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「沖縄の基地問題は、私たち全員の問題だ」イェール大学に通う日本人学生の訴え

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なぜ沖縄では「基地問題」が連日報じられているのか

3月1日~6日、沖縄の遺骨収集家・具志堅隆松氏がハンガーストライキを決行した。戦没者の遺骨の混在が指摘される沖縄本島南部の土砂を辺野古新基地建設の埋め立てに用いる政府の方針に抗議をするためだ。

遺骨を探す具志堅隆松さん。小さな破片を見極めるため、75年間積もった腐葉土を素手で掘り起こす=2020年12月8日、沖縄県糸満市
遺骨を探す具志堅隆松さん。小さな破片を見極めるため、75年間積もった腐葉土を素手で掘り起こす=2020年12月8日、沖縄県糸満市 - 写真=時事通信フォト

沖縄のメディアは具志堅氏周辺の動きを連日報道した。ハンガーストライキを開始したこと、戦争体験者が現場で激励したこと、具志堅氏が沖縄県庁で日本外国特派員協会のオンライン会見を受けたこと、最終日に玉城デニー県知事が現場を訪問したことなど、一挙手一投足が報じられた。

一方、ヤマト(※いわゆる日本「本土」のこと。植民地主義的な表現を避けるため、この記事では一貫して「ヤマト」という呼称を用いる)で生活するヤマトンチュ(ヤマトにルーツを持つ日本国民)は、このニュースを知らないのではないか。もしくは具志堅氏の訴えがこれほどまでに沖縄で注目を集めた理由がわからないのではないだろうか。

具志堅氏らの運動は、「沖縄という一地方の政治運動」として矮小化するべきものではない。もしそうなれば、沖縄とヤマトとの分断はますます深まる。私はそんな危機感に駆られ、沖縄県内外の知人に呼び掛けて「具志堅隆松さんのハンガーストライキに応答する若者緊急ステートメント」を出した。

本稿では私がこのステートメントを起草するに至った経緯をまとめつつ、特にヤマトで生活するヤマトンチュに向けて、具志堅氏のハンガーストライキの意味を解説したいと思う。

60年間、遺骨・遺品収容を続けている人の言葉

私が沖縄に関する取り組みを始めたのは、2015年、高校の修学旅行で初めて沖縄を訪ねてからだ。恩師の紹介で、具志堅氏と同様に沖縄戦没者の遺骨・遺品を収容されている国吉勇氏の活動に出会った。国吉氏は6歳で沖縄戦を体験し、高校生の頃から60年間、遺骨・遺品収容を続けている。私が出会った時、国吉氏は現役で、毎日壕に入って収容活動をされていた。

これまで収容された推計十数万点の遺品を保管する私設の「戦争資料館」で、「戦後70年たっても、壕に入れば遺品は毎日出土し、遺骨も毎年数柱は出続ける」と話す国吉氏を前にして、私は沖縄戦の歴史に無知・無関心のまま、沖縄をリゾート地として消費する自分を恥じた。

筆者の小学校は広島に修学旅行に行ったが、その時はしっかり事前学習をし、「原爆の爪痕が残る場所に足を踏み入れるのだ」という心構えで現地に向かった。それなのに、なぜ高校生の私は、沖縄戦を看過して沖縄に行ってしまったのか。その反省から私は沖縄に繰り返し足を運び、国吉氏や他の戦争体験者からの聞き取りを行いつつ、国吉氏からお借りした遺品を全国で展示する活動を始めた。

ヤマトのエゴによって沖縄が一方的に犠牲にされる

沖縄戦では、ヤマトが沖縄を「皇土防衛のための捨て石」として利用した。結果、大勢の沖縄住民が軍事動員された。地上戦が泥沼化すると、日本軍は住民虐殺・食糧強奪・壕追い出しに及び、住民の4人に1人が犠牲になった。

その後、「天皇メッセージ」によってヤマトの独立と引き換えに沖縄は米軍占領下に入り、沖縄への米軍基地の偏在が加速、現在も日本国内にある米軍専用施設の7割が沖縄に押しつけられている。その上、沖縄の民意に反した辺野古新基地建設が強行されている。

空から見る沖縄
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CatLane

沖縄の戦中・戦後史を通し、「ヤマトのエゴによって沖縄が一方的に犠牲にされる」という構造が温存されてきた。私はこの現象を「歴史的・構造的沖縄差別」と呼んでいる。

なぜヤマトは歴史的・構造的沖縄差別を現在まで続けてきたのか。戦争や基地の被害を直接作り出すのは軍や政府だが、私たちヤマトンチュの一人ひとりが歴史的・構造的沖縄差別の現実を避けているとはいえないか。「自分も沖縄に痛みを強いる構造の一端を担っているのではないか?」という当事者意識がないからこそ、現在も沖縄はヤマトの犠牲にされているのではないか――。

遺品展では、修学旅行時に私が自問自答した内容を観覧者にも問いかけながら、沖縄の戦中・戦後の歴史に無知・無関心であることの罪深さについて共に考え、議論するようにしている。それが歴史的・構造的沖縄差別の終焉に向けて、個人レベルでできる取り組みの第一歩だと考えるからだ。

戦没者の遺骨を、新たな戦争につながる基地の「建材」に

そのような取り組みを行ってきた私にとって、具志堅氏のハンガーストライキは、「歴史的・構造的沖縄差別が現在進行形の問題である」という事実を改めて見せつけるものであった。

戦没者の遺骨を、新たな戦争につながる基地の「建材」として利用するという蛮行を行っているのは日本政府であり、それに対する責任は全国民が等しく負うべきはずだ。それにもかかわらず、私たちヤマトンチュはその問題自体に無関心である上、それを問題提起する負担さえ沖縄に押しつけている。

具志堅氏はこの問題を命懸けで訴えているが、ヤマトンチュはその抗議の声を無視・黙殺し、沖縄が犠牲にされる構造を温存してきた自分たちのあり方を反省すらしない。このままでは歴史的・構造的沖縄差別は永遠に解決できないのではないか。そう考え、私は「若者緊急ステートメント」を呼びかけた。

全ての遺骨収集は非現実的だからこそ、考えるべきこと

「今回の件については、なんとしても止めたいんです。これは基地に賛成とか反対とか以前の、人道上の問題だと思ってます」

「若者緊急ステートメント」の冒頭で引用した具志堅氏の言葉だ。辺野古新基地建設への立場にかかわらず、「人として」考えるべき問題が土砂採取問題にはらまれているのだと、私たち呼び掛け人は考えている。それには4つの論点がある。

第一に、この問題は日本の戦後処理の全般的な不徹底さを突き付ける。国家が起こした戦争に巻き込まれて犠牲になった戦没者の遺骨を、新たな戦争を生み出す基地の「建材」として用いていいのか。この問題は、「戦後処理と開発をいかに両立させるか?」(例えば東京でも「東京大空襲の犠牲者の遺骨が混じった土を軽々に利用していいのか」という問題を議論すべきかもしれない)という、日本国民全員が考えるべき問題にもつながってくる。

むろん戦後75年が経過し、遺骨自体の風化が進んだ今、全戦没者の遺骨収集は非現実的だ。しかし、だからこそ、戦争犠牲者をどのように慰霊し、弔うべきなのか、遺族感情を中心に据えた議論が必要であるはずだ。国が一方的に「収骨できないから諦めろ」と言わんばかりの処遇をとることは、見逃してはいけない問題だと思う。

2017年3月24日、沖縄県糸満市の平和祈念公園内に設置されている慰霊碑
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sean Pavone

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