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ルワンダという国の主役たち。彼らは世界とどこへ向かうのか――『ルワンダでタイ料理屋をひらく』(左右社) - 唐渡千紗(著者)

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ルワンダと聞いて、多くの日本人にとっては「アフリカのどこか」でしかないだろう。知っているとすれば94年のルワンダ大虐殺のこと、または近年もてはやされているICT立国という両極端なイメージであることが多い。

民族間の大虐殺というのは日本人にとってなかなか想像がつかないものであり、またアフリカにおけるICT立国というのもすぐにはイメージしづらいだろう。一体ルワンダはどういう国なのだろう。そしてそこで暮らす人々はどういう人々なのだろうか。

本書の魅力の一つは、実在の人物のそれぞれ愉快な、そして時として悲しいエピソードを通して、ルワンダの政治経済、社会や文化をリアルに感じることができる点だ。

ルワンダ人は――、ルワンダでの暮らしは――、という一般的な話は、数日視察に来ただけで、いや、もはや足を運ばずともインターネット上のリサーチでそれらしいことが書けてしまうご時世だ。しかし本書は、2015年からコロナが来た2020年という時代に、一人の日本人女性(著者)が首都キガリで始めたタイ料理レストラン「アジアンキッチン」を舞台に繰り広げられる、従業員と店の成長物語でもある。

タイ料理屋を開くまで、そして開いてからも起こりまくるハプニングは、想定を軽く超えてくる。電子レンジを水洗いして壊してしまうスタッフや、店の装飾品を勝手に売り飛ばすスタッフ。施工を任せたケニア人には金を騙し取られた上に逃げられるし、水も電気も安定しない中での飲食店経営。なかなかに大変な日々だが、読みながらつい自分でもププッと笑ってしまう。

食材の仕入れに関しては内陸国の苦悩を自分ごととして味わう。タイ料理が嫌いなシェフや、お客さんをどんなに待たせても気にしないホールスタッフのトレーニングに腐心する中で、彼らの食文化や生活環境、価値観が少しずつ見えてくる。虐殺についても、日々接する人たちが実際に体験した話を通して知ることとなる。

そして新型コロナという世界を震撼させる危機に直面する中で、一見ハチャメチャに見える彼らの底力を著者は目の当たりにする。第5章「2020年、春」では、新型コロナにルワンダ政府と国民がどう対峙しているのか、コロナ流行下での店の経営を通して詳細に描いた。

ルワンダは初の感染者が2020年3月半ばに確認されるとすぐに教会が閉まり、閉校も決まり、国境が封鎖され、都市間移動禁止、原則外出全面禁止のロックダウンとなった。実にたった一週間での出来事。本書でもハラハラドキドキの展開となっている。

日本のように「自粛」や「要請」という生優しいものではなく、「禁止」だ。政府と軍が取り締まりにあたり、違反すればすなわち逮捕、拘束の対象となるのである。そんな厳しい制限の中、ロックダウンで収入がゼロになった人は全体の6割を超えるという事態に。普段から貯蓄などなく、その日食べるために稼いで暮らしている人が多い国で、そのわずかな日銭すら完全に断たれてしまうなんて……。だが、彼らはデモや抗議をするでもなく、受け入れ、じっと耐えていた。

ロックダウンが解除となってからも、夜間の外出禁止は2021年3月時点、いまだ解かれていない。アジアンキッチンでは、スタッフたちが必死に店を回しながら、夜間外出禁止の時刻になる前になんとか家にたどり着こうと今日も奮闘している。その様子は5章の見出し「門限までに突っ走れ!」に詳しく書いた。営業時間すなわちシフトも削られ、出社すれば門限との闘いになり、時として門限に間に合わず、警察に拘束されてしまうことも。そんな状況でも「エブリシング・ウィル・ビー・オーライ」と明るく前向きに日々を乗り越えていく彼らに、著者は深く心打たれる。

彼らの強さは、一体どこから来るのだろうか。普段から過酷な環境を生きているから、というのはありそうだ。新型コロナも言ってしまえば、いつもルワンダにたくさんある脅威のうちの一つでしかない。

いまだにマラリアという脅威に、日本よりも劣悪な医療環境の中さらされている。世界経済が打撃を受けているが、そもそも世界経済から取り残されて生きている人が多くいる。政府から「3時間後から都市間移動禁止!」といきなり言われ、3時間後本当に施行されるなんて日本では考えられないが、こちらでは普段から政府と軍部は絶対である。そう、彼らは新型ウィルスなんてものが来る前から日々大変なことばかりで、今に始まったことではないのだ。

そして強さの理由はそれだけではない。この国ならではのものもあるように思う。国境封鎖が発表されて外国人が続々と退去する中、子どもたちとルワンダに留まったが、「こんな時にそんな国にいて大丈夫なの?」と何度か聞かれた。「あんなことのあった国だから」という思いは、以前なら私もきっと頭によぎっていただろう。だが実際は逆で、あの絶望を国民全員で経験したからこそ、絶対にあの頃のようには戻りたくない、戻らないのだという強い国民感情があるように感じる。

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