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「監視されている感覚が消えない」…福岡5歳児餓死 ママ友の“洗脳”で全てを失った39歳母の思い - 「週刊文春」編集部

 逮捕翌日の送検時。碇利恵(39)は、痩せ細った姿を報道陣の前に晒し、虚ろな目で護送車に乗り込んだ。容疑を否認する“元ママ友”の赤堀恵美子(48)が、布で顔を覆い隠していたのとは対照的に――。

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◆◆◆

「子供の頃の利恵ちゃんは勝ち気で活発な女の子でしたよ。大人にも物怖じしないで意見を言うし、友達の先頭に立って遊んでいましたから。本当に驚きました」

 碇の少女時代を知る元近隣住民は、事件を聞いて耳を疑ったという。

 昨年4月、福岡県篠栗町で碇の三男だった5歳児の翔士郎ちゃんが餓死した事件。3月2日、碇と赤堀は保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。我が子の様子が急変した時でさえ、碇が連絡したのは119番ではなく、他人の赤堀だった。


中学時代の碇(卒業アルバムより)

 1981年、福岡県で生まれた碇。幼少期から10代を福岡市のベッドタウンの宇美町で過ごした。

「父が働いていた九州ローカルのスーパーマーケットの社宅アパートに両親、2つほど年の離れたお姉ちゃんの4人で住んでいてね。ところが利恵ちゃんが中2の頃、スーパーが閉店して、ひっそり引っ越していきました」(別の元近隣住民)

 碇家は同じ町内の住宅街に転居する。突如、訪れた家庭環境の変化。地元の公立中学に通う碇からは、幼い頃の溌剌さが消えていた。

「バレーボール部に所属し、普段は大人しい子たちのグループに交じっていました。ただ、誰かの言いなりになるような感じではなかったんですが……」(同級生)

 中学卒業後は、福岡市内にある男女共学の私立高校に進学。だが同時期に両親は離婚してしまう。高校の同級生が当時の印象を語る。

「口を開けば明るい、気さくな子でしたが、クラスの中では全く目立たないタイプでした。普通科ではなく就職科。部活はやっていなかったと思う。卒業後は地元のファミレスで働いているのを見かけましたね」

夫は「いかにも優しそうな見た目で、子煩悩」

 その後、碇は自らの手で幸せを掴み取る。20代後半で結婚。夫は真面目でしっかり者の会社員だった。

 やがて夫婦は2人の男児に恵まれ、12年には篠栗町に新築のマイホームを3000万円のローンを組んで購入。町内では高級住宅地の約200平米の土地に構えた2階建ての一軒家だ。その2年後に誕生したのが三男の翔士郎ちゃんだった。

 家の庭にはブランコ付きの遊具が置かれ、夏場はビニールプールではしゃぐ兄弟たちの愉快げな声が響く。

「ご主人もいかにも優しそうな見た目で、本当に子煩悩な方でした」(近隣住民)

 だが――。16年4月、息子を通わせていた町立の幼稚園で、同じく三児の母だった赤堀と出会うのだ。

相手を騙すことに全く抵抗がない赤堀

 スリムで元「モーニング娘。」の保田圭似だった碇と、大柄で年齢も本名も偽っていた赤堀。一見アンバランスな2人は、急速に親密さを増していった。

「声をかけたのは碇さんだったようです。友人が少なそうな赤堀を気遣って。お人好しの彼女には、赤堀の本性を見抜くことができなかった」(ママ友の一人)

 身の回りで絶えず金銭トラブルを起こしてきた赤堀は、相手を騙すことに全く抵抗がない女だった。「ママ友が悪口を言っている」「親族が裏切っている」などと唆(そそのか)し、碇の人間関係をことごとく分断。さらに夫の浮気も捏造し、「児童手当がもらえるから養育費はいらない」と焚き付けて19年5月に離婚させた。当初は対等だった2人の間柄も、道端で一方的に赤堀が碇を罵倒するまでに。

「やがて赤堀は『しつけ』と称して翔士郎ちゃんを叩いたり、押し入れに閉じ込めるようになり、その間、碇は家から出され、外で泣いていた」(捜査関係者)

 碇は一軒家に一人で暮らす元夫や、母子を案じる母親ら親族を頼ることもできず、困窮を極めていく。

 翔士郎ちゃんは亡くなる直前、栄養が足りずにふらついて歩けなくなる。碇は赤堀に「翔ちゃんの体調が悪い」と何度も訴えたが、赤堀は「仮病や」「寝れば治る」と取り合わず、病院にも行かせなかった。

「今でも監視されている感覚が消えない」

「碇はありもしない“ボスのグループ”に12台のカメラで監視されていると信じ込み、三男が餓死した際は本人も体重30キロ台まで痩せ細っていた」(同前)

 生活保護費など月約20万円の収入を赤堀に管理されていた碇は、翔士郎ちゃんの死後も搾取された。

「小5の長男と小3の次男は児相を経て元夫側に引き取られたが、赤堀は『2人を取り戻すために裁判費用がいる』と言い、12万円を騙し取っている」(同前)

 悲劇の約2カ月後。警察から赤堀の嘘を一つ一つ知らされた碇は、「許せない」と怒りを顕わにした。同時に、自責の念と根深い“後遺症”にも苛まれる。

「洗脳が解けてなお、『頭では分かっていても、今でも監視されている感覚が消えない』と話している。逮捕前も街で人のスマホがこちらを向いていたら、誰かの手先から撮られているのではと怯えていた」(同前)

 全てを失った孤独な39歳の母は、苦しみながら裁かれる日を待つ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年3月25日号)

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