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国民の一人として安倍政権に望むこと

10兆円の大型補正予算を組む。71兆円という歳出枠を撤廃する。それが新政権の考えだ、と。さぞかし土建業者の皆さんは喜んでいるでしょう。来年の夏には参院選が控えているので、とにかくその時までは経済を上向かせておく必要があるのでしょう。

デフレだ、デフレだと言っている日本。しかし、その日本国内においても、被災地は景気がいいのです。さばききれないほどの土木工事があるからです。

仮に、今回の大型補正予算に加え、来年度の予算においても公共事業を復活させることにすれば、日本全国が被災地のように少しは景気が上向くでしょう。景気がよくなるんだったら言うことないじゃないか、ってですか?それは私だって嬉しくないことはないのです。

でも、公共事業を実施するためにさらに借金が増えることを憂慮しているのです。私たちのように二宮金次郎さんの銅像があった学校で学んだ世代は、貯蓄の大切さを身に染みて感じているのです。貯蓄をすればこそ‥否、貯蓄をせずお金を使ってばかりいたら、いつまで経っても安定した生活は望めない、と。

日本という国だってそうだったのです。国民が貯蓄に励んだからこそ、そのお金でインフラを整備したり、重要な産業が復活することができたのです。

しかし、世の中が不況になると、一転して貯蓄は悪とみなされ、その反対に消費は礼賛される。

ズバリ聞きます。

大型補正予算を組むだけではなく、歳出枠を撤廃してまで公共事業を増やそうとするのですか?そうでなくても、年金や医療費の関係で歳出が膨らむ一方だというのに、こうして公共事業を再び肥大化させてしまえば、プライマリーバランスを均衡させるなんて考えもつかなくなってしまいます。

そうしてガンガン公共事業を実施すれば、流石にインフレが起きるでしょう。いえいえ、ハイパーインフレになるなんて言いません。恐らくマイルドなインフレになるでしょう。とは言っても、土木工事関係の人件費はどーんと上がる。だって、土木関係に限れば、被災地では人手不足のような状況になっているのですから。

その上、さらに公共事業が増えれば、そうした状況が今後は全国的に広がるでしょう。中国などの安い製品が日本に流入してきていることが物価下落の大きな要因になっているとは言っても、土木作業を海外にアウトソーシングすることはできない訳ですから、どうしても国内の労働者に頼らざるを得ません。

だから、強じんな国土を創るという名の下で公共事業が次から次に実施されれば、必ず全国的に人手不足になり、そして、土木関係の人件費が上がるでしょう。そして、土木作業員の人件費が上がれば、その影響が他の産業にも及ぶ、と。但し、物価全体に与える影響は限られているために、いきなり2桁のインフレ率になることはないでしょう。

おめでとうございます。

マイルドなインフレを引き起こしたかったのですよね。もう日銀の尻を叩く必要はなくなるのです。3%とか4%とかの物価の上昇が起きるでしょう。

では、その後はどうなるのか?
さらに公共事業を拡大し続ければ、インフレ率が5%とか6%に達することになるでしょう。
さあ、そうなると新政権はどのように対応するのでしょう?
新政権は、何も2ケタのインフレ率を望んでいるのではないのです。だから、恐らくインフレ率が5%に達しそうになる前にブレーキをかけようとするでしょう。では、そのために具体的に何をするのか?
そうなると今度は一転、日銀は何をしているのだということになるでしょう。
物価目標値は2%~3%程度であった筈だ、と。

当然のことながらゼロ金利政策はストップ。
そして、利上げに転じるでしょう。

しかし、少々利上げをしてもインフレ率が低下することはないでしょう。

何故か?というのも、そうしてインフレが起きた原因が、公共事業を一度にどんと増やして人手不足の状態を作ったことにあるからです。
幾ら日銀が金融引き締めに転じても、公共事業を減らさない限り、人件費の高騰は止まらないでしょう。

では、新政権は、思い切って公共事業をストップすることができるのか?
これが実はなかなか難しい。
何故かと言えば、土木業者にしてみれば、仕事が増えるというので人手を増やして体制を拡充したのに、急に公共工事が減らされてしまえばお手上げになるからなのです。

いずれにしても、そうして目標値を超えたインフレが起きるようになれば、それまでの政策を反転させなければいけません。
つまり、金融は引き締めに転じ、財政出動はストップする、と。
でも、そのとき、日本経済はどうなっているのでしょう?
一時の間、日本中が景気がよくなったからそれで良しとすべきなのでしょうか?
税収はどうなっているのでしょう?
景気が良くなったおかげで、公共事業を実施するために増えた借金は、税収増で返済することができるのでしょうか?
どう考えたって、そんなに巧く行くはずはないのです。

そもそもそうした税収増が見込めるのであれば、財務省が公共事業の増額に反対するはずなどないのです。財務省は、何も増税を一番の目的にしている訳ではありません。そうではなくて、借金体質を少しでも改めることができればそれでいいのです。つまり財政健全化を実現する、と。

だから、仮に、上げ潮戦略で財政健全化が実現する見通しがあるのであれば、誰が勧めなくても財務省自身が上げ潮戦略を採用するでしょう。税率を上げた結果消費が落ち込めば税収はむしろ落ちるではないかと、財政当局を批判する向きもありますが、そんな理屈は彼らだってよく知っているのです。

実際、レーガン大統領時代の米国がその逆の社会実験をした訳ですから。少なくても財政当局は、税率を上げて消費が一時的に抑制されるかもしれないが、長期的にみたら、その方が税収が上がると踏んでいるのです。

話が逸れましたが、仮にインフレ目標値を設けて、そして首尾よくマイルドなインフレが実現しても、その後さらにインフレ率が高くなれば、今度は政策を大転換する必要があり、その時の反動が怖いのです。米国でも1979年に就任したボルカーFRB議長がインフレ退治のために政策金利を20%ほどにまで引き上げたことがあったのです。

言っときますが、その当時、アメリカでハイパーインフレが起きた訳ではないのです。2桁のインフレ率になっただけなのです。

でも、それでも、インフレ退治の金融政策が経済に大きな混乱を引き起こしたのです。私は言いたい。

急激に公共事業を増加させるようなことはすべきではない、と。
やるにしても、事業が十分消化できるかどうか見極めた上でやるべきだ、と。
譬えるなら、山で遭難して何日も食べ物を口にしていなかった遭難者にいきなり御馳走を食べさせるようなことをするな、ということなのです。

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