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焦点:出口見えない「アルケゴス」禍、クレディ・スイスの苦悩


[チューリヒ 7日 ロイター] - 今週、クレディ・スイスのトーマス・ゴットシュタイン最高経営責任者(CEO、57)は現職に留まることを決断した。米ヘッジファンドのアルケゴス・キャピタル・マネジメント関連で47億ドルの損失を計上しただけに、投資家がもっと思い切った対応を求める可能性は高い。

クレディ・スイスの株価はこの1カ月で25%下落した。スイス第2位の規模の同社は、まず英グリーンシル・キャピタル、次いでアルケゴス・キャピタル・マネジメントの破綻という逆風に見舞われている。

自行の名声への長期的なダメージを防ぎ、顧客・社員の離反をどう食い止めるか。スイス国籍のゴットシュタインCEOは過酷な課題を抱え込んだ。

クレディスイスの債券に投資している投資家の1人はロイターの取材に対し、「ここ数ヶ月に起きたことはひどく残念だ。私たちが期待する水準を大きく下回っている」と語った。

だがアナリストや投資家らは、さらに深刻な影響が表面化するのはこれからだ、と語る。同社会長にはアントニオ・オルタオソリオ氏(CEOを務めていた英ロイズ <LLOY.L >のスタッフのなかには「AHO」とイニシャルで呼ぶ者もいる)が就任するが、それまでは、ゴットシュタインCEOも事態への対応には動きにくい。

「評判の低下による影響全体が見えてくるには時間がかかるだろう」とボントベル銀行でアナリストを務めるアンドレアス・ベンディッティ氏は指摘した。

<損失は利益の3倍近く>

クレディ・スイスは6日、アルケゴスが追加証拠金の支払いに「応じられなかった」ために44億スイスフラン(47億1000万ドル、約5167億3400万円)の損失を被ることになると発表した。

損失の規模は昨年の利益の3倍に近く、ライバルのUBS <UBSG.S >が2011年にトレーダーによる不正取引で被った損失23億ドルを圧倒的に上回る。

これまでスイスの各銀行は、事業が計画通りに進まなければCEOを解任することをためらわなかった。UBSにおけるトレーダーの不正取引事件ではオズワルド・グリューベルCEOが辞任した。ゴットシュタインCEOの前任だったティージャン・ティアム氏は、元幹部らを内偵していた責任を問われて辞任した。

投資銀行・資産運用会社でのキャリアを経て、ほんの1年前にクレディ・スイスCEOに就任したゴットシュタイン氏は、今回の事態にすばやい対応を見せ、投資銀行部門とリスク管理部門のトップを交代させた。

その後、同CEOはグリーンシルが発行する債券のみに投資していた100億ドル規模のファンドを閉鎖せざるをえなくなった資産運用部門を、ウェルスマネジメント事業から切り離す予定だと発表した。

<会長交代は決め手になるか>

投資家らは、アルケゴスとグリーンシルの問題に関する第三者による2件の調査と会長交代が完了するまでは、クレディ・スイスが幅広い改革を実施するのは難しいだろうと予想している。

事情に詳しい情報提供者は、「会長交代を控えているため、当面、トーマス・ゴットシュタインCEOの地位は保証されている」と語る。

2011年からクレディ・スイスの会長を務めているウルス・ローナー氏は4月末に退任する予定となっており、まもなく行われる年次株主総会においてリテールバンキングの専門家であるオルタオソリオ氏が次期会長に選出される見込みだ。

年次株主総会での議決について株主にアドバイスを提供するコンサルティング会社のエートスは、「次の年次株主総会で予定されている会長交代により、リスク管理に関してもっと焦点を絞ったアプローチができるような新しい企業文化の確立が可能になるよう願っている」と述べている。

エートスでは、2件の調査により取締役会の説明責任を検証し、結果を公表するよう求めている。

だが、クレディ・スイスが動揺している今、安心感を求める人々にとっては、会長交代も面倒を生んでいる。

シニアアドバイザーの1人は「誰に話を持っていけばいいのかまったく分からない」と言う。「ゴットスタインCEOの立場は弱まり、ローナー会長はじきに辞めてしまうし、オルタオソリオ次期会長はまだ就任していない。こういうときこそリーダーシップが必要なのに、すべてが錯綜している」

クレディ・スイスに近い情報提供者は、仮に会長交代の予定がなかったとしても、同社はすでに大きな構造改革に着手していた可能性がある、と語る。

別の情報提供者によれば、一方でクレディ・スイスは証券プライムサービスにおけるエクスポージャーの統合を進めており、より徹底的な検証によって、同部門及び投資銀行全体においてリスク低減がもたらされることが期待されるという。

<顧客や主力社員を失う恐れ>

もっと切迫しているのは、このところの問題を受けて、顧客や主力級の社員がクレディ・スイスから離反してしまうのではないかという懸念だ。

香港の某ヘッドハンティング企業によれば、クレディ・スイスのマーケット事業に所属する複数の社員がアルケゴス問題の余波を受けて転職を検討しており、問い合わせを受けているという。

ウェルスマネジメントを専門とするモナコの投資顧問会社の会長は、クレディ・スイスのプライベートバンク部門のトップ社員を何人か獲得できる可能性がある、と語る。

このウェルスマネジメント企業の会長は匿名を希望しつつ、「我々のような投資顧問会社や、クレディ・スイスの競合企業にとっては、超富裕層セグメントにおいて市場シェアを拡大する大きなチャンスだ」と語った。

人材流出の可能性について、クレディ・スイスはコメントを控えるとしている。

退社するブライアン・チン氏に代って投資銀行部門を率いるのは、オーストリア出身のクリスチャン・マイスナー氏。同氏と親しい情報提供者によれば、人材の流出を食い止め、特別買収目的会社(SPAC)の上場などクレディ・スイスの業績が好調な分野において事業を拡大することが任務になるという。

「社員はすぐに辞めるわけではなく、まず転職先を見つける必要がある。だからマイスナー氏としても、彼らに(クレディスイスに残っても)まだ競争力があり、(顧客の)信任を得られることを示す時間の余裕がある」とこの関係者は語る。

ゴットシュタインCEOは6日、スイス紙NZZに対し、各部門が協力して富裕層の顧客に奉仕するというビジネスモデルが今もなお有効であると信じており、それによってリスク管理が「向上する」と語った。

ゴットシュタインCEOがこのモデルにこだわるのであれば、彼は収益性向上への道筋を示し、その一方で、これまでよりはるかに厳しいリスク管理を維持する必要があるだろう。

シドニーのバータム・アセット・マネジメントのジェイソン・ティー最高投資責任者は、「彼らは収益を失ってしまったし、別の道を見つけなければそれを取り戻すことはできないだろう」と語る。

(Brenna Hughes Neghaiwi記者、Oliver Hirt記者、翻訳:エァクレーレン)

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