- 2021年04月09日 17:11 (配信日時 04月08日 09:15)
「銀行でムリなら信用金庫に戻す」第二地銀を震えさせる金融庁の腹案
2/2金融庁の「異例人事」はその布石か
金融庁は昨年7月に遠藤俊英長官が退任し、後任の新長官に金融国際審議官の氷見野良三氏が昇格した。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studioまた、長官人事に合わせ、局長クラスの異動も行われ、氷見野氏の後任には総合政策局長の森田宗男氏(1985年大蔵省入省)が就いた。後任の総合政策局長には中島淳一企画市場局長(1985年)が回り、その企画市場局長には古澤知之証券取引等監視委員会事務局長(1986年)が充てられた。栗田照久監督局長(1987年)は留任した。
この一連の幹部人事の陰で金融界を驚かせたのは課長級の異動だった。監督局銀行第一課長であった新発田龍史氏(1993年)が、銀行第二課長に就いたことだ。
「銀行第一課長はメガバンクなど大手金融機関を所管し、第二課長は大手地銀など地域金融機関を所管する。銀行第一課長から第二課長に異動する人事は異例だ」(金融庁関係者)という。
この異例の人事は、遠藤俊英前長官が退任にあたり地域金融機関に示した最後のシグナルと受け止められている。遠藤氏は退任直前の昨年7月中旬、最後の地域金融機関トップとの会合で次のように語りかけている。
「地域金融機関については持続可能なビジネスモデルの構築が課題である。このためには、経営トップの皆さまの決断と実行が重要であり、具体的なアクションに踏み出していただきたいと折に触れて申し上げてきた。実際、さまざまな動きが見られるが、全体としては、多くの地域金融機関で経営改革が進んでいるというところまでは至っていないと認識している」
普銀化を進めたかつての法律が変わる
地域金融機関の経営改革は道半ばであり、その課題は氷見野新長官に引き継がれた。新発田氏の銀行第二課長は、そうした金融庁の意思表示と映る。
第二地銀を協同組織金融機関に先祖返りさせる施策はまさにその象徴であり、布石は昨年末に敷かれている。12月に公表された金融審議会の銀行制度等ワーキンググループの報告書で合併転換法の改正が提言されたことがそれだ。
同法律により相互銀行が一斉に普通銀行に転換したことは先に触れた。その法律が今、改正されようとしているのだ。
金融庁が準備している同法の改正では「地銀から信金への業態転換が強く意識されている」(地銀幹部)という。
例えば、金融機関の業務範囲は法令で定められており、信用金庫法では取引できる法人の規模は規定されている。信用金庫は従業員数300人超、かつ資本金9億円超の企業には融資が行えない。仮に第二地銀が信用金庫に転換した場合、既存取引先への融資が継続できなくなる恐れがあるのだ。
このため改正される合併転換法では、こうした融資についても、一定の条件を満たせば金額、期間に関係なく資金の供給を続けられるように措置されている。
「ウルトラC」の施策が実現するのか
金融庁は合併転換法の改正案を準備しており、今国会に上程される見通しだ。
ただし、第二地銀が信用金庫と同様の協同組織金融機関となり、同じ土俵で競争することには、信金業界の反発は根強い。
また、信金関係者によれば、「第二地銀が信金と統合し、協同組織金融機関に転換した場合、営業基盤が限られるという問題も残る」とされる。
このため、合併転換法の改正案には総論賛成でも各論では異論が噴出する可能性が高いと見られている。だが、現在の厳しい経営環境が続けば、いずれ地域金融機関の救済措置が必要となる。その時、第二地銀の信金転換はまさに「ウルトラC」の施策として一挙に現実味を帯びてきそうだ。
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森岡 英樹(もりおか・ひでき)
経済ジャーナリスト
1957年生まれ。早稲田大学卒業後、経済記者となる。1997年、米コンサルタント会社「グリニッチ・アソシエイト」のシニア・リサーチ・アソシエイト。並びに「パラゲイト・コンサルタンツ」シニア・アドバイザーを兼任。2004年4月、ジャーナリストとして独立。一方で、公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団(埼玉県100%出資)の常務理事として財団改革に取り組み、新芸術監督として蜷川幸雄氏を招聘した。
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(経済ジャーナリスト 森岡 英樹)
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