中国地方で唯一残るストリップ劇場「広島第一劇場」(広島市中区薬研堀)が、5月20日で閉館する。劇場関係者が2日、Twitter上で明らかにした。
広島第一劇場は、原子爆弾の投下から30年後にオープン。2019年7月公開の映画『彼女は夢で踊る』の舞台となるなど、広島の繁華街にあって大切なカルチャースポットの一つと見なされていった。
6月にも建物が取り壊されるといい、閉館の危機を幾度も乗り越えてきた劇場がその長い歴史に幕を下ろす。

幾度も乗り越えた閉館の危機 広島の繁華街のシンボルに
Twitter上で「広島第一劇場 臨時アカウント」とのアカウントが2日午前11時ごろ、閉館を伝えるツイートをした。劇場の担当者は取材に対して、「理由はともかく、5月20日での閉館が決まった」と話した。
来月5月20日をもって閉館します。
— 広島第一劇場 臨時アカウント (@HiroshimaD1Geki) April 2, 2021
よろしくお願いします。#広島第一劇場 pic.twitter.com/gMQuSUONHM
このツイートに対し、「人生初のストリップを見たことは一生忘れない」「たくさんの思い出がある」「ギュッと胸が苦しくなります」など閉館を惜しむ声が相次いでいる。
広島第一劇場は、原爆投下によって焼け野原となった広島の繁華街に1975年にオープン。ホテルや風俗店、飲食店などが並ぶ一角に建ち、近くに有名なお好み焼き店もあることから、劇場前を行き交う観光客も多かった。
オープンから時間が経過して老朽化も進んだことから、2016年に閉館が検討されたものの、存続を願うファンたちの署名活動の結果、期間を限定した営業の継続が決まった。翌年1月末をもって閉館したものの、この時も期間限定での再開が決まり、現在まで営業が続いてきた。

映画『彼女は夢で踊る』の舞台に
広島第一劇場が広く脚光を浴びたのは19年7月公開の映画『彼女は夢で踊る』。広島で活動する時川英之監督の作品で、劇場が舞台となった。
映画は、俳優・加藤雅也やストリッパーの矢沢ようこ、広島の放送局・中国放送のアナウンサー・横山雄二らが出演。何度閉館の危機が訪れても蘇るストリップ劇場を舞台とした踊り子らのラブストーリーで、広島第一劇場やストリップの価値を広く知らしめた。

ストリップは、ダンサーが音楽に合わせて服を脱いで行くショー。関係者によると、最盛期には全国で数百軒あったとされるが、現在は20軒ほどまでに激減した。広島県内ではかつて福山市に存在したものの、広島第一劇場の閉館で中国地方には存在しなくなる。
近年は、性的な過激さよりも、ショーとしてのエンターテインメント性が見直され、女性の観客も見られるようになった。地方の劇場では、ショーを終えた踊り子と観客が談笑する姿など、いかがわしさとは裏腹ののんびりとした風景が魅力の一つになっている。