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発達障害の「グレーゾーン」をご存じでしょうか

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ライター・姫野桂さん

 今回お話をうかがったのは、フリーライターの姫野桂さん。姫野さんは自身も発達障害の当事者として、発達障害に関する書籍のほか、当事者が直面する生きづらさを解消するためのライフハックを紹介・執筆している。姫野さんの子ども時代のエピソードや困っている子にどう接するべきか、うかがった。

* * *

 「発達障害」という言葉は、ここ数年でさまざまなメディアに取り上げられてきました。私も発達障害についての書籍を数冊刊行しましたが、反響をいただくたびに、あらためて発達障害という言葉の広まりを感じています。そもそも発達障害とは、生まれつきの脳の特性で、できることとできないことの能力に差が生じ、日常生活や仕事に困難をきたす障害のことを言います。発達障害は、ADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)の3種類に大別されています。

かんたんに症状を紹介します。「ADHD」は、不注意が多かったり、落ち着きがない、多動・衝動性が強い。「ASD」は、コミュニケーション方法が独特だったり、特定分野へのこだわりが強い。「LD」は知的発達の遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算が苦手。なお、3種類のうち「これだけが当てはまる」という人はほとんどいません。障害の程度や出方は人それぞれちがうので、苦手なことも個々にちがいます。

算数があるから行きたくない

 私自身も発達障害の当事者です。不注意が優勢のADHDと、計算が苦手なLDの特性を持ち合わせていて、幼いころから生きづらさを抱えてきました。とくにLDの特性は顕著で、くり上がりやくり下がりのある暗算やパーセントの計算がパッとできません。速さや距離を求める計算も、紙に書いて電卓を使わないと解くことができないんです。

 小学1年生から、みんながあたりまえに満点を取れるような計算テストでも、60点くらいしか取れませんでした。「こんなにがんばっているのに、なんでできないんだろう」という劣等感を抱え続け、小学4年生で算数の授業についていけなくなくなりました。母親には「算数があるから学校へ行きたくない」と言っても理解してもらえず、学校は休ませてもらえませんでした。算数ができないのは発達障害のせいだとわかったのは、大人になってからです。

 一方、コミュニケーションが苦手なASDの特性によって苦しむ人もいます。学校で何気ないときに雑談をする意味が理解できず、会話の輪に入らなかったがために、「人付き合いが悪い」と仲間はずれにされた経験のある人もいました。先日取材した人は、小学5年生のとき、休み時間に「いっしょにトイレに行こう」と言われて、「今はトイレに行きたいタイミングじゃない」と断ったら、いじめられるようになったと話していました。このように、学校生活のなかでうまくいかない経験をする当事者は多いのです。

働いてからわかることも

 さらに、発達障害の場合、仕事を始めてから自分自身の苦手なことに気づき、「発達障害だった」と認識する人も多いです。学生時代は、理解のある友だちがいて、なんとかやってこれた人でも、社会に出た途端に挫折してしまいがちです。たとえば、同期に比べて仕事を覚えるのが遅い、電話に出てもまともにメモが取れない、雑用すらできない……、そういった「できない」をくり返すことで、精神的につらくなって仕事をやめてしまう人も少なくありません。

 私も社会に出てから、生きづらさを強く感じた時期がありました。フリーランスのライターになる前、会社の経理部で事務職をしていたのですが、計算が苦手なのに、日常的に金庫の現金を数えたりエクセルで資料をつくったり、今思えば自分が不得意なことばかりしていたんです。ただ、当時は自分が事務職に向いていないことに気づいておらず、仕事ができないのは努力不足だと考えて、自分を追い込み続けていました。ふり返ってみると、事務職をしていた3年間、よく生きていたなあと思います。

 じつは、発達障害かそうでないかのちがいについては、あいまいな部分が多く、精神科や心療内科で診察を受けても、気づかれないことがよくあります。発達障害だと医師から正式に診断されてはいないけれど、定型発達とも言い切れない「発達障害のグレーゾーン」という層があることが、取材を通じてわかってきました。発達障害はグラデーション状の障害なので、「ここからが障害」というはっきりした線引きが難しいんですよね。

 グレーゾーンの人たちは、障害がないとみなされているため、障害者手帳を持っていません。抑うつ状態などなんらかの精神疾患と診断されれば、自立支援制度は受けられますが、税金の控除や減免は受けられず、障害者枠での雇用もしてもらえません。周囲の人から気づかれにくいため、トラブルが起きたときも「怠けているだけ」と思われてしまうこともあるのです。

 そうしたうまくいかないストレスによって、うつ病や双極性障害、適応障害などの「二次障害」を起こしてしまう人も少なくありません。発達障害の人は、小さいころから「ふつう」ならできることができない人も多く、自己肯定感が低くなりやすいですし、「また失敗するのではないか」と必要以上にプレッシャーを感じる人が多いんです。私が取材したなかでも、9割近い当事者がなんらかの二次障害を引き起こしていました。グレーゾーンの人も、おそらく同様に二次障害を抱えている人が多いと思います。

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