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松阪市民病院の在り方のリセット



一時は、中央か済生会のいずれかを指定管理者とする公設民営化が方向づけられた市民病院の在り方検討が、コロナ渦でストップしています。ただ、コロナ渦でわかったことは、コロナ患者の治療において市民病院の役割は大きかったということです。コロナのような事態を想定していない中で描かれた市民病院の将来像だったので、見直しは必至となっています。

竹上市長が平成30年(2018年)8月に設置した「第二次地域医療構想をふまえた松阪市民病院の在り方検討委員会」(委員長・伊佐地秀司三重大学病院長)。

同委員会では、昨年2月、「市民病院は地域包括ケア病床を中心とした病院に機能転換し、高度急性期、急性期、慢性期、在宅医療をつなぐ地域医療当をつなぐ地域医療の架け橋となるべきである」とする提言を市長に提出しました。

簡単に言うと、現在のように命にかかわる重篤な患者を看たり手術をする急性期医療は中央や済生会に任せ、市民病院は急性期から回復した患者の退院までの受け皿となり、地域の医療や介護、在宅につないでいく役割を担うべきというものです。ただこのような機能転換をすると、診療報酬は少なくなり、経営が成り立たなくなるので、中央か済生会に経営委託(指定管理者)する流れが描かれていました。

ちょうどそのタイミングでコロナ渦が襲ったのです。

櫻井正樹・市民病院長は、地域単位で説明会を始めたところでしたが、そのまま中断しています。

コロナのような事態を予想していなかったのは、医療関係者も同じで、市民病院の在り方の検討の中ではまったく想定に入れていませんでした。もし、提言のような病院になっていたら、コロナ渦のもとでは市民病院は、いまのような役割は果たせなかったことでしょう。

厚生労働省は、コロナ渦を受けても、病院の統廃合と、急性期病床を減らし回復期病床を増やす「地域医療構想」の方向性は変えない方針です。ただ、その一方で、令和6年(2024年)に改定される都道府県医療計画に新型コロナウイルスなどの感染症対策を盛り込むための検討をするよう、県には言ってきています。

松阪市の医療体制(南勢志摩医療圏の一部)も、県が策定する医療計画のもとで病床数などが割り当てられてきます。これまでも感染症対応はとっていましたが、結核を想定したもので、南勢志摩医療圏では松阪市民病院に2床、伊勢日赤病院に2床確保されているだけで、県全体でも22床あるだけでした。それだけでは明らかに不足します。松阪市民病院の在り方検討委員会が市長に提出した提言に従って急性期病院でなくなれば、今回のコロナ渦での市民病院の役割は果たせなくなるので見直しが必要です。その協議は令和3年度には始まりそうです。

現在、県内の病院ではコロナ渦で392床を確保しています。この中、松阪市民病院も、あらかじめ用意されている2床だけでは当然足りないので、病棟内のフロアのかなりのところをコロナ対応用に空床を用意しました。空床として、通常だと患者7人に対して看護師1人の割合であるのを、患者4人に看護師1人が張りつける手厚い態勢でのぞんでいます。市民病院では、このような医療体制をとることができるのは、現在の医療従事者の数があるからにほかなりません。

市民病院から人手のかかる急性期病床を無くすという方向性はもったまま、コロナ対応を想定した医療体制を確保するというのが厚労省の方針です。その中、市民病院をどのような病院にしていくかを決めるのは県であり、そのもとで知事から検討を委任されている松阪地域医療調整会議(事務局は県)ということになります。

しかし、病院の設置者は市長であり、その権限のおおもとは市民にあります。

市民病院の在り方は、平成29年(2017年)6月から平成30年(2018年)3までの第一次検討委員会、平成30年8月から令和2年3月までの第二次検討委員会の場で議論されてきましたが、市民への説明は平成30年の5月から7月にかけて21か所で行われたあと、令和2年の初めにやりかけたままです。

あらためて、市民が状況を知る機会が必要です。決まったことの報告ではない場を。

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