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「事実を認めた」河井克行元法相の公判供述は、広島県連・安倍前首相・菅首相にとって「強烈な刃」!

河井克行元法務大臣の公選法違反事件の公判、3月23日から始まった被告人質問で、克行氏は、議員辞職の意向を示したのに加えて、それまで全面的に否認し無罪を主張してきた公選法違反の事実を「一転して」認めたかのように報じられた。そして、4月1日、克行氏の議員辞職が国会で認められた。

河井案里氏が有罪確定で当選無効になったのに加えて、克行氏も「罪を認め」議員辞職したことで、この事件は「一件落着」だと思っている人が多いかもしれないが、それは全くの誤りである。その後も続いている克行氏の公判での被告人質問では、4月8日告示の、案里氏当選無効に伴う参議院広島選挙区での再選挙に、そして、自民党本部の選挙対応にも重大な影響を与えかねない供述が行われているのに、マスコミでは、ほとんど報じられていない。

【河井元法相・公選法違反公判、いったい何を「一転認めた」のか】でも述べたように、克行氏の供述内容は、

「河井案里の当選を得たいという気持ちが全くなかったとはいえない、否定することはできないと考えている」

という、誰がどう考えても「否定する余地のない当然のこと」を認めただけで、従前の主張と実質的に異なるものではなかった。

昨年9月の初公判での克行氏の罪状認否や弁護側冒頭陳述等での主張は、

《「当選を得させる目的」はあったが、そのために「選挙運動」を依頼して金を渡したのではない。あくまで、案里の当選に向けての「党勢拡大」「地盤培養行為」のような政治活動のための費用として渡した金である》

というものだったが、先月始まった被告人質問で、個々の買収の事実について具体的に質問され、克行氏は、従来からの主張をさらに明確に述べ、その内容は、自民党広島県連や自民党本部の選挙への対応にも重大な影響が与えかねないものとなっている。

克行氏の弁護側冒頭陳述では、

広島県連では、参議院議員選挙が近づくと、衆参国会議員から立候補予定者・候補者への秘書派遣による、党勢拡大活動地盤培養活動などの政治活動の支援、選挙運動期間中には選挙運動の応援等が行われ、県連の要請により、広島県連職員、各種支持団体の関係者なども派遣されて同様の活動を行うのが通常であったが、案里氏については、公認が大幅に遅れたため、周知のための政治活動期間・立候補のための準備期間が明らかに不足しているのに、広島県連からの人的支援が得られず、後援会の設立や組織作り、後援会員の加入勧誘、政党支部の事務所立上げなどの政治活動や選挙運動に従事することとなる人員確保など体制作り自体に苦労する状況にあり、県議、衆議院議員として長い政治家としてのキャリアを有する克行氏が、その人脈を頼って、それら案里氏のための活動を行わざるを得なかった。

と主張していた。

3月31日の第51回公判での被告人質問で、克行氏は、以下のような供述を行った(中国新聞デジタル【詳報・克行被告第51回公判】弁護側被告人質問<2>)。

実態として今回は県連が溝手先生だけ支援すると決定していました。

県連所属の県議会、市議会、各級議員のみなさんが溝手先生を通じた党勢拡大活動を実行すると考えていました。

実際には私が県議選に初当選したのは平成3年。

平成4年の参院選では広島県から宮沢洋一前県連会長の父の宮沢弘さんが立ちました。

県連から20万~30万円を参院選に向けてちょうだいしていました。

一般的に県連が交付金として党勢拡大のためのお金を所属の県議、市議に振り込むことは存じ上げていました。

交付金は溝手先生の党勢拡大にのみ使われると思っていました。

県連が果たすべき役割を果たしていない。やむを得ず役割を第3、第7支部で果たさないといけない。

市議、県議に県連に代行して党勢拡大のためのお金を差し上げないといけないと実行に移しました。

克行氏は、市議会議員、県議会議員等に配布した現金は、本来であれば、参院選の選挙資金は、自民党本部から広島県連に提供された選挙資金が、広島県内の市議・県議等の自民党政治家の支部組織に提供され、公認候補の溝手顕正氏と案里氏の両方の選挙に関連する政治活動に使われるはずなのに、19年の選挙では、県連は、溝手氏だけを支援し、案里氏の支援をすべて拒絶しており、「県連が果たすべき役割を果たしていない」ので、「やむを得ず」「市議、県議に県連に代行して党勢拡大のためのお金を差し上げ」たと言っている。

要するに、克行氏は、党本部から提供される選挙資金を県連から市議・県議に提供するという本来のルートが使えなかったので、やむを得ず「現金」で、自分が直接手渡すという方法を使ったと供述している。それを前提とすれば、克行氏が、市議・県議等に対して行った現金供与は、広島県連が市議・県議に対して行った、自民党本部からの参院選の選挙資金としての交付金を提供したのと、同じ性格のものだということになるのである。

実際に、当時、2019年参院選当時の自民党広島県連会長だった宮沢洋一氏が代表を務める「同党県参院選挙区第六支部」が昨年11月に県議11人に交付したと政治資金収支報告書に記載している各20万円について、平本英司県議が、2020年12月24日の克行氏の公判で、自身が受け取ったのは「昨年5月ぐらい」と証言しており、政治資金規正法違反(収支報告書虚偽記入)の疑いが生じている。

このことからも、克行氏が公判供述で述べているように、国政選挙の前に、現金で資金を提供するのは、克行氏だけの話ではなく、広島の自民党において、かねてから行われてきたやり方だと見ることができるのである。

今回の参議院広島選挙区の再選挙に関して、自民党広島県連会長の岸田文雄氏は、BS番組で

「河井事件という、とんでもない事件が起こって、広島の政治、あるいは自民党の政治に対する大変厳しい批判があり、そして信頼が損なわれた、大変残念な状況になっています。もういま惨憺たる状況です」

などと語っており(【参院広島選挙区再選挙、自民党は、広島県民を舐めてはならない】)、あたかも河井夫妻の事件が「とんでもない事件」で、それによって信頼が損なわれた自民党広島県連は被害者のような言い方だ。

しかし、元法相の克行氏の公判供述によれば、広島県連自身も、選挙に関する資金の提供を同様の方法で行ってきた。広島県連にとっても、選挙資金を提供する自民党本部にとっても、河井事件は、「他人事」どころから、まさに、自分自身の問題なのである。

しかも、克行氏の供述を前提にすると、安倍晋三前首相や菅首相も、克行氏が「市議・県議に県連に代行して党勢拡大のためのお金を差し上げる」という行動に及ばざるを得ないことを、認識していなかったとは考え難い。

安倍首相は、自民党が参院選の候補者として案里氏を公認した3月13日の前後の2月28日と3月20日、自民党本部が案里氏代表を務める政党支部に1500万円を振り込んだ2日後の4月17日、自民党本部が案里氏の政党支部に3000万円を振り込んだ3日後の5月23日に克行氏と単独で面会し、6月10日に案里氏政党支部に3000万円、克行氏政党支部に4500万円が振り込まれた10日後の20日にも克行氏と、それぞれ単独で面会している。そして、菅義偉首相も、選挙期間中に、2回も広島に応援に入っている。

安倍前首相・菅首相の2人は、広島県連が案里氏の支援を拒否していることは当然に認識していたはずである。自民党本部は、克行氏・案里氏に1億5000万円の資金を提供したが、その資金が活動資金として市議・県議に提供されることはわかっていたはずだ。県連を通じてのルートが使えない克行氏にとって、克行氏自身が「県連に代行して党勢拡大のためのお金を差し上げる」という方法に寄らざるを得ないことも十分に認識していたと考えるのが合理的だ。

「事実を認めた」はずの克行氏の公判供述は、広島県連・自民党本部にとっても、安倍前首相・菅首相にとっても「強烈な刃」である。今、案里氏の当選無効を受けて行われている再選挙に、候補者を擁立して選挙戦を戦おうとしている自民党には、克行氏が公判供述で述べている事実について、重大な説明責任がある。

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