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アベノミクス大型補正予算の課題 ~ いかにして「ばらまきを減らすか」ではなく、いかに無駄を排除して国民に「ばらまく」かである

「不要不急の公共事業をばらまき、経済対策の規模だけを膨らませるのでは困る。徹底的に無駄を排除し、成長力の強化やエネルギーの安定供給に資する施策を選別しなければならない」

23日付日本経済新聞は、「ばらまき排し経済成長促す補正予算を」と題する社説の中で、このように主張をしている。その内容は、今の日本国民を代表する意見であり、テストの答案としては満点を貰える可能性の高いものかもしれない。しかし、教科書的に正しい意見が、必ずしも正解とはなり得ないのが現実の社会、経済の難しいところ。

「ばらまき排し」という主張は正しいものなのだろうか。復興予算の転用問題や、一部省庁や独立行政法人の問題等をみると、税金の無駄遣いの問題は、国民に「ばらまく」べき予算が、(一部省庁や独立行政法人等に中間搾取され)国民に「ばらまかれなかった」ことにあるという見方もできる。

「徹底的に無駄を排除し、成長力の強化やエネルギーの安定供給に資する施策を選別しなければならない」という主張は、教科書的には正しいものではあるが、現在の経済状況における政策目標としては、必ずしも正しいとは言い切れない。

なぜならば、日本だけでなく、現在の世界の主要国が抱える問題は「雇用」であるからだ。「徹底的な無駄の排除」を「生産性向上」という意味で捉えてしまうと、「雇用」問題を解決することは出来ない。経済の規模拡大が望みにくい経済状況下での「生産性向上」は、「雇用拡大」に逆行するものであるのだから。「徹底的な無駄の排除」は、「一部省庁や独立行政法人等に中間搾取される税金を無くす」という意味で捉えるべきである。

10兆円規模と言われる補正予算が、省庁の組織の論理で国民に渡って行かないことが無いようにするという点では、マスコミの責任は重大である。財務省を始めとした中央省庁と、経団連を中心とした財界の広報部に成り下がっている今の日本のマスコミに、こうした重責が果たせるかは不安である。

この社説の中では「重視したいのは新産業の育成や新技術の開発を促すような施策である。再生エネルギーの普及に欠かせない送電網の整備や蓄電池の開発などを後押しすべきだ」という主張もなされている。発電された電気の約5%が送電ロスによって失われていると言われる状況では「送電網の整備」などは欠かせないインフラ整備であると言える。

しかし、「新産業の育成や新技術の開発を促す施策」というのは中長期的な施策であり、切れ目のない経済対策としての即効性を期待できるものではない。国内では、今後の日本は新技術の開発という付加価値の高い業務で生きて行くべきであるという主張が一般的である。しかし、この主張の問題点は、新技術の開発などの付加価値の高い業務は誰でもが出来るものではない。例えば、どんなにIPS細胞関連技術が将来性を持った新技術であったとしても、筆者がその研究開発に加わったら「ジャマ中」以上の足手まといになることは確実で「無駄の排除」の対象になることは必至。

日本に限らず世界の主要国の抱える大きな社会問題は「雇用」である。そしてその「雇用」は「数」である。誰にでも出来ないからこそ高付加価値である研究開発などでは、「数」の問題を克服することは難しい。「数」を確保するためには、誰もがまじめに働きさえすれば出来る仕事を絶やさないことが必要になってくる。この「数」の確保を公共事業で行うのであれば、公共事業に「効率性」や「無駄の排除」という経済原則を必要以上に問うのは賢明とは言えない。

必ずしも付加価値と効率性が高くない、しかし、「雇用数」を確保できる仕事を、「一部省庁や独立行政法人等に中間搾取される」ことなく国民のもとに届けられるか否か。公共事業にはこうした発想の転換も必要である。

「老朽化したインフラの補修や公共施設の耐震化に、一定の投資が必要なのは確かだ。これを口実に無駄な公共事業を膨らませる動きには首をかしげざるを得ない」

この社説のこのような主張に象徴されるように、日本のメディアや有識者の主張する政策の特徴は、エコカー減税やエコポイントなど「個人消費の先食い」政策には熱心だが、「公共事業の先食い」には批判的なこと。さらには、「社会の高齢化に伴って社会保障費だけで年間1兆円増え続けるから消費増税が必要である」という「人間の高齢化」は声高に主張するものの、公共事業に繋がる「社会インフラの高齢化」には消極的なことである。

「社会インフラの高齢化」が進む中、公共事業費は1999年度の14.9兆円から2011年度は6.2兆円(共に補正込)へと大幅に減少して来ている(「失われた20年」のスタート年度となった1990年度の公共事業費は8.1兆円)。中央自動車道の笹子トンネル崩落事故も、「社会インフラの高齢化」を軽視してきたことのツケでもある。

「コンクリートから人へ」という空虚なキャッチフレーズのもとで「社会インフラの高齢化」に対応する公共事業が必要以上に削減され、「コンクリートが人へ」という悲劇が発生したことでどれだけ社会の「効率性」が低下したかを考えるべき時に来ている。

公共事業に過度に「効率性」を求めるのは、今の時代にはそぐわないものである。個々の事業の「効率性」を追求するがゆえに、社会全体の「効率性」が失われてしまっては本末転倒である。必ずしも付加価値や効率性が高くない事業であっても、それが「雇用」を生み、税収増や、生活保護費の削減が図れるならば、社会全体としての「効率性」は維持されていると言えるはずである。

税金や国債を原資とした公共事業に求められるのは、「ばらまきを止める」ことではなく、国民に仕事(お金)を「ばらまくこと」である。そのために徹底的に削除しなければならないことは「一部省庁や独立行政法人等に中間搾取」という無駄である。政府も国民も公共事業に関する認識の「次元」を変えて行かなくてはならない過渡期に来ている。

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