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人気講師が教える理系脳のつくり方

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人気講師が教える理系脳のつくり方 (文春新書)

内容(「BOOK」データベースより)

学校でも企業でも理系的思考が出来る人間でなければ生き残れない。多くの教え子を御三家中・東大に送り込んできた著者が誰でも理系脳がみるみる育つコツを伝授。「筆算をしっかりさせる」など親が正しいと思い込んでいることの九割は間違い。理系が苦手な人のバイブル誕生。

僕も父親ですので、やっぱり「子どもをどう教育するべきか?」ということに、日々悩んでいるのです。

そもそも、自分の子どもが何が得意なのか、勉強ができるのか、いまひとつよくわからない(まあ、まだ4歳でもありますしね)。

ただ、僕自身、数学・物理が苦手で苦労したものですから、自分の子どもが数学で苦労しなければいいなあ、と考えずにはいられないのです。

最近の世の中をみていて、いろんな人の本を読んでいると「数学者レベル」じゃなくても、「高校レベルまでの数学を理解している」ことは、すごく大切なのではないか、と思いますし。

そう思うようになったのは、実体験もそうなのですが、佐藤優さんの『読書の技法』という本のなかで、佐藤さんが大学卒業後、外務省に入ってから、忙しい仕事の合間に数学の勉強をしていた、という話を読んだことにも影響されています。

佐藤さんはもともと文系で、数学は苦手だったそうなのですが、外務省で仕事をしていくうちに「最低限(高校数学レベル)の数学的な知識・考え方の必要性」に気づいたそうです。

僕も、この年になって、「数学って面白いんだなあ、美しいんだなあ」と感じることは多いのですが、いまさら勉強し直すこともなく、年を取っていく一方です。

自分がそれで苦労し、できないことにコンプレックスを持っていることもあり、子どもには、どんな仕事をするにしても、「数学で苦労しないように」なってほしいんですよね、まさに「親の身勝手」なんですけど。

この本は、理数系専門塾「エルカミノ」の代表である著者が、子供たちを教えていくうえで培ってきた「理系脳」づくりのノウハウについて書いたものです。

まだ子供が小さいこともあり、いまの「お受験」情勢に疎い僕にとっては、予想外だったことがたくさん紹介されていました。

 今の中学入試や旧帝大クラスの大学入試では、知識の詰め込みではなく、地頭の良い人材を集めようとしています。特に中学受験は「算数の実力で合否が決まる」といわれ、優秀な学校ほど算数ができる子を欲しがっています。

 なぜなら、算数ができる子は、普通に勉強すれば他の科目も自然と伸びていくからです。たとえば算数・数学の偏差値が70であれば、国語・社会・理科・英語の偏差値は最低でも60台前半まで成長します。結果的に、東大をはじめとする難関大学に合格する確率が高くなるので、鍛え甲斐があるのです。

 しかし、算数・数学が苦手な子は、その時点でもう底上げが難しい。たとえ国語や社会の偏差値が70になっても、それで算数の偏差値が上がるとは限りません。

 ですから、トップクラスの私立中学校では、合格・不合格のライン上にいる子をふるいに掛ける際、算数の結果だけで合否を決めているところが少なくありません。補欠の50人から20人を選ぶとなったら、算数のできる子から順にとる学校が多いのです。どの学校も、「算数の力さえあれば、あとはなんとでもなる」というのが本音なのです。

「受験で差がつくのは算数」であり、「学校側も、算数ができる子を欲しがっている」のか……

 確かに「社会や英語は、勉強する意思と時間さえあれば、ある程度底上げできる」のではないかと僕も感じます。

言われてみれば「数学が得意な同級生」は、事前の模試の結果以上の偏差値の大学に「予想外に」受かっていた記憶もあるし。

 いやまあほんと、数学が苦手だった僕からすれば、「数学、数学って、イヤな世の中だよねえ」と愚痴りたくもなるんですけどね。

 そのわりには、社会に出ると「理系」はそんなに報われていない、という気もしますが。

 著者は、「いまの数学教育の問題点」について、こんなふうに述べています。

 以前、私の塾にいたB君は、計算ミスの多い子でした。家で練習問題をやるときも、考え方はあってるのに肝心なところで簡単な計算ミスをしてしまいます。横で見ている母親はそのたびにイライラし、

「筆算をしなさい。算数ができる子は筆算が確実にできているから計算を間違えないのよ」

 と、口を酸っぱくして言っていました。

 わが子が筆算せずに計算ミスを連発することは、親としてかなり腹立たしいことのようで、

「何度言ったらわかるの!? 途中の計算を紙に書かないから繰り上がりを間違えるのよ。時間がかかってもいいから、ちゃんと筆算しなきゃダメじゃない!」

 と、毎日のように声を荒げて叱っていました。B君に限らずこうした家庭は珍しくありません。

 しかし、私の指導はまったく逆です。

「間違ってもいいから、どんどん暗算で解きなさい」

 算数が得意な子に育てたいなら、マニュアル通りで頭をほとんど使わない筆算ではなく、頭をどんどん使う暗算をさせるべきなのです。

 親が筆算にこだわるのは計算ミスを恐れているからですが、転んでも走る練習をしなければ足が速くならないのと同じように、計算ミスをしてもどんどん暗算させないと理系能力は伸びません。それに、計算練習のたびに「筆算しろ、筆算しろ」と言われたら、子どもは確実に算数嫌いになってしまいます。

「確実に、確実に」と思って筆算をさせることが、かえって子どもの足かせとなり、理系能力を伸ばす妨げになっているのです。

 「正しく、確実に、地道に勉強させる」ように見えるやり方が、長い目でみて、本当に子どもたちのためになっているのかどうか?

 これは、かなり考えさせられます。

 著者は「理系の思考力を育てる思考法」(というか、子どもに対する親の教え方)なども紹介しており(「間違えやすいところを先回りして教えない」とか)、かなり参考になりました。

 というか、僕はずっと「やるべきではないこと」を正しいと思ってやってきたのかも。

将来のことを考えると、「理系脳」を求める企業も多いんですよね。

 たとえば、マイクロソフト社の入社試験に次のような問題が出題されたことがあります。

「アメリカにガソリンスタンドは何軒ありますか?」

僕はこれを読んで、こんなの知るか!というか、「知っているか知らないか、だけの問題じゃないか!」って思いました。

ところが、「理系脳」の持ち主は、実際の数を知らなくても、仮定や推測(アメリカの人口や自動車の普及率、それぞれの車が給油する間隔など)を組み合わせて「おおよその数」を見積もることができるのです(こういう問題を「フェルミ推定」と言うそうです。就職活動をしている人には、おなじみの言葉かもしれません)。

みんながマイクロソフトやマッキンゼーに入るわけじゃないのでしょうけど、「こういう能力」を求める企業も少なくない世の中になっているのは事実です。

「子どもに勉強で身を立てさせようと思っている親」は、一度読んでみて損はしない本だと思いますよ。

難関中学入試の問題を見ると、「ああ、大人の自分が解けないんだから、うちの子に解けっていうのも無理だよなあ……」なんて、暗澹たる気分にもなるんですけどね。

ところで、この新書を読んでいて、いちばん印象に残ったのは、著者の塾での「国語の教え方」についてでした。

下村湖人の『次郎物語』に関する問題を例に、著者は「いまの時代の子どもたちへの国語教育」を、こんなふうに述べています。

 この問題を解くには、「理不尽な目に遭ったときや、大切にしているものを汚されたとき、人は激しい怒りや悔しさを感じるものだ」「怒りや悔しさで感情が高ぶると、鼻の奥がツーンとする感覚や、眼の奥が熱くなる感覚を覚えることがある」ということを知らなければなりません。

 しかし、今の子どもたちはそこまで激しい怒りや悔しさを経験することがないので、次郎の心情がどうしても理解できないという子がいるのです。

 そのため私の塾では、「作中人物の心情が理解できないなら、無理に理解しなくてもいい。ただ、『人間は、こういう状況ではこういうふうに感じ、こういう行動をとるものだ』ということを知って、覚えなさい」という指導を行っています。たとえば、

「人は大自然の中にいるとき、自分がちっぽけな存在だと感じることがある」

「空を見上げたとき、何の脈絡もなく、ふと大切な人の顔を思い出すことがある」

「激しい怒りで、体の内側がカッと熱くなることがある」

「嬉しいことがあっても、喜びを噛み殺して、わざと不機嫌な顔をすることがある」

 といったことを、「常識として知りなさい、覚えなさい」と指導することで、子どもは作中人物に共感できなくても、文章を読解できるようになるのです。

「『乱暴な指導法だ』と言われるかもしれないが、読解問題ができない子は、こういう『常識』を知らないのだ」というのが著者のスタンスです。

 なんだかすごく淋しいような気もするのですが、現実というものを考えれば、「あえて悔しい経験をさせる」わけにもいかないので、合理的な解決法であるのも理解はできます。

 いまの時代でも、子どもたちは、それなりに悔しい経験とかはしているはずだと僕は思うのですが……

 こういう解決法こそ、まさに「理系的」ではありますよね、でも、いいのかなこれで……

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