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「終末論」さえも管理強化に利用しようとする中国政府

 マヤ暦に基づく終末論が世界各地で盛んだったようですが、中国ではこれに便乗して信者を増やしたとされる「全能神」のメンバーが1000人以上逮捕されるという事件が起こりました。

 法輪功事件の時は殆ど連日法輪功の「悪行」を訴える記事のオンパレードで、いやでも記事が目に入る状態で、おかげで逆に教義などに詳しくなってしまったものですが、今回は当時よりは巧妙に対処しているようで、あまり大きな記事は出ておりません。

 そうは言っても、やはり敵を攻撃せずにはおれないのが中国で『中国青年報』が「让非理性谣言止于“世界末日”说 」という記事を配信していたので、今日はこれについて少し。


1 記事の紹介

 最初にいつものとおり、記事を翻訳したものを簡単に紹介させていただきますが、なお、結構長い記事なので、いつも以上に省略した形で紹介させていただきます。

 母親に電話して最近の状況などを聞いた。そうした故郷では「終末論」が猛威をふるっていることを初めて知った。母も「備えあれば憂いなし」として私のためにも食品を買っていると聞いたときは可笑しかった。

 ただ、母は30年間教師をしており、教養が低いとは言えないはずで、ただ息子への愛情からだと言い聞かせたが、「終末論」の影響力を感じさせられた。

 ネットで調べると、ここ数年似たようなことが沢山あることが分かった。津波で核が再度漏れ出すといったものや、(放射能に効くとして)塩を買い占めたり、船のチケットを買うというデマが再三流行っているが、これは科学的知識が欠如しているからに他ならない。

 関係する調査もこのことを現している。2010年の11月に中国科学技術協会が公表した結果によると、2010年に中国で基本的な科学的素養有している公民は3.27%で、日本(1991年3%)、カナダ(1989年4%)、EU(1992年5%)を見ると主要先進国の80年代末から90年代のレベルでしかない。

 これを見るに、我々には、もちろん学識豊かな深い中華文明があるが、無知で愚かな後れた文化もあある。こうした古くさい迷信は無くなっておらず、酷いときは金儲けを狙った邪教の宣伝もあり、家庭の不和、社会秩序の騒乱などを誘発します。

 そのため、政府はこれに対し、警戒心を強め、迷信を捨てさせなければならない。そのためには、大衆の科学的素養の育成が大事だ。教育は青少年に対して更に積極的に科学知識の教育を展開し、迷信が芽生える土壌を根絶しなくてはならない。

 一方、公共の文化サービスを進めて、大衆、特に農民の科学的素養を高めることが必要だ。都市と農村の格差は、農村での科学的な知識の普及を遅らせ、各種の封建的な迷信を蔓延らせている。科学文化のサービスに農民に行き渡らせ、農民にも恩恵を与え、科学知識の効果を見せることが大事だ。

 次に、大衆の理性強化が必要だ。法律に基いて理性的でないデマの監視を強化していかなくてはならない。同時に、政府の大衆に信頼される力も強化する必要があり、政府が声明を出せば、直ちにデマの拡散が制止できるようにすべきだ。



2 個人的感想

 元記事で触れている「塩の買い占め」は東日本大震災の放射能漏れ事故のあと、中国で塩には放射能に有効なヨウ素が含まれているとして、買い占め事件が起こったことを指しています(放射能とSARSと買いだめ)。

 これなどは大衆心理の怖さで、後から考えると「可笑しい」事件でしかないわけですが、日本でも石油ショックの時にトイレットペーパーの買い占めや、震災後にかなりの買い占め事件が起こっており、いろいろ考えさせられる事件です。

 中国政府は単純に「迷信」として科学的知識が増えればこうしたことはなくなると考えている様ですが、人とはそんなものではないと思います。基本的には先のことが予測できない恐怖から「迷信」といういか「心の拠り所」が必要になると考えます。

 成功している人でも、いつ没落するかわからなければ、いつ事故にあって死ぬかも知れません。社会の底辺にいる人は、社会の現実に絶望して「心の拠り所」を求めるかもしれません。

 何にしろ人はそんなに理性的でなければ、強い存在ではないということは、今回のマヤ暦だけでなく、「ノストラダムスの大予言」などこれまでにも何度か終末論が流行ったことでもわかるかと思います(台湾に震度14の大地震?)。

 あと、中国的要素を最後に追加しておくと、元記事にもあった都市と農村との格差に代表される格差問題が大きな影響を与えていると考えます。鄧小平の「先豊論」で豊かになる者が出る反面、貧しい者は日々の生活にも苦労している現実。

 皆が貧しければ人は我慢できますが、すぐ側に消費生活を謳歌している人々がいれば、ヤケクソになて「終末論」でも何でもいいから、社会をリセットしてくれという気持ちになるのも理解できないわけでありません。

 本来は社会の格差の解消など根本的な問題解決を目指すべきなのに、対処療法的に、そうした状況さえも利用して、管理を強化しようとしている中国政府が何とも言えないと思ったが故の今日のエントリーでした。

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