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ひっそりと進む聖火リレー……東京五輪から「体制側の正義」しかみえてこない 池田純「スポーツビジネス・ストロングスタイル」#9

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「国民のために働く内閣」への疑い

 もう一つ見えてきたこと、それは、中間管理職的リーダーの限界です。

 安倍政権時代に強く見られた権力主義、ことなかれ主義が、その最終盤に綻びを見せ、菅政権になると明らかに崩れてしまったように私は感じます。

 その背景には、国民からの期待を背負って滑り出した新政権が、その出だしでさまざまな失策を犯し、そのリーダーシップに大きな疑問符がついたことが影響しています。国民はもはや、リーダーとしての姿勢に共感できなくなっているように私は思います。

 政権発足当初、「国民のために働く内閣」を掲げ、理念よりも実務で評価を受けよう、と意気込んでいたように記憶しています。昨年9月の世論調査での支持率は6割を超えていました。国民の過半が、菅新首相に期待していたのです。

 ところが、その国民にとっての最大関心事であるコロナ対策で、最初から躓き続けてしまった。少なくともそのように、一国民である私には映りました。自身の会食の件でもミソがつきましたが、GOTOトラベルの停止時期をはじめ、さまざまな施策はすべて後手後手。結果、新しい時代を切り拓くリーダーとしてのイメージを形づくれないまま今に至っています。

 おそらく、GOTO案件をはじめとして、リーダーであるはずの首相の政策決定には、与党の派閥の領袖の意向が色濃く反映されているのでしょう。その積み重ねの中で、「やることすべて、本当に国民のため?」という印象を国民の多くが抱いてしまうことになりました。

国もスポーツも大切なのは「民意」

 国をみてもスポーツをみても、やはり本質的に大切なのは「民意」です。

 もちろん、民意に媚び、民意ばかり汲み取りすぎても時代を切り拓くことはできません。が、自分が率いる組織、自分が関わるスポーツの未来よりも、自分の周りにいる任命者のほう、あるいは親会社の方を見て物事を決めてしまうと、変わるべき組織が変わらないまま、時代に取り残されていってしまいます。

 一部の体制側の人はそれでいいでしょう。

 しかし、「体制側の正義」に固執し、忖度しつづける「中間管理職的リーダー」では、コロナ後の困難な時代には、その他大勢の人々を不幸にしてしまうのではないでしょうか。

「中間管理職的リーダー」は、端的にいえばリーダーではありません。次世代を担う若者や子どもが目指し憧れるようなリーダーでは、まったくもってありません。

 そして、そのようなリーダーでは乗り切れない現実を前にして、今こそ日本のリーダーのあり方が変わるべき時期が到来していると私は考えています。

 先述したとおり、日本のスポーツ組織が様々な場面で溜め込んできた膿みが出続けていて、それでも一向に大きくは変わらないこと。

 沈黙を貫いて権力にもたれかかるより、言うべきことは恐れず言う空気が醸成され始めていること。

 そのほうが民意と世論の支持も得やすい風潮になりつつあること。

 つまり、各組織に携わる人たちが、これまでは飲み込んでいた言葉を外に出し、ハッキリと声を上げていくことで、組織が生まれ変われる可能性、流れが生まれてきているのです。

 いまは、それぞれの組織が、日本が、旧来のあり方から脱せるか、脱せないかの分岐点だと思います。

 そんな大きな時代変革の流れがある中で、東京オリンピック、パラリンピックはどうなっていくのか……。どうすれば、コロナ後の日本の元気復活に寄与する元気玉になっていくのか……。

 先述したとおり、声をひそめ、ただ「開催」というゴールだけをひっそりと目指しているかのようにみえるオリンピックは、残念ながら「変われない」例の一つになっていくような気がしてなりません。

 開催して終わり、で一過性のカンフル剤にならないことを祈ってやみません。

“次のリーダー”を狙う人にとっても大きなチャンス

 様々な問題が噴出して、結局は変わらなかったものは、やがて人々の興味の範疇から外れ、人気を失っていく。反対に、この機に「変われる」ことを示せた組織は、ひとつの新しい未来を切り拓きながら次の時代へ、民意の興味と共感とともに生き残っていくのではないでしょうか。

 今は、“次のリーダー”のポジションを狙う人にとっても大きなチャンスです。

 コロナ禍で危機に立たされたスポーツ界。各々が新たな取り組みを模索していることは理解していますが、パラダイムシフトと呼べるような劇的な変化は起きていないように思います。だからこそ、思いきって大胆なアイディアを打ち出せば、大きな話題になり、世論の支持も得られるでしょう。それを追い風にして、リーダーの座へ近づけるチャンスだと思います。

 ひとつだけ留意すべき点があるとすれば、そのポジションの取り方です。

 森喜朗氏が川淵三郎氏に組織委会長職を“密室”でバトンタッチしようとしたような後継指名のあり方、ある種の“禅譲”が、これまでのスポーツ界ではまかり通ってきました。そのため、前任者かつ任命者の影響力が強くなり、結果として「中間管理職的なリーダー」しか出てこない、という構造的な問題が残り続けてきました。

 また、そうしたトップ選任の手法では、リーダーを志す、その能力も資質もある人材がいたとしても、ポジションを取るチャンスすら与えられない、という状況が生じてきました。

 本来的には、私は、多くのリーダー候補者に平等に機会を与えるために、可能な限り選挙制を導入すべきだと思います。

 そうすることで、今よりはるかにましな、健全な世代交代が進んでいくのではないでしょうか。

今こそ「我こそは」と歩み出るべき

 当然のことながら、政治の世界ではトップは直接間接問わず、選挙によって選出されます。変革の必要性を社会が共有したとき、それは民意となって投票結果に反映され、従来のしがらみを越えて、新たなリーダーが誕生します。

 大阪府知事や、先日誕生した新しい千葉県知事などがいい例でしょう。与野党の政争にとらわれず、国民目線である種の“自治領”をつくり上げようとしているように見えます。しがらみと保身に囚われない“中間管理職”ではないトップとして、自立したリーダーとして、独自の考え、判断に基づいて、施策を展開することに共感が育まれる時代です。そういったリーダーが日本中に誕生することに、国民もコロナ後の時代への期待感を抱くのではないでしょうか。

 さて、現状のスポーツ界に、こうした時代の潮目を察知し、声を挙げていく、リーダーはいるでしょうか。

 さまざま困難はあっても、その競技、その組織を今後、より発展させていきたいと心から願うのであれば、次のリーダーを志す人たちは、「我こそは」と歩み出るべきだと思います。

 コロナがあるから、今は守りだ。

 そう思っているスポーツ関係者が多いからこそ、あえて今、私はこう強調したいと思います。

 今がまさに、新しくリーダーを志す人がそのポジションを掴み取りにいく時です。

※さいたまブロンコス公式サイト https://broncos20.jp/
※池田純オフィシャルサイト https://plus-j.jp/

(池田 純)

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