コントラクトなのか? ――これは長く続く議論である。

(写真:iStock.com/NARIN EUNGSUWAT)

ステイタスとは、個人の努力によっては変えることができない属性を指す。江戸時代の日本は、武士と農工商らがいて、商人の家に生まれたら武士になることはできないのが原則。こういう「家」に帰属することで身の証を立てていた社会では、帰属先を実家から婚家に変える結婚という制度は、間違いなく身分秩序の一端だった。

一方、対等な関係の個人が自由な意思によって取り結ぶのがコントラクトだ。家に生まれた運命を甘んじて受け入れるのではなくて、自分の意思で未来を切り拓きたいと願う者たちは、お互いの間の契約であるという結婚観に希望を託した。

(写真:iStock.com/Prostock-Studio)

眞子様と小室圭さんのご結婚問題は、まさに「身分としての結婚観」と「契約としての結婚観」の闘いだ。皇族というやんごとない家に生まれたのだから、それにふさわしい家柄の人と結婚しなければならないのか。それとも、現代を生きる皇女は、個人としての愛を貫いてよいのか。

アメリカでも、伝統的に結婚はステイタスだった。植民地時代のアメリカを描いた『スカーレット・レター』では、夫以外との間に子どもを儲けた女性が、刑罰として姦婦(かんぷ)を表す“A”という緋文字を胸元に記される。この時代のアメリカで、結婚とは、子どもに安定した地位を与えるためにどうしても不可欠だった。未婚の母の下に生まれた子どもは、自分を庇護(ひご)してくれる「父」を持たない。もちろん血縁の父はどっかに必ずいるのだが、「父のない子」と称される婚外子の面倒を見る義務はない。

そこから分かるように、結婚と未婚の間には歴然の差があった。結婚ならばすべてを与えられ、未婚ならばなんにももらえない。結婚して子どもを産めば居場所がある。未婚は肩身が狭くて、ましてや、未婚で子どもを産むなんてやつは社会から追放される。この結婚と未婚の間の急峻(きゅうしゅん)な崖。この落差が大きいほどに、個人の努力ではいかんとも越えがたいその崖は、結婚をステイタスに近づけると、ハーバード・ロースクールのジャネット・ハリー教授は語った。

2. フェミニストとLGBTQ+ライツの仲違い

結婚がステイタスだとすると未婚の母子はどこまでも報われない。それじゃあ、あんまりだ。なんとかしてやりたい。そうやって、フェミニストたちは、未婚の母子の権利を拡大することに腐心してきた。

2013年9月4日、日本でも非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の定めが、法の下の平等に反すると最高裁が判じる。事実婚についても、今認められている財産分与に加えて、相続も認められるようになるかもしれない。

1970年代、フェミニストとゲイライツの運動家は、間違いなく手を携えて「ふつうの家族」に反旗を翻してきた。結婚へと誘導しようとする伝統的な家族の価値観なるものにそろって背を向け、結婚だけが家族を作る方法じゃないと確かめ合った。

1960年代から1980年代にかけて、「婚姻の平等」という言葉は、未婚の地位を引き上げることを意味した。結婚した者にしか許されていなかった特権を結婚外に解放する。例えば配偶者控除とか、養子を受け入れる資格とか、結婚だけに認められる特権はたくさんある。だが、既婚者だけが享受してきたそういう特権について、未婚のカップルにもその扉が開かれていった。法律婚をしていなくても、長く一緒に暮らして周囲からも認知されているカップルは事実婚として保護される。さらに、法律婚に代わって、同性カップルも対象とするシヴィル・ユニオンという新しい制度が生まれる。そうすることで、結婚は排他的なステイタスじゃなくなる。それは、すなわち結婚の格を下げることだ。その過程で、急峻な崖が緩やかな坂道へと変わっていった。

結婚、未婚 ―― その間に急峻な崖という植民地時代のシステムは、法律婚、事実婚、シヴィル・ユニオン、未婚 ―― 様々なタイプの結びつきを自らの意思で選べるという緩やかな坂道になっていった。そして、これは結婚がステイタスから遠のいていったことを意味すると、ハリー教授は語る。

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