記事

選挙は終わりましたが

 さて、事前の予想通りに衆院選は自民党の圧勝となりました。自民党からすれば、これほどまでに「相手が弱かった」選挙というのも空前絶後なんじゃないかという気がします。ちなみに同日に行われた東京都知事選挙では猪瀬直樹が史上最多得票を記録したとか。猪瀬が継ぐくらいなら石原のままでいいよと言いたくなるところですが、それ以上に対抗馬が貧弱でしたね。まぁ、落選した顔ぶれを見れば「良かった」と思えないでもない結果でしょうか。一日も早く政界から退いて欲しい人もいましたから。

「橋下さんと共同行動、十分にある」嘉田・未来代表(朝日新聞)

■嘉田由紀子・日本未来の党代表

 知事と国会議員を兼務できないのは戦後、地方自治法をアメリカから輸入したから。フランスはもともと兼務が大前提。ドイツも(含め)ヨーロッパ型は地方の知事や市長が参議院を兼務するのは当然です。地方の声があがるから、政策も実行力のあるものができる。

 今回、(日本維新の会代表代行の)橋下(徹)さんが「参議院との兼務を法律改正せえ」と(言った)。橋下さんと一緒に訴えていきたい。滋賀県民のみなさんに理解してほしいのは、県をおざなりにしているのではなく、よりよい県政をやるために提案をする。無駄遣い、縦割り、効率の悪い行政を押しつけられている。(橋下さんとは)今までも関西広域連合でずっと一緒にやってきた。(国政でも)共同行動をとることは十分にある。(東京都内で取材に)

 ……で、国民の生活が第一ならぬ日本未来の党は公示前の61議席から9議席へと比率的には民主以上に大きく議席を減らしたわけです。キワモノ色なら維新とも大差ないように見えたのですが、維新にはあって未来にはないものこそ有権者にとっての争点だったのでしょう。ともあれ、原発問題はその筋の人々が期待したほどには選挙で問われるものではなかったと言えます。その辺は十分に予測できたようにも思うのですけれど、脱原発を最前列に掲げては敗北を重ねた政党の関係者は違うのでしょうか。まぁ、周りの声など意に介さず自分の世界に酔えるようでないと政治家など務まらないのかも知れません。

 脱原発云々は、沖縄の米軍基地問題に似ているところもあるのかなと思います。沖縄であれば保守系とされる候補だって県内の基地には必ずしも良い顔をしているわけではない、ただ基地問題を最重要課題として持ち出すか、それとも経済面など「それ以外」の課題との重要度を測るかが違いになっているのではないでしょうか。原発対応も然り、何が何でも脱原発が第一なのか、他の問題との優先順位を考えながら行動するのか――とりあえず前者が有権者の支持を得ることなく終わったのが今回の選挙ですね。

 脱原発と並んで、争点に「ならなかった」ものとして「極右」が挙げられます。脱原発を第一に掲げているか否かで投票先を決める有権者が少なかったのと同様に、極右が居並ぶ党であることを懸念して投票を躊躇う有権者もまた少なかったものと考えられます。どれほど暴言、妄言を重ねても石原慎太郎が当選を続けたように、一部の人には重大な問題に見えても大半の人は気にしていない、そういうものがあるのでしょう。そして引用した未来の党の嘉田代表の発言です。この人もまた、極右と手を組むことに全く抵抗を感じていないことが分かります。その辺は、良くも悪くも有権者と感覚を共有しているようです。

 民主党は野田が代表を降りることが確定的で、少しは自民への協力姿勢も和らぐでしょうか。とはいえ、選挙直後の所属政党に縛られる人ばかりではありません。民主党は党執行部の締め出し方針もあって離党者が相次ぎましたが、同様に今回の選挙で当選した自民党「以外」の政党から新たな離反者が生まれる、それが閣外から自民党に協力することもありそうな気がします。維新と組みたがる未来の党をも含めて、潜在的な自民党の味方は二大政党制が叫ばれた時代よりもずっと多い、自民と公明を合わせた議席数以上の支配力を持ちうると予測されます。

民主の「政治主導」に幕=功罪相半ば、復権狙う官僚―族議員には警戒【12衆院選】(時事通信)

 自民党の衆院選勝利で、「政治主導」を掲げた民主党政権の幕が下りる。脱官僚に揺れた東京・霞が関の省庁では、自民の返り咲きに愁眉を開きつつも、複雑な心境を明かす幹部もいる。

 厚生労働省のキャリア幹部には忘れられない光景がある。長妻昭厚労相(当時)の執務室前で、決裁を求める職員が列を作っていた。役職は関係なく先着順。案件の軽重が無視されていたのに驚いた。

 政権交代の熱気は役所にも及んでいたが、期待はしぼんだ。「大臣はすぐ怒鳴り、指摘は枝葉末節ばかり。政治主導に名を借りたパフォーマンスにしか見えなかった」

(中略)

 民主政権では八ツ場ダム建設をめぐる方針転換などに振り回された。「政務三役と意思疎通が図れていれば少しは違う道を進んだかも」

 民主党の「政治主導」に功があるとするなら、それは官僚への憎悪を民主党と共有する人々に精神的な満足感を与えたことぐらいではないかと思うのですけれど、いかがなものでしょう。どちらかと言えば、自民党内の派閥や公明党、そして野党議員よりも官僚こそが自民党の暴走に歯止めをかける役割を期待できそうな気がしないでもありません。官僚に加えて族議員なり業界団体や宗教法人など組織票が見込める支持母体なり、そういうところとの「しがらみ=絆」による縛りが存在しているがゆえに、無茶を押しとどめる力も働くというものです。

 これが民主党の場合となると財務省以外の官僚は敵視するばかり、支持母体の利益を蔑ろにすることに躊躇がなかったわけで、自民ほど右を向いているわけではないながらも自民党以上にブレーキが壊れていた印象があります。小選挙区制度の恩恵を最大限に受けて大勝する政党がある一方、比例区によって命脈を保った議員も多い、しかるに今回の選挙では比例によって救われた党の方が比例区の削減に熱心で、小選挙区のおかげで圧倒的大差を付けた党は中選挙区制に未練あり等々、この辺に自民党と民主党の性格の違いを感じるところです。

あわせて読みたい

「衆議院選挙2012」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    <止まない炎上>小室禍と東京五輪エンブレム騒動の類似点

    メディアゴン

    05月08日 08:13

  2. 2

    ネット署名 『人々の夢と希望をつなぐため、東京五輪の開催を支持します』立ち上がる

    和田政宗

    05月08日 21:34

  3. 3

    コロナワクチン打てば大丈夫?専門家すら反応を示さない風潮に疑問

    自由人

    05月08日 09:08

  4. 4

    菅さんじゃ駄目だとなっても、安倍さんがいいということには絶対にならないし、そうさせてもいけない

    早川忠孝

    05月08日 08:26

  5. 5

    出口治明さんが語る「35年ローン」で家を買ってはいけない理由

    幻冬舎plus

    05月07日 09:04

  6. 6

    コロナ対策で目立つ責任回避「国全体が緩んでいるようで不安」

    深谷隆司

    05月08日 17:31

  7. 7

    菅首相は何度同じ失敗を繰り返すのか

    鈴木しんじ

    05月08日 20:51

  8. 8

    「鬼滅の刃=Demon Slayer」米国では炭治郎の耳飾り“旭日旗”問題は?

    文春オンライン

    05月08日 14:48

  9. 9

    「ダブルスタンダードになる」国民投票法改正案可決で立民が見せた“国対政治”に苦言

    BLOGOS しらべる部

    05月08日 08:03

  10. 10

    福岡で過去最多519人の感染確認 半数は福岡市

    ABEMA TIMES

    05月08日 20:34

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。