- 2021年04月05日 18:27 (配信日時 04月05日 11:15)
謝らないメルケル首相が「イースター休暇の旅行禁止」を即撤回したワケ
1/2イースターはクリスマスと並ぶ最大の祝祭
3月24日、メルケル首相(CDU・キリスト教民主同盟)は、わずか30時間ほど前に決定したばかりのイースター(復活祭)の5連休案を電撃撤回した。全ては自分の誤りだったと認め、混乱をきたしたことを国民に謝罪したため、ドイツ人は驚愕した。

本来なら、よほどのことでない限り謝罪などしないのがドイツ人だ。だが、国民の間では、これを誠実さの表れと見て、花丸をつけた人も多かった。さらに、メディアはこぞって、「ついにメルケルが弱みを曝け出した」などと書いたが、それは甘い見方だろう。
今回いったい何が起こり、なぜ、メルケル首相が謝罪する事態となったのか? イースターの5連休案とは何か?
イースターは、キリスト教ではクリスマスと並ぶ最大の祝祭だ。日付は毎年変わるが、ちょうど春が訪れる季節であるため、大人も子供も楽しみにしている。今年は4月2日が「イースターの金曜日」(祝日)で、これが十字架に掛けられたイエスを悼む日。その後の日曜と月曜(祝日)はイエスの復活を祝う。公式の休日の前後に有給休暇をくっつけて旅行に出たり、家族が集まったりと、移動が多くなる時期でもある。
息抜きさえできないのか…国民が猛反発
ところが、今回、撤回された当初決定の内容は、イースター休暇中、旅行はたとえ自分の州内でも禁止。人々の交流も厳しく制限され、会えるのは2世帯、計5人まで(14歳以下の子供は対象外)。さらに驚くべきことに、1日木曜と3日土曜を休日扱いで5連休にし(土曜は食料品店のみ開店可)、教会のミサはオンラインに切り替え、国民は静かに家でイースターを祝えというものだった。

そして、夜が明けてこの報が知られるや否や、世間は大騒ぎになった。
ドイツの子供たちは、去年3月のロックダウン以来、ろくに学校に行っていない。春は規制が解除される前に夏休みに入り、秋になってから徐々に秩序を回復しようと思っているうちに、またロックダウンが始まった。
ここまで長期間になると、親がホームオフィスの傍ら複数の子供を見るのもすでに限界で、イースター休暇の小旅行が心待ちにされていた。他人と接触しなくて済むようにとキャンピングカーやキャラバンが売れ、イースター休暇中のオートキャンプ場はすでに予約が満杯だったというから、その息抜きさえ不可とされようとしていることに、国民が激しく反発した。
スーパー、教会、生活保護の受給まで問題だらけ
一方、すでに青息吐息の観光業、飲食店、小売店も不満を爆発させた。去年は稼ぎ時のイースターとクリスマスがロックダウンで水泡に帰した。だからこそ今年のイースターに望みをつないでいたというのに、それも潰れかけた。
また、産業界は、木曜と土曜を祝日にするという話に憤慨した。工場を1日止めれば、莫大な損害が出る。いったい誰がそれを保証してくれるのか? 大型スーパーも戸惑った。土曜だけ店を開けと言われても、生鮮食料品のサプライチェーンはどうなるのか? 祝休日の大型トラックの走行には特別許可が要る。

しかも、5日間の連休で水曜と土曜に買い物客が殺到すれば、その防疫対策には誰が責任を持つのか? 果ては、イースターの真髄であるミサをオンラインでやれと言われた教会関係者までが、強烈に反発した。
さらに大きな問題は、4月1日木曜が、本来なら生活保護費の振り込み日であることだった。それが祝日に切り替われば、振り込みは連休後になる。多くの貧困家庭は5日も待てず、死活問題となる。では、全国の役所が、振り込み日を1日前倒しにできるかと言えば、それも無理だった。
そんな理由が重なって、結局、メルケル首相はこれらの撤回を余儀なくされた。
専門家、各省庁不在の政策決定に批判
この謝罪発表の直後に行われた国会での質疑応答では、メルケル首相は野党の集中砲火に晒された。
普段は穏やかなFDP(自民党)のブッシュマン氏は、「あなたは密室で、ごくわずかな出席者だけで、真夜中に、実務者や専門家や各省庁の役人の意見を聞く機会を全く排除したまま、何百万もの人々の命に関わることを決定するという試みを、いったいいつになったらやめるつもりですか!」と声を荒らげた。
実は、このさまざまな問題含みの決定がなされた会議も、深夜に及んでいた。3月22日の午後2時ごろから延々と11時間半も続き、メルケル首相がようやく記者会見場に現れたのは、すでに日付の変わった深夜2時前。
真夜中の会議はメルケル首相の得意技で、未明の記者会見も珍しいことではない。これは、持久戦に強いメルケル首相が、自分の主張を通すための作戦だとも言われている。
ただし、このブッシュマン氏の質問は、単に、今回のイースター5連休うんぬんや、深夜に及ぶ会議のやり方などではなく、もっと本質的なことを意味していた。つまり、メルケル首相がこの1年間ずっと、議会の抗議も司法からの警告も無視して、首相と州首相の合議という、本来は立法機関として存在しない機能を使ってコロナ対策を決定してきたことへの抗議なのだ。
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