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自由経済秩序と民主主義、さらには国際協調をどう修復するのか ~「東京会議2021」基調講演 報告~

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 世界10カ国のシンクタンク代表と有力政治リーダーをオンラインで結び議論する「東京会議2021」2日目となる23日は、基調講演に続き、「世界は国際協調と自由経済秩序をどう修復するのか」、「新型コロナ-人類の危機に世界はなぜ対応を間違えたのか」をテーマに、2つの議論が行われました。

バイデン政権下で国際社会に戻ってきた米国と
先進民主主義国家がコンセンサスをつくっていくことが重要

 基調講演では、まず環境問題への関心が高く、西側のリーダーとしては唯一、北京語を流暢に話すケビン・ラッド氏(元オーストラリア首相、 米アジア・ソサエティー政策研究所所長)です。米中対立についても多くの意見を発信しているラッド氏は、自由な国際秩序は米国のグローバルな力の基盤で、開かれた国家、市場、社会システムを前提とし、国際行動の規範を重視し、開かれた社会や政治、経済制度やルールを構築してきたと説明。そして、こうした規範が、国連安保理、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)など国際機関の構成要素になって、行動してきたと振り返りました。

 その上で、米国はトランプ政権下でアメリカファーストの保護主義政策を取り、WTOの改革には否定的な態度を示し、パリ協定からも脱退を表明する等、米国のグローバルなパワー、リーダーシップはマイナスな形で衰退し、グローバル・ガバナンスそのものに疑問符が付けられてしまったと指摘。その米国が残した空白に入り込み、リーダーシップを取ろうとしているのが中国だと強調し、2020年後半には、中国は世界の経済大国になり、軍事的にもそれまであった米国とのギャップが小さくなって、東アジア、西太平洋でのパワーバランスが大きく変わっていく、との見方を示しました。

 では、その世界秩序の変容を前に、自由諸国はどうすればいいのか。ラッド氏は、大国間が分断していると、国際的ルールに基づいた国際秩序は将来、脅かされてしまうと危惧を示し、バイデン米大統領が同盟国や多国間のネットワークの国際社会に戻ってくることを歓迎しました。その上で、日本、韓国、インド、インドネシア、カナダ、ドイツ、フランス、英国などデモクラシー10(D10)と呼ばれる民主国家のグループを作り、コンセンサスを得ていくことが重要であり、そうした動きが将来の国際法を支え、自由で開かれた政治、経済、社会に繋がっていくのだ、と世界の将来像を語りました。

自由を取り戻すため、ラスムセン氏からの3つの提案

 次いで、デンマーク首相や北大西洋条約機構(NATO)事務総長を務め、コペンハーゲン民主主義サミットの創設者でもある、アナス・フォー・ラスムセン氏が講演しました。前回の来日は、2019年の「言論NPO設立18周年記念フォーラム」の時でしたが、その後の16カ月で、「世界は様変わりした」と驚きを隠しません。コロナウイルスによるパンデミックの発生で、私たちの生活は多くの制限が課されただけに、今後は、「全ての人のために、より自由で、より公正で、より民主的な、より良い復興をしていかなければいけない」と、コロナ騒ぎに慣れ、疲れている人々に、ラスムセン氏は呼びかけました。

 ラッド氏同様、バイデン大統領の下、米国がリーダーとしての役割を取り戻そうとしているのに期待するラスムセン氏は、以前よりは「楽観的だ」と強調しました。地元のEUも、「自らの脆弱性について、以前ほどナイーブ(世間知らず)ではなくなりつつあり、同盟関係を修復し、ルールに基づく国際秩序に貢献するために、多国間主義を再建することに集中できるようになった」と話します。

そこで、ラスムセン氏は、自由を取り戻す闘いを開始する方向について、①多国間主義復活のために、民主的同盟を確固たるものにする、②テクノロジーを民主主義のために活用していく、③自由世界にとって、インド太平洋には新たな民主的アプローチが必要である、と3つの提案を行いました。

 さらにラスムセン氏はNATOには一国への攻撃は、全ての国への攻撃である、という条項があることに触れ、今、世界では豪州のワイン生産者は不当廉売の報復として、中国の保護主義の力を見せつけられ、台湾産バナナは中国への輸出が禁止になり日本の業者が支援に乗り出すなど、現在の世界情勢で、「攻撃は銃口だけではなくなっている」と指摘し、経済的攻撃を受けている国が、統一的な支援を求めることに合意すべきだ、との考えを強調しました。

 また、新しいテクノロジーについて、「バイデン政権は新興技術連合を結成する青写真を提案するようで、いいスタートになる」と言うラスムセン氏は、「権威主義国家は、プライバシーを無視した格好でデータを吸い上げている。自由な世界はシンプルなアプローチを必要としていて、同盟国が分断すれば失敗する」と注意を呼びかけました。

 最後にラスムセン氏は、インド太平洋について、EUにはまだゲームプランはなく、「商業的利益と価値観の間で揺れ動いている」と突き放すように語り、「価値観よりも利益を優先すれば、利益も価値も低下してしまう」と冷静な見方を示しました。その上で、「EUは、世界の民主主義を守ることに真剣かどうかのリトマス試験紙のようなもの」指摘し、「自由を求めるものほど強く、大きな力はない。民主主義の国家同盟を構築するために、共に仕事を始めよう」と力強く語り講演を締めくくりました。

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