新教科書は生徒が課題を見つけ、その解決策を探る道標
来年4月から主に高校1年生が使う教科書の検定結果が3月30日、公表された。文部科学省によると、新学習指導要領に対応する初めての高校の教科書で、生徒が自分で課題を見つけてその解決策を探る道標となる。文科省は新しい学習指導の理念を「探求学習」に求め、これを「AL(アクティブ・ラーニング)」と呼ぶ。ALは全11教科に盛り込まれた。

新学習指導要領では、日本と世界の近現代史を融合した「歴史総合」や、防災などを学ぶ「地理総合」、主権者教育を行う「公共」、プログラミングが必須の「情報I」などが新設され、今回の検定で11科目136点が合格した。
これからの高校生たちには難問に果断に挑戦し、解決できる柔軟な能力を身に付けてほしい。それが揺るぎない日本の将来を創ることにつながる。
すべての教科書に「わが国固有の領土」という表現が登場した
今回の教科書検定は1年かけて実施され、教科書会社から298点の申請があり、検定意見が付いた修正を経て296点が合格し、1点が不合格となり、1点が申請を取り下げた。
沙鴎一歩が注目するのは、新学習指導要領に基づいて「地理総合」と「公共」の全18点で、北方領土(北海道)や竹島(島根県)、尖閣諸島(沖縄県)について「わが国固有の領土」という表現が登場したことである。
ちなみに検定意見による修正はたとえば、次のように行われた。
▼北方領土 「現在も事実上、ロシアによって統治されている」
→「現在もロシアによる不法占拠が続いている」
▼竹島 「閣議決定によって島根県に編入し、国家による領有の意思を公的に示した」
→「閣議決定によって公的に示した。残されている問題について日本は平和的な手段による解決に向けて努力している」
▼尖閣諸島 「日本が実効支配している」
→「日本が実効支配しており、領有権の問題はないとされる」
▼慰安婦問題 「従軍慰安婦など未解決の問題は多い」
→「従軍慰安婦など政府は解決済みとしているが、問題は多い」
それにしてもここまでくるのにどれだけ長い時間を費やしたことか。日本は敗戦国の負い目から韓国や中国などのアジアの国々の意見や立場に配慮して領土などに関する主張をきちんとしてこなかった。それが教育にまで浸透していた。これまで教科書にきちんと、固有の領土や歴史的事実が正しく明記されていなかったこと自体が、問題で異常なのである。
「自虐史観が拭えぬ教科書で歴史を学べない」と産経社説
新聞各紙は3月31日付の社説で一斉に取り上げ(毎日新聞は4月1日付)、それぞれのスタンスで評価したり、批判したりしている。見出しだけを見ても、「『従軍慰安婦』 削除必要だ」(産経社説)、「多様な視点 育む検定に」(朝日社説)、「主体的に学ぶ授業への転換を」(読売社説)、「探究支える体制づくりを」(毎日社説)と意見がわかれている。

このうち産経社説は書き出しから手厳しい。
「来春から使われる高校教科書の検定結果が公表された。新科目の『歴史総合』で戦後の造語である『従軍慰安婦』の文言が検定をパスするなど、相変わらず偏向した記述が目立つ」
「自虐史観が拭えぬ教科書で、視野広く歴史を学ぶ授業が進められるだろうか。憂慮する」「従軍慰安婦」を戦後の造語と糾弾し、検定を通過したこと自体を批判し、日本の過去の行為を否定する「自虐史観」の存在を懸念する。実に産経社説らしい主張である。
「強制連行」をチェックするなら「従軍」もチェックすべき
産経社説は「高校の学習指導要領改訂に伴う初の検定で、教科書の内容が一新される。歴史総合は近現代中心に世界の流れの中で日本の歴史を学ぶ必修科目だが、多くの教科書が慰安婦問題を取り上げ、『従軍慰安婦』のほか、『慰安婦として従軍させられ-』との記述が検定を通った」と指摘した後、こう訴える。
「教科書検定では、日本軍や官憲が強制連行したとする誤った文言はチェックされるようになった。慰安婦に『従軍』を冠するのも根拠はなく誤解を生む記述だが、検定をすり抜けているのが実態だ。国際的な情報発信の上でも、教科書に不適切な記述が放置されぬよう是正が急がれる」
慰安婦問題において「強制連行」と「従軍」は同意語である。強制連行をチェックするなら、従軍という表現もチェックすべきだ。
さらに産経社説は指摘する。
「『従軍慰安婦』は、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話でも使われ、9年度から使用の中学教科書に一斉に登場した経緯がある」
「これを機に日本をことさら悪く描く歴史教科書に批判が起き、一時は中学教科書から『従軍慰安婦』が消えるなど、記述の是正が進んだ。しかし、今春から使用される中学教科書で復活した。是正を阻む背景には中韓などに配慮する教科書検定の『近隣諸国条項』がいまだに残り、検定を縛っていることがある。河野談話とともに改めて見直しを求めたい」
日本が韓国や中国に配慮する姿勢がおかしいのである。日本が過度の配慮を行うから、韓中は批判の足がかりを得てしまうのだ。