▼バイデン大統領が打ち出した日本円で200兆円規模の追加の経済対策と▼急速に進むワクチン接種によるものです。
ワクチン接種が遅れている新興国や途上国との回復スピードの差からアメリカに向けて資金が流出する懸念が広がっているそうです。

(米カリフォルニア州、筆者撮影)
WSJはU.S. Growth Stirs Fears of New ‘Taper Tantrum.’ This Time May Be Different(米経済成長で新たな金融緩和の縮小に対する不安も。ただし、今回はこれまでと違うかも)の中で、アメリカ経済が猛烈な憩いで回復していることからこれまでの金融緩和が縮小に向かい金利が上がるのではないかとして、金利差に着目し途上国からアメリカに資金が流出する懸念が広がっていると伝えています。
グローバルに展開する銀行の研究開発を行うIIF=国際金融協会は、ことし3月に途上国から51億6000万ドルの資金が流出したとしています。
このうちトルコはこの1週間で見ると、2015年以来の大規模な流出となったとのことです。
資金流出の全体の規模は限られているとしつつ、バイデン政権が1兆9000億ドルもの追加の経済対策を打ち出した後に起き、アメリカでワクチン接種が急ピッチで進んでいることも踏まえると、アメリカのことしの経済成長率は一気に上昇すると見られ、多くのエコノミストはことしの経済成長率が過去30年で最も高い6.5%にのぼると予想しているということです。
アメリカで金利が上がれば、投資家はより高いリターンを求めてアメリカ国債などの資産を購入することで、ワクチン接種が始まったばかりの途上国から資金が流出する恐れがあると言います。
IMF=国際通貨基金のゲオルギエバ専務理事は1日、「アメリカ経済の急回復は急速な金利上昇につながって金融の引き締めにつながり、その結果、新興国や途上国から資金が流出しかねない」と述べました。
3月の資金流出は去年10月以来の動きだとのことです。
その時はアメリカ国債という安全資産の購入を反映したものでしたが、今回はアメリカ国債の利回りの上昇で「より心配なトレンドだ」と指摘。
これに対してブラジル、ロシア、トルコの中央銀行は自国通貨の価値を維持し、資金流出を防ぐために政策金利を引き上げてきました。
2013年に起きた資金流出を彷彿させるものだという声がある一方で当時と違って、今回は、新型コロナウイルスの感染拡大の前の時期に途上国に大規模な資金流入が見られなかったと言います。
先立ってFTはUS economy adds 916,000 jobs in March as recovery hopes grow(米の新機雇用は91万6000人増で回復の望み強まる)の中で、バイデン政権が1兆9000億ドルの追加経済対策を決めた3月の雇用統計で、農業分野以外で働く人たちは前月よりも91万6000人増えて、失業率が6%に改善したと報じました。
市場予想の46万8000人よりも遥かに多かったとのことです。
さらに、レジャーや接客といったこれまでコロナで職が減っていた分野でも増えて、幅広い産業で雇用が伸びたとしています。
アメリカ経済の急回復に対する期待からアメリカ国債の10年ものの利回りは1.7%まで上昇しましたが、これまでのところFRBは貸出金利の上昇やインフレに対する懸念は示していないそうです。
Washington PostはWith stimulus cash and jobs spike, U.S. emerges as main engine for global economic recovery(アメリカ、景気刺激と雇用増により世界経済のエンジンに)の中で、アメリカでワクチン接種の急速な普及を受けてアメリカの景気が急回復し、それが国境を越えてほかの国の回復にもつながっていると報じています。
バイデン政権が打ち出した現金給付などの経済対策とFRBによる超低金利政策を背景に経済が急回復していて輸入の拡大により各国の景気を押し上げているとしています。
OECD=経済協力開発機構は先月、アメリカの景気対策の恩恵がインド、オーストラリア、韓国、イギリス、カナダなどに広がるという見方を示しています。
一方、アメリカの度重なる経済対策をめぐってはサマーズ元財務長官がインフレに対する懸念を示しています。
アメリカでの金利上昇を予想して3月には50億ドル以上の資金が途上国から流出し、今後いっそう流出することで新興国や途上国の景気回復の痛手になると心配されているとしています。