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足立区でパートナーシップ制度が開始…同性愛差別発言から半年、驚愕のスピード感のワケ 足立区・近藤やよい区長インタビュー - 松岡 宗嗣

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 今日から東京都足立区で、性的マイノリティのカップルを自治体が認証する「パートナーシップ制度」がスタートした。

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 昨年9月、足立区議会で自民党・白石正輝議員が「日本人が全部L(レズビアン)、G(ゲイ)になってしまったら、足立区は滅んでしまう」という趣旨の発言をし、多くの批判を集めたことを覚えている人は多いだろう。

 筆者もこの発言について批判し、81歳の祖母が白石議員へ宛てた手紙もここで紹介した。

 一方、差別発言からたった2ヶ月で、足立区の近藤やよい区長は「パートナーシップ制度」の導入を発表。さらに今年1月には、カップルの子どもも含む家族関係を認証する「ファミリーシップ制度」も盛り込むことを発表した。

 このスピード感には驚きと歓迎の声が広がった。白石議員の発言は「一線を超えてしまった」という近藤区長。なぜ制度導入へと繋げることができたのか話を聞いた。


近藤やよい区長

◆◆◆

私も差別された方の一員だ

――まず率直に、白石区議の差別発言についてどう思いましたか。

近藤やよい区長(以下、近藤)あの発言は一線を越えてしまったと思っています。単なる一区議の発言の域を超えて、足立区役所、ひいては足立区民まで(白石区議と)同じ考えなのではないかと問われかねないような状況で非常に危機感を持ちました。

 ただ、最初はLGBTに関する発言よりも、「普通に結婚して、普通に子どもを産んで、普通に子どもを育てる、僕はそういう人生を歩んできました」という女性蔑視の方を私は強く感じていました。私は結婚もしてないし子どもも産んでいないので「あ、私はこの方の言うところの『普通じゃない』人間なんだな」と。

――「普通/普通じゃない」という線引きから、性的マイノリティに関する差別についても共感をされたのでしょうか。

近藤 すごくシンパシーを感じましたね。「私も差別された方の一員だ」と思いました。

 ただ一方で、他の自治体でポツポツと性的マイノリティに対する施策が進んでいることを耳にしつつも、それまでは区内の当事者の方から要望をいただいたことがほとんどなかったので、「まだ足立区では(性的マイノリティについての施策を進める)機が熟していないのかな」と勝手に解釈していました。

 この点については忸怩たる思いがあります。機が熟すのを待つのではなく、住みづらさを感じている方が一定数いることや「相談することにもハードルがある」という現実をもっと自分ごととして考え、早くから向き合うべきだったということを反省しています。

当事者からの「怖い」という言葉に衝撃 

――まずは当事者の声を聞こう、と白石区議の発言からすぐに、性的マイノリティ当事者との意見交換会を3度も実施されていますね。

近藤 自分の人生を振り返って、性的マイノリティの方と出会ったという経験がなくて。でも、いろんな講座で「周りにいても気が付いていないだけだよ」と聞いてから、もしかしたら私は「この人には打ち明けられないな」という感覚を相手にあたえてしまっていたのかなと思うようになりました。

 施策を進める上では、やはりまず何に困っているのか、当事者の声を聞かないことには始まりません。そして、話を聞いて走りながらできることは何かを考えました。すでに区にはさまざまな相談窓口がありますが、委託業者に確認をしたところ「性的少数者からの相談も受けることができる」ということだったので、すぐに専門の相談窓口を設置しました。

――実際に当事者との交流を通じてどのように感じましたか?

近藤 ある方に「親との関係もうまくいっているし、近所ともうまくやっている。ただ足立区ではとても怖くてカミングアウトできない」と言われてしまったんです。「怖い」という言葉が出てきたときに衝撃を受けて、区長としてとても申し訳ないなと感じました。

 これまでも高齢者や障害者など、いろんな人たちが住みやすい街づくりについて議論してきたのに、性的マイノリティへの対応が欠落していたのは事実です。どうせやるならタラタラやってられないなと、できる限り早く、スピード感を持って対応していく必要がありました。

「(足立区は)決して住んでいて怖い場所じゃない」という姿勢をはっきり示さなければならないなという思いで、パートナーシップとファミリーシップ制度を導入することにしました。

今ここで私たちの姿勢を出さないと

――制度導入はやはり苦労されたのでしょうか、それとも今回の発言がむしろ起爆剤になって進んだのでしょうか。

近藤 それは正直申し上げて、後者ですね。もちろんある程度議会のご理解をいただかなければいけませんから、何度も足を運んで説明をしました。

 先ほども述べましたが、もうすでに一区議の発言を超えて「足立区は性的マイノリティを排除する地域なのか」ということが問われている状況だったと思います。なので、表立って(パートナーシップ制度導入に)反対できる雰囲気ではなかったとはいえ、確かに反対の声は聞かれました。それでも「今ここで私たちの姿勢を出さないと」と伝えたら共感をいただくことができたと思っています。

――これまで政治家の差別発言が炎上しても、謝罪して終わりということが多かったと思います。謝罪に至らないこともあります。今回はむしろこの発言をテコに区が制度を導入するに至ったことは私も驚きました。

近藤 私も政治家ですからね。(白石区議と)同じ認識を持っていると思われることは許せないです。私にも私の考え方があって、それはいろんな人が安心して住める、そんな自治体を作ること。そのために選挙を戦い、区長をやっているわけですから。かっこつけているわけではありませんが、そんな私があの発言を許し、同調しているかのように誤解されることは、どうしても許せない部分がありますね。

区長が小さい頃から感じていた息苦しさ

――今回、近藤区長がリーダーシップを強く発揮されたのには、ご自身の経験も影響しているのでしょうか。

近藤 白石さんの発言で「女性として差別された」と申し上げましたが、私自身も小さい頃から息苦しさを感じていました。

 カトリックの幼稚園、女子校でずっと育ってきたんですが、校則も非常に細かくて。先生に対して問題提起すると「反抗的だ」「文句があるなら他の学校に行ってください」と言われ、いつも悶々とした気持ちを抱えていました。学校も面白くなくて、保健室で時間を潰したこともあります。「自分の意のままに感情をさらけ出して生きる」ということに対する怯えみたいなものがずっとありましたね。

 ただ、家では両親に恵まれたなと思っています。特にうちの父は、私が子どもの頃から「女も手に職をつけて食べていかなきゃダメなんだ」と言っていました。

「例えば『赤い物を着ろ』とか、女の子なんだからこうしなさい、ああしなさい」といったことを言われる家庭でもなかったですし、むしろフリルのついた洋服なんかを着ると「そんなチャラチャラしたものは着るんじゃない」と言われたくらいです。

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