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現金給付を手にしたアメリカ人、使い道は?

How Americans Are Spending Their Stimulus Money.

3月17日は、セント・パトリックスデーであったと同時に米国人の銀行口座がグリーンに染まった日でもありました。

ネット・バンキングでの現金給付の扱いが、口座内で「pending(承認待ち)」から「available(振り込み済み)」に変わったためです。

バイデン大統領の肝煎りで成立した追加経済対策の柱と言えば現金給付ですが、成立当時は3月13日頃から送金を開始すると言われていました。

しかし、IRSが3月13日に立ち上げたサイトGet My Paymentのシステムにソーシャルセキュリティナンバーなど個人情報を打ち込むと、3月17日の数字が表示されました。ちなみに現金給付は、①銀行振込、②小切手、③クレジットカードを通じ支払われます。IRSは、納税者が登録した税還付の受取先、あるいは滞納した税金支払い向けの登録先から選んでいるとみられます。

3月17日という数字は数多くの人々の間で確認され、実に受け取り資格のある米国人の約9,000万人、約7割相当が現金給付を受け取ったとされています、ここから個人消費がどれだけ伸びるか気になりますよね?

バンク・オブ・アメリカの調査(2月末実施、3,000人が対象)によれば、現金給付を支出に振り向けるとの回答は36%に過ぎませんでした。逆に64%は支出しない見通しだったんですよね。そのうち30%は「債務支払い」にまわすと予想、そのほか25%は「貯蓄」、9%は「投資」に割り当てると回答していたのです。特に年収12万ドル以上の高所得層ほどその傾向が強く、非支出項目への回答は79%を占めていました。そのうち、40%近くが「貯蓄」を選んでいたのですよ。

支出に振り向けるとの回答が最も多かった層はというと、年収3万ドル以下で、47%でした。裏を返せば53%が「債務返済」や「貯蓄」、「投資」にまわす予定だといいます。

では、巷を騒がせるロビンフッダー、もとい若き個人投資家はというと・・・。

ドイツ証券の調査(2月に実施、対象は430人)によれば、25~34歳の50%が現金給付を投資に充てると回答していました。
18~24歳の間でも40%とその割合は高く、35~54歳の37%、55歳以上の16%を上回ります。

ドイツ証券は、こうした回答を踏まえ株式市場に約1,700億ドルの資金流入が見込まれると分析していました。3月17日に米株相場はFOMC後のゼロ金利継続を好感して上昇しましたが、その他にロビンフッダーの新規マネー流入が一因だった?翌18日は急落しましたけどね・・・。

では、実際にアメリカ人はどのように現金給付を受け取った週末にどのように過ごしていたのでしょうか。こちらでもご紹介しましたが、振り返ってみましょう。

画像:ワシントンD.C.のモールの様子、普段は人通りがまばらにも関わらず、3月17日明けの週末は店舗の前に行列ができるほど。撮影者いわく「店員さんに話を伺ったところ、普段ブランドを購入しない中低所得者層、日本でいうDQNに近い人々が店舗に集まっていた」のだとか。

(出所:筆者友人)

画像:フロリダ州では、ヨットレースが例年通り開催されていました。

(出所:筆者友人)

こうしてみると、コロナ禍真っただ中にあるのが嘘のようです。バンク・オブ・アメリカの世論調査で「現金給付を支出にまわす」との回答はそれほど高くはありませんでしたが、調査元がNY地区連銀と別ながら2020年3月当時の25%に比べれば格段に高く、現金給付が個人消費を押し上げる可能性は十二分にあると言えるでしょう。

経済指標でも明らかな変化が表れています。例えば、MBA住宅ローン申請件数指数の新規は3月19日週に前年比26.2%上昇、翌週に同39.1%と2週にわたって前年比2桁に急伸しました。2020年3月の経済活動の停止が影響したのは言うまでもありません。その裏側で申請全体に占める新規の割合も3月26日週には39.4%と、2020年7月以来の水準まで再び上昇していました。金利上昇で借り換えが鈍るなかで、新規の需要の存在が光ります。

チャート:MBA住宅ローン申請件数指数、新規の前年比と新規が占める申請全体の割合

(作成:My Big Apple NY)

さらに米3月消費者信頼感指数は1年ぶりの高水準だったと同時に、なんと住宅購入見通しが単月と3ヵ月平均で過去最高だったことは見逃せません米1月S&P/ケースシラー住宅価格指数が前年同月比11.1%上昇し、2006年2月以来の高い伸びだったにも関わらず、住宅需要はすこぶる強いと言えます。一段の金利上昇を懸念してローン申請になだれ込んだ世帯も、多かったことでしょう。マイホームを所有する高所得者層より中低所得者層の間で住宅需要が高まったとみえ、自動車や家電の購入見通しと対照的です。

チャート:米3月消費者信頼感指数、購入見通しで住宅のみが上振れ

(作成:My Big Apple NY)

トランプ前大統領のように「アニマル・スピリットに火を点けた」と喧伝しなくとも、現金給付が住宅購入意欲を押し上げたのは間違いないでしょう。そこへインフラ計画という油を注ぐわけですから本来であれば米株高で反応しそうですが、①財政赤字拡大、②法人税増税、③債務上限停止という不確実性のトリプルプレーが横たわります。さらに米金利上昇と割高感が重なれば、ボラティリティが高まり、投資家が及び腰になってもおかしくありません。

インフラ計画に視点を移すと、バイデン大統領の演説によれば財政調整措置を活用するのではなく、共和党の協力を求める方針だそうで、成立までの道のりは決して平坦ではなさそうです。上院の議席数が50対50で拮抗しているのは周知の通りですが、実は下院も盤石ではなく4月1日時点で219対211と、その差はわずか8議席。20年11月の議会選の後、共和党はコロナで命を落としたロン・ライト議員(テキサス州)を含め2人死亡、民主党は内務長官に就任したデブ・ハーランド議員(ニューメキシコ州)を含め3人が辞任しています。お陰で、票読みは風を読むのと同じくらい難しくなってきました。

(カバー写真:Marco Verch Professional Photographer/Flickr)

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