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自民の大勝は「漁夫の利」?

投票日の翌日である17日の朝日新聞夕刊の記事より。

第三極 競合で共倒れ
乱立選挙区 自民に利

 第三極の日本維新の会、みんな、日本未来の各党が同一選挙区で競合し、民主党とともに「共倒れ」するケースが相次いだ。第三極の候補が多い選挙区ほど、自民党の候補が「漁夫の利」を得て当選するケースが増え、大量の議席につながった。

 300選挙区のうち、第三極が自民、民主と争ったのは203選挙区。ほかに自民推薦の無所属や公明、民主推薦の国民新と争ったところが5選挙区ある。

 第三極の3党全てが候補を立てた「5党対決型」▽いずれか2党が立てた「4党対決型」▽いずれか1党が立てた「3党対決型」の選挙区を比べると、最も競合した「5党型」(12選挙区)では自民が全勝した。自民は「4党型」(69選挙区)でも62議席を獲得。「3党型」(127選挙区)では推薦や公明を合わせ97議席を得た。第三極が乱立するほど、自民の「勝率」が上がった構図だ。

 第三極は「5党型」では全敗。「4党型」では3議席、「3党型」でも12議席にとどまる。計15議席のうち維新が11議席を占めたが、第三極の競合区では民主支持層の票が分散したことも、共倒れの背景にあるとみられる。(石塚広志、二階堂勇)

 わかりやすい図も添えられている(朝日新聞デジタルの記事で参照されたい)。

 「漁夫の利」とは、甲乙のいさかいに乗じて、それを傍観していた丙が労せずして利益をかすめ取ることを指す。

 しかし、自民党は堂々と小選挙区で戦い、多くの候補者が最多得票で当選しているのだから、「漁夫」にたとえるのはおかしくないか。

 2面では、「第三極の競合区では民主支持層の票が分散したこと」について、さらに詳しく述べられている。
民主、第三極競合区で票流出

 第三極の日本維新の会、みんな、日本未来の各党の候補者が同じ選挙区に重なれば重なるほど、民主支持層の票が第三極に流れる傾向が強まり、民主候補の埋没につながった状況が出口調査で明らかになった。

 維新、みんな、未来のうちいずれか1党と、自民系(推薦無所属を含む自民か公明)、民主系(民主か国民新)が争った「3党対決型」の127選挙区では、民主支持層の67%は民主に投票。自民に13%が流れたものの、第三極の党への投票は14%にとどまった。

 だが、第三極のいずれか2党と自民、民主の候補が立った「4党対決型」の69選挙区では、民主支持層が民主に入れる比率は60%に低下し、第三極の2党に計23%が流出した。

 さらに第三極の3党がすべて候補を立てて乱戦となった「5党対決型」の12選挙区を見ると、民主支持層が民主に投票したのは57%とさらに下がった。一方で、計27%が第三極の3党に流れている。

 自民支持層は、第三極の候補が多いか少ないかには影響されず、7割台が自民に投票していた。第三極に流れていたのは、3~5党の「対決型」選挙区の平均で、14%にとどまった。

 しかしこれは、選択肢が増えるのだから、当たり前のことではないのか。

 元々民主党支持で、でも今回は民主には入れたくないなと思っている人がいるとして、選挙区の候補者の顔ぶれが例えば自・民・維なら、いや石原は(あるいは橋下は)嫌いだからやっぱり民主に入れようと思うけど、自・民・維・みなら、じゃあみんなの党に入れようかとなるとか、そういう次元の話ではないのか。

 つまり、ある党の候補者、あるいは党はさておき候補者自身、がいるからこそ、その人に投票しようかという選択が有り得るわけで、第三極が1人よりも2人、3人と増える分、彼らに流れる票も増えるのは当然のことだろう。

 自民支持層は、第三極の候補の多寡にかかわらず、7割台が自民に投票していたというが、それは、今回は自民党に政権を戻すべきだと考えた支持層が多かったということだろう。今敢えて第三極を選ぶ必要はないと。

 それに対して、民主支持層は、いや今回は民主には入れたくはないと考えた者がある程度いた。
 それにしたって、「3党対決型」における民主支持層の第三極への投票は14%だというのだから、3~5党の「対決型」選挙区の平均における自民支持層の第三極への投票と同じ数値である。自民支持層と比較して格段に第三極に流れたというわけではない。

 また、第三極の維新、みんな、未来は、それぞれ民主党からの離党組を含んでいる。彼らの選挙区では、政党としては民主を支持するが、小選挙区では離党組に投票するという行動をとる者も当然あったろう。

 要するに、それぞれの政党や候補者の力量が反映された結果にすぎず、それを自民の「漁夫の利」と見たり、「民主支持層の票が分散したことも、共倒れの背景にある」と分析するのはおかしいのではないか。

 みんなの党の渡辺喜美代表も「漁夫の利」と言っている。19日付け朝日新聞デジタルの記事より。
「維新に邪魔された」みんな・渡辺喜美代表

 (衆院選では日本維新の会に)邪魔された。私たちの方が先に、2年も前から(選挙準備を)やっていた候補がいたから。選挙区によっては、みんなの党と維新の会を足せば自民党の上に行く、という選挙区はいくつもあった。本当におろかだった。完璧な漁夫の利だ。

 少なくとも、すみ分けはきちんとやろうというのが、最初の合意だった。維新が太陽の党とくっついて、競い合って(候補者を)出してきた。コントロール不能な状況だった。

(テレビ朝日の番組で)

 そりゃあそういう選挙区もあるが、だからといって維新とみんなで候補者を一本化していれば、両党の合計の票を獲得できたなどという単純計算が成り立つのか。その場合は、有権者の投票行動はまた違ったものになるのではないか。

 維新になら投票したいがみんなは嫌だというケース、またその逆のケースもあるだろう。

 あるいは、維新の○○さんなら投票したいが、維新が立たず、みんなの××さんは好きではない。でももう民主には投じたくないから、自民に入れようか、となるかもしれない。

 一方で、維新とみんなを足しても、自民の得票にかなわない選挙区もたくさんある。
 また、維新と競合しない選挙区においても、当選したのは渡辺、江田憲司、浅尾慶一郎、柿沢未途の4人にすぎない。

 太陽の党との合流で政策不一致を批判されたにもかかわらず、維新は比例で第2党となり、小選挙区と合わせても第3党に進出し民主に肉薄している。

 一方、元祖「第三極」であり、政策は旧維新に近いが、合流を拒否したみんなは、公示前の倍以上の議席を得たものの、小政党にとどまっている。

 渡辺は、自民や維新を批判するよりも、まずはみんなの党の力量不足を反省すべきではないのだろうか。

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