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「南シナ海行動宣言」ガイドライン合意の評価と今後の展望 - 関山健

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2.南シナ海における中国の権益



このように、中国の南シナ海進出は1980年代以降の中国海洋進出の積極化の流れと軌を一つにして進められてきたのであるが、その背景にあるのは中国にとって重要な海洋権益の存在である。

1970年代末に改革開放路線へ舵を切った中国にとって、経済建設のために資源開発を中心とする海洋経済利益が重視されるようになったのであるが、南シナ海は正に海洋資源の宝庫である。

1988年に中国が乗り込んだベトナム南部海域は、ベトナムが石油開発鉱区を設置して石油開発を行っている海域と隣接している。中国は、この海域で1992年にアメリカの石油会社へ探査権を与え、探査活動に対する軍の保護まで約束している。

また、1990年代中頃に中国が実効支配を握ったミスチーフ礁の海域も、フィリピンが設定した石油鉱区が近接している。こうしたことから、平松(2002:223)は、いずれの海域に対する進出も、こうした石油資源を目的としたものであると指摘している。 

また、南シナ海北部の大陸棚斜面および西沙・中沙・南沙諸島の海底には多金属団塊が採取され、その多金属団塊にはレアアース類の成分も多く含まれており、その含有量は商業ベースに乗る水準とされる(平松2002:208)。

さらに、南シナ海では、中国が実効支配したミスチーフ礁の西側海域をマラッカ海峡から日本へ至るシーレーンが通っている。まさに中国のいう海洋交通利益の要である。このシーレーンの北側には中国が1970年代から実効支配を固めている西沙諸島があり、西沙諸島の主島たる永興島には2600メートルの滑走路を要する本格的な空港基地が建設されている(平松2002:147)。

先に指摘したとおり、ミスチーフ礁にも1990年代末には恒久的な軍事施設が設置されるようになっているため、中国はシーレーンを挟んで北側の西沙諸島に本格的空軍基地、南側に海軍基地を擁して、この海域の制海権を握らんとしている状態にあるのだ。

このように南シナ海の実効支配を固めた中国にとって、2002年の「南シナ海行動宣言」による現状維持と共同開発の路線は、ASEAN諸国に対する歩み寄りというより、むしろ自国の海洋権益を実効たらしめる路線であると言えよう。

特に中国のいう共同開発は、注意が必要な概念である。中国は、南シナ海において「擱置争議、共同開発」(争議を棚上げし、共同開発する)という方針を採っているが、中国外交部は、この「擱置争議、共同開発」を以下の4点の原則から成るものだと説明している鄱。

すなわち、(1)関係する領域の領有権は中国に属する。(2)領有権争議解決の条件が熟していない場合には争議を棚上げしうる。なお、争議の棚上げは主権の放棄を意味しない。(3)係争領域は共同開発することができる。(4)共同開発の目的は、協力を通じた相互理解の増進と領有権問題解決の条件整備にある。

つまり中国のいう共同開発とは、あくまで南シナ海が中国の海であるとの原則に立ち、関係諸国との共同開発によって海洋経済利益の実利を上げながら、長期的には地理的境界を戦略的辺境へと拡大させて海洋政治利益を実現していく作戦だと言えよう。

こうした観点から見てみると、2009年頃から中国が南シナ海での活動を活発化させてきている背景にも、やはり海洋権益の存在が指摘できる。特に近年の中国では経済発展のボトルネックとして資源不足が深刻に認識されてきており、その開拓先として改めて海洋資源が注目されてきている鄴。

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