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選択的夫婦別姓制度の実現を目指す

 明治31年に制定された民法においては、婚姻にあたり夫か妻の姓に揃える「夫婦同姓制度」が定められ、現在まで120年以上続いている。ところがこの制度は、婚姻にあたり氏の変更を望まないものにとっては自由の侵害となり、個人の尊厳を傷つけるという問題を本来的に内包している。

 日本国憲法第24条では、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として云々」として、両性の平等と個人の尊厳を高々に謳っており、夫婦同姓は、その両方に抵触することとなる。また昨今の現実的な問題としては、少子化に伴うひとりっ子が増えているため、自分の氏姓を残したいという人々の希望やプライドを打ち砕くケースが増加している。さらにキャリアを積んでいる人が結婚によって姓を変えられることになると、それまでの実績や経歴が生かされなくなることがしばしば発生する。

 これらの問題を解決するには「夫婦別姓」の制度を導入するしかないが、別姓を強要するものではなく、あくまで「選択」なので同姓を続けたい人には何の支障も不利益も生じない。むしろこの制度は人々の生き方の多様性を尊重するものであり、若者の意識の変化にも適合するものである。

 一方現行制度の中でも、国際結婚の際は別姓が選択できることは案外知られていない。この場合は夫と妻の姓を並べる「ダブルネーム」あるいは「複合姓」というケースが多いようだが、裁判所の判断を仰がなければならないなど、手続きがとても面倒である。別姓に加えて「複合姓」という制度についても検討してみる価値はありそうだ。

 ところでこれまで何回となく議論されてきた「選択的夫婦別姓制度」が日の目を見なかったのは、「家」という伝統が崩されるのではないか、家族の一体感がなくなるのではないかという、伝統的で根強い価値観が強いからだ。しかし世界各国では別姓の方が圧倒的に多く、別姓制度によって家族の絆が薄れると言ったケースは聞いたことがない。氏姓の問題と家族の営みは別の世界のことではないのだろうか。

 さらに子どもがどちらの姓を受け継ぐか混乱するのではないか、可哀想ではないかとの意見もあるが、幼少の時はよく夫婦で話し合ってどちらかの姓に決めれば良いし、子どもが分別をわきまえる年齢に達したら、子ども自身が自分の姓を選択できるようにすれば良いのではないか。

 しかし自分の姓をどうするかということは極めて個人的マターであり、実にデリケートであり、個人の尊厳に関わることである。したがって別姓と同姓のどちらかが勝った負けたという議論にすべきではないし、感情的になってはいけないと思う。日本の未来の発展に向けて、多様性を認めることや選択の幅を広げることは、とても有意義なことである。

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