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介護職も看護師も社会に欠かすことのできない公共インフラです - 「賢人論。」第135回(中編)波頭亮氏

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現在の介護業界を健全な方向に向かわせるには、介護従事者1人当たりの給料を月額10万円アップさせるしかない。そんな大胆かつ豪快なアイディアを提示した、経営コンサルタントで経済評論家の波頭亮氏。聞けば、同じくエッセンシャルワーカーである看護師にも、大幅な待遇改善を実現させた過去があるという。介護業界が学ぶべき点と仕組みづくりについて語ってもらった。

取材・文/盛田栄一 撮影/小林浩一

冷遇されていた1960年代の看護師たち

みんなの介護 先ほど、看護師の待遇改善のお話が出ました(前編)。看護師も以前は待遇が悪かったのでしょうか。

波頭 そうですね。看護師という職業は介護士に比べて歴史は長いのですが、かつての待遇はかなり劣悪だったようです。看護師の待遇改善をめぐる戦いとしては、1960年代の「ニッパチ闘争」が有名です。

1960年代当時、看護師は月に10日以上の夜勤があり、夜勤の日は看護師1人で40人もの患者を看るケースも少なくなかったとか。しかも、夜勤手当は賃金にほとんど加算されず、「月に何回夜勤してもプラス100円」という例もあったようです。1日13時間労働という日も月に数回あり、「こんな劣悪な労働環境では患者さんの命を守れない」と多くの看護師から声が上がりました。そして、1965年に人事院は「夜勤の当直は2人以上、夜勤は月8日以内」と裁定を下しました。これが「ニッパチ(2・8)」の語源です。

ところが、この裁定に従う病院はなく、看護師の労働環境はまったく改善されなかったため、1968年に新潟県立病院、山形市立病院、富山県立中央病院などで看護師がストライキを決行。ついに看護師の増員と夜勤の日数制限を病院側が認めさせた、という経緯があります。

看護師の数は26年間で約3倍に急増

みんなの介護 月に何回夜勤に入っても、たった100円というのは不当ですね。

波頭 その後も看護師の待遇は少しずつ改善されていきますが、一つの転機となったのが、1992年に「看護婦等の人材確保の促進に関する法律」が制定されたことでしょう。

背景として、その前年に「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略」が策定され、医療・福祉分野で近い将来マンパワーが決定的に不足する、という見通しが明らかとなりました。そこで厚生省(現・厚生労働省)は、看護師の養成、処遇の改善、資質の向上、就業の促進に注力することになり、関連する事業に補助金を出すことにしたのです。

特に看護師の養成機関を拡充し、それまで専門学校や短期大学が主だった看護婦の養成が、看護系大学・看護系大学院・大学看護学部で行われるようになります。結果として、1991年には11校しかなかった看護系大学が、2017年までに267校にまで増加。就業看護師の数も、1992年の44万1,309人から2008年の87万7,182人、2018年の121万8,606人まで増えました。26年間で2.8倍にまで急増したのです。

2006年の診療報酬改定は看護師の収入増に貢献

波頭 2006年度の診療報酬改定では、「入院時の7対1の看護配置基準(急性期病床)を満たした医療施設に患者1人あたり1日1万5,550円」という報酬が決められました。つまり、それまで「患者10:看護師1」だった配置を「患者7:看護師1」に変更すれば、病院側はそれだけ多額の報酬を得られることになります。ここから逆算すれば、看護師の数を従来の1.4倍に増やせば、病院側はそれだけ儲かるというわけです。

これをきっかけに病院間での看護師争奪戦が始まり、看護師にとっては売り手市場になりました。優秀な看護師を獲得したい病院側はより高額な給料を約束するなど福利厚生を充実させ、結果として看護師の平均収入が高まりました。看護師側から見ても、給料が増える一方で、自分がお世話すべき患者数が減って負担が軽くなるわけですから、労働環境が大きく改善することになります。

ここ10年くらいで看護師の収入はかなり増えました。20代前半でも手取り月収が30万円というのも珍しくないし、夜勤に積極的に入る人は40万円近くになるとも聞いています。

みんなの介護 介護従事者とはずいぶん金額が違いますね。

波頭 そうですね。だから政策的に、介護従事者の給料を税金で看護師並みくらいまで補填してあげることはこれからの社会ニーズを考えると必要不可欠な政策テーマだと思います。

看護師も介護福祉士も、世のため人のために奉仕する「エッセンシャルワーカー」だという点では変わりません。どちらもこの社会に欠かせない公共インフラです。介護福祉士も看護師同様、社会的にもっとリスペクトされるべき仕事だといえます。

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