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同性婚を認めないのは「違憲」と札幌地裁が歴史的判決 差別や偏見と立ち向かう原告の思いとは

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G7で同性婚が認められていないのは日本だけ

ところで、札幌地裁は原告側の「憲法違反の法律を国会が放置しているのは違法」とした主張を棄却しているが、理由について次のような判断を示している。

・国会における議論がされるようになったのは、2015年に至ってからであると認められる
・憲法14条1項に反する状態に至っていたことについて、国会において直ちに認識することは容易ではなかったといわざるを得ない
・国会が正当な理由なく長期にわたって改廃等の立法措置を怠っていたと評価することはできない

認識することは容易ではなかったとした点については、「こんなに長い間、苦しんできたのに認識してもらえないとは」といった声が、性的マイノリティの当事者たちから漏れ伝わってくる。むしろ国や国会には認識したくない力が働いていたのではないかと、勘ぐる声が少なからずある。

なぜなら、同性婚への法整備は、2001年のオランダでの施行を皮切りに、これまで30近くの国・地域で認められてきたが、その過半数は、まさに15年までに実現している。先進7カ国(G7)で同性カップルへの法的保護がないのは日本だけだとして、国内の当事者たちが声を上げてきた。

同性婚を認めた国の一覧

いっぽう、同性カップルの関係を認める「パートナーシップ制度」は、2015年に東京都世田谷、渋谷の両区で始まり、いまでは100自治体に広がった。この数字は、逆に従来同性カップルが各地で生活していることや、法的ないわゆる“結婚”に基づかない関係では、相続や年金などの法的利益を受けられない現実を示している。

企業においてもダイバーシティ(多様性)の取り組みが進み、同性パートナーを家族として捉えて福利厚生を整える例も増えている。同性婚への法改正に舵を切ることは、決して時期尚早とは言えない。

被告である国側は、次のように反論する。

「異性愛者であっても同性愛者であっても、異性との婚姻はできるのであって、同性愛者であるが故に婚姻ができないわけではない」

「異性カップルか同性カップルかを問わず、婚姻によらずに一人の相手を人生のパートナーとして継続的な関係を結ぶことは可能であるから、同性愛者の尊厳を傷つけるものとはいえない」

沢部さんは、そうではなく、同性婚がもたらす人生の豊かさは計り知れないと語る。

「もともと結婚とは、家父長制度の存続のための制度だと思ってきましたが、今回の同性婚訴訟を通じて、性的マイノリティの人たちにとって、それは幸せになる権利の最たるものだと思うようになりました。もし、すべての人に平等に結婚できる選択肢があれば、どんなに生きることに前向きになれるだろうかと」

そして、意見陳述書には、未来を見据えて次のように記していた。

「自由に結婚する権利がすべての人に与えられたなら、いちばん喜ぶのは子どもたちだろう。好きな人を好きだと言えない心の痛みから解放されて大人になることに希望を持つだろうから。この希望こそが、裁判を通して性的マイノリティの私たちが目指す光だ」

「生きていてよかったと思えた判決」と原告

3月25日午後2時。衆議院議員会館で開かれた「緊急マリフォー国会 結婚の平等を伝えよう」と題した院内集会の会場に、札幌から駆けつけた加藤弁護士の姿があった。

マイクを手に、「同性婚を可能にする民法・戸籍法の改正」を求めて、「同性婚を認めるような立法措置をとらない国会の怠慢が、原告の尊厳を傷つけ、精神的損害を与えている」と訴えた。

加藤丈晴弁護士(提供=一般社団法人「Marriage For All Japan)」

前夜から東京入りしていた原告のEさんは、原告の見た「歴史的判決」の瞬間を語った。冒頭、裁判長が「主文、原告らの請求をいずれも棄却する」と読み上げたとき、傍聴席は重苦しい空気で包まれたが、やがて一変したという。

Eさんは、静かにスピーチを続けた。

「性的指向は自らの意志では変えられないといった内容のとき、微弱だけれど、裁判長の話し方が少しゆっくりと丁寧に話すようになってきました。そして、憲法14条1項に違反するという言葉が聞こえました。これが違憲というものかということが頭をよぎったそのとき、私の前に座っていた弁護士が泣き崩れました。違憲判決なの? 望んでいた判決が出たの?と、頭がパニックになりました。他の弁護士もハンカチで何度も目元を拭っていました。鼻をすする音も聞こえてきました。私も涙が止まらなくなりました」

閉廷してから気がつくと、誰もが涙していたという。

「当事者も応援者も記者も関係なく、そこにいる全員が待ちわびた判決を聞いたのだと確信しました。同性カップルも異性カップルも、性的指向だけで他に何も違いがない。なのに、同性か否かで結婚制度を使える人とそうでない人が明確に区別されているのは差別ではないですかと、裁判所が判断してくれた喜びは、正直うまく形容ができません。でも、あの判決を聞いて、生きていてよかったと思えたのは間違いありません」

国会議員の前で語り、同性婚法へのバトンを渡すという原告としての大役を、Eさんはこうして果たした。

 

「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、4月に名古屋・大阪で、5月に福岡で、6月に東京でと、各地で続く。また26日、新たに8人の原告が東京地裁に提訴して、集団訴訟に加わった。愛する同性パートナーと暮らす各地の原告たちが、Eさんと同じように「生きていてよかった」と思える日に向かって動いている。

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