- 2021年04月01日 10:02
乱獲や環境汚染で激減「マナティー」、共存の危機
1/3海の生き物「マナティー」をご存知ですか。ジュゴンとよく似た愛らしいこの生き物、詳しい生態は未だ分かっておらず多くの謎に包まれていますが、人間による乱獲や環境汚染によってその数が激減、絶滅危惧種(国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「野生絶滅の高い危険性」があるとする危急種 (VU))に指定されています。マナティーの魅力にとりつかれた一人の研究者が、その生態を調査しつつ、人と共に生きる未来への道を模索し続けています。(JAMMIN=山本 めぐみ)
マナティー生態研究の傍ら、研究成果を生かし、環境教育を行う

京都大学野生動物研究センターに所属し、水中で暮らすほ乳動物「マナティー」研究の第一人者である菊池夢美(きくち・むみ)さん(39)。対象の生きものに小型の機器をつけて行動などを記録する「バイオロギング」という手法を用いてマナティーを研究しています。
「バイオロギングを通じ、これまで見えてこなかったマナティーの水中での行動をとらえることができるようになってきています」と話します。
マナティーの生態は多くの謎に包まれているものの、人間による乱獲や環境汚染によって数が減っていることがわかっています。研究の成果を生かしつつ人とマナティーが共に暮らす地球の未来のために、菊池さんは2018年に一般社団法人「マナティー研究所」を立ち上げました。

マナティーとはどのような生き物なのでしょうか。
「アマゾン川に生息する『アマゾンマナティー』、アメリカから南米までひろく分布する『ウェストインディアンマナティー』、それからアフリカ西側に生息する『アフリカマナティー』の大きく3種類に分かれます。それぞれ見た目的には大きな差はなく、顔つきも似ています。最もスリム体型とされるアマゾンマナティーでも体長は3メートル近く、体重は300〜500キロほどになります」
「野生のマナティーは基本的には繊細で臆病で、人の姿を見るとすぐ逃げてしまいます。人に寄ってくるということはまずないですね。現地で長年活動をしている研究者でも、野生のアマゾンマナティーを見たことがない人もいます」
さらにその動きはゆっくりしており、普段は時速1キロメートルほどの速度で水中を泳いでいるといいます。主食は浮草や水草、海草。体重の3割ほどの植物を食べることで体重維持できるといわれおり、昼夜問わずえさ植物を探して動き回っているといいます。
アマゾンマナティーは人の乱獲により数が激減した

数が減っていることがわかっているマナティー。例えばアマゾンマナティーの生息数は、IUCNレッドリストデータでは「3,000 ~ 80,000頭」と記載されています。
「アマゾンマナティーに関しては、数が激減した理由がはっきりしています。実は1935年から1954年までにマナティーの大乱獲がありました。産業が発展していく中で、工場のベルトコンベアーやホースといった工業用製品を作るにあたりマナティーの丈夫な皮膚が重宝されたのです。年間7000頭のマナティーが20年近くに渡って乱獲され続けました」
「アマゾン川流域で暮らす方たちにとって、マナティーの肉は貴重なタンパク源でした。それまで普通に食べてきたものを『数が減ったから獲らないで』といわれてもなかなか難しいところがあり、現在は法律で捕獲が禁止されていますが、なかなか守られていない現実があります。また、ブラジルのアマゾン地域では『子を連れた母親のマナティーの肉がおいしい』という迷信があり、母親だけ捕獲されるケースも少なくありません」

「マナティーは1回の出産で1頭の子を出産、その後3年間は授乳しながら母と子で行動を共にするという研究報告がされています。2頭ははぐれることがないよう鳴き声で互いにコミュニケーションをとっています。一緒にいる3年の間、おそらくですが母親は子どもに食べていいものといけないものとか、どう暮らしていくかを教え、その後、子マナティーは独り立ちします」
「『おいしいから』と母親だけが捕獲されてしまった時に、子マナティーはたった一人取り残されることになります。アマゾン研究所でも、孤児になった子マナティーが年に10頭近く、多いときはもっとたくさんの数が保護されて飼育水槽で育てられていました。
10頭と聞くと少ない数に聞こえるかもしれません。しかしこれはあくまで地元の人や研究所のスタッフが見つけて保護することができた数。実際はもっと多くの子マナティーが、母親と離れ離れになって取り残されていると考えられます」
アフリカマナティーの数も減っている

さらにアフリカに生息するアフリカマナティーも、個体数の減少がわかっています。
- オルタナS編集部(若者の社会変革を応援)
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