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ポピュリストの誤算とポピュリズム政治の終わり

ここ何年かの間に「ポピュリスト」という言葉をよく耳にするようになったという人は案外多いのではないかと思う。敢えて言うまでもないことだが、日本語に訳せば「大衆の人気取り」ということになる。特に政治家に対して使われる言葉であり、大衆に迎合して意見がコロコロ変わる人物のことを揶揄した言葉でもある。

今回の衆院選でポピュリスト達は、主に「消費税」と「原発」という大衆受けする言葉を掲げて、その名の通り、大衆受けを狙った。しかし、逆に踊らされたのは彼らの方だった。
多くのポピュリスト達は、「消費税の増税反対」と「原発からの脱却」をセットで訴えた。しかしながら、ほとんどの政党は、そのどちらも代替案無しに「反対」というお題目を唱えるのみだったため、有権者に対して“掴みどころのない政党”というイメージを植え付けることしかできなかった。
単に人気を取りたい(票を獲得したい)だけの底意が有権者に見透かされてしまい、選挙の結果を見て臍(ほぞ)を噛むことになってしまった政治家も多かったのではないかと思う。

思うに、消費税の増税反対を訴えるなら、なぜ、いっそのこと減税にまで踏み込まないのか不思議だ。消費税7%には反対するのに、消費税5%には賛成というのだから、何を根拠に反対しているのか分からない。増税して景気が悪くなると言うのであれば、逆に3%に戻すなどの減税を訴えてもおかしくないと思うのだが、それができないということは、結局、票を取ること以外は何も考えていないと思われても仕方がない。消費税増税論者も消費税増税反対論者も“消費税の減税を訴えない”ということでは共通している。その共通項は無論、ポピュリズムだ。

原発問題にしても、反対するのはよいとしても、誰もまともな代替案を語ろうとしなかった。「2030年に原発を廃止する」と言っても、そう言っている当の本人はその時には政治家であるとは限らないわけで、どこまで本気で言っているのか甚だ疑わしいと言わざるを得ない。だからといって、「即時撤退」などというのは更に始末が悪く、どう考えても絵空事としか思えないというのが大部分の有権者達の正直な気持ちだろうと思う。
結局、こちらも掛け声だけのポピュリズムに終始しただけで、かつての“学生運動ごっこ”の二の舞を演じるだけに終わってしまった感は否めない。

インターネットが発達した現代においては、有権者達もポピュリストの「情報弱者ビジネス」に引っ掛かるほど馬鹿ではなかったということが証明されたということかもしれない。

ポピュリストと言えば、衆議院選挙公示日にも多くの政治家達が、被災地で演説を行ったそうだが、某女性議員はその場でこう述べたらしい。

命以上に大事なものはありません!

一聴すると、ごく当たり前のことを言っているように聞こえるかもしれないが、私は、この言葉に違和感を感じずにはいられなかった。その違和感とは、「命よりも大事なものはないのか?」という疑問と、「政治家がそんなことを言ってもいいのだろうか?」という素朴な疑問である。

「命以上に大事なものはありません」、実に分かりやすいストレートな表現だ。この台詞自体が、左翼そのものであることを如実に物語っているが、はたして被災地の人々はこの言葉を聞いてどう思ったのだろうか?
もっとも、「命以上に大事なものはありません」というのは左翼の人々の共通理念であろうから、彼らがその言葉を述べること自体は特に問題視するつもりはない。しかし、公の立場にある政治家が言うべき言葉ではないような気がする。

左翼の言うところの「」というのは、他人の命だけでなく自分の命も入ってしまうところが悩ましいところだ。「公」と「私」を明確に分けなければ誤解を招いてしまうことになる。
国民の命よりも大事なものはありません」と言うなら、まだ理解できるのだが、主語に他人の命だけでなく、自分の命も入るということであれば、話がややこしくなる。

口幅ったい言い方かもしれないが、本来、政治家というものは、己の命を賭けて、国を発展させ国民を幸福にするという大きな志を持った人物が成るべき職業ではなかったのだろうか?理想のために、身命を賭して、政(まつりごと)を執り行うのが真の政治家ではないのだろうか?(実際、昔は信念を貫き、凶弾に倒れた政治家が何人もいた)
その政治家が、「命以上に大事なものはありません」と言うのは、どこか不自然であり可笑しくないだろうか?

例えば、北朝鮮からミサイルが飛んできた時、その危機から身命を賭して国民を守るというのが本来の理想的な政治家の姿だと思えるのだが、「自分の命よりも大事なものはない」ということであれば、ミサイルが飛んで来れば、逃げ出すことが正しい選択ということになってしまう。

自分の命よりも大切な守るべきものが有るからこそ、政治家という存在が有るわけであり、そういった理想や信念は一切存在しないということであれば、一体、何が目的の政治なのか分からなくなってしまう。

なるほど、確かに人間(自分)の命より大事なものはないということであれば、「原発からの即時撤退」は正しい判断だろう。危険な原発には反対と言いつつ、震災のガレキは受け入れないという自分勝手な姿勢も、(自分の)命より大事なものはないという考えの表れだろう。

しかし、政治家が理想とするべきは、将来的な国の発展繁栄を願うものでなければならないはずで、現在ただいまの命の絶対的安全だけを目標とするのであれば、極めて場当たり的な刹那的思考と言わざるを得ない。

マザー・テレサが世界中で尊敬されているのは、命の大切さを訴えたからではなく、命を救う仕事(自分の命よりも大事なもの)に生涯を捧げたからである。もしマザー・テレサが口先だけの命の大切さを訴えるだけで、スラム街の病人に触れることも毛嫌いするような人物であったなら、ただのポピュリストだということで評価されることもなかっただろう。

個人の時代」と言われて久しいが、この度の選挙では皮肉なことに、自分勝手な個人主義者(リベラリスト)は自壊したかに見える。それは同時に、リベラリストによるポピュリズム政治が終焉を迎えつつあることを意味している。これからの政治は空想的な建前ではなく、現実的な本音が語られる時代になっていくことを期待したい。

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