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小熊英二の「社会を変えるには」を改めて読む(1)

 選挙前に読んでいた本ですが、全体を紹介する前に選挙に突入したため遅くなりました。また、選挙の結果は、この本で予言されていた通りになった部分もあります。ただし史上最低の投票率になるとは、小熊氏も予想しなかったことでしょう。

 今朝の朝日新聞「オピニオン」欄で、小熊氏は「選挙の結果だけが民意だ、と考えるなら失望する人もいるでしょう。しかし選挙は民主主義の手段であって目的ではない。」と言っています。筆者の言う「お任せ民主主義」の装置としての選挙制度でした。その制度自体が不信任された選挙であったと見ることもできるでしょう。

 それにしても欠陥の目立つ選挙制度でした。300の小選挙区では、得票率4割の自民党が8割の議席を獲得しました。中小政党を少しだけ救済する定員180の比例区も11ブロックに分割されていて、定員は6名から29名であり、支持率が10%以下の政党は、当選者を出すのが難しくなっていました。政権交代を起こりやすくすることを目的とし、二大政党制をイメージして作られた現在の選挙制度は、今のような価値観が流動する時代には、全く不向きな制度だったのです。

 このような選挙制度を含めて「社会を変える」必要があるのは明らかですが、その方法として選挙が万能ではないことを説いているのがこの本です。しかし明快な方法論が示されて、みんなの参加を求めるというような勇ましい本ではありません。著者は「私の考え方だけが正しいと読者は思い込まないでほしい」と自ら断りを入れるほど抑制的なのです。それでも多くの示唆に富んでいます。

 この本の前半というか、むしろ大部分は、現代に至るまでの社会思想史の解説で占められています。人間はどのような過程を踏んで自らの社会を統治する制度を作ってきたのかを振り返ります。社会思想についての基礎知識を得るための、すぐれたテキストとなっています。著者も言っていますが、基礎知識とは「入門」とは違うのです。レベルの低いものではなく、基礎知識が定まっていなければ、どのような新しい展望も開くことはできないのです。

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