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日本の長期金利は反転上昇するのか

どうやら拙著「超低金利時代の終わり-そして、日銀による国債引受のリスク-」[Kindle版]で指摘したようなシナリオに向けて動き出してきたような気配である。もちろんまだ不確定要素は多々あるが、今後は超低位となっていた金利、特に長期金利の上昇の動きに注意すべきかと思われる。

「超低金利時代の終わり [Kindle版]」にも書いたが、これにはいくつの要因が重なっている。最も影響が大きいと思われるのは、欧州の信用不安の後退である。リーマン・ショックが冷めやらぬ中で発生したギリシャを主体とした欧州の信用不安が、独仏を中心としたユーロ諸国の必死の努力により、少なくともユーロ崩壊といった最悪の状況には陥る可能性が後退した。

そのひとつの象徴的なものとして、たとえば格付け会社スタンダード・アンド・プアーズが12月18日に、ギリシャの格付けを「選択的デフォルト」から「Bマイナス」に引き上げたことも上げられる。また、ECBがギリシャ国債を、流動性供給オペの適格担保として再び認めたことも好感され、19日にギリシャの10年債利回りは、3月の債務再編以来の最低水準をつけている。

リスクの後退については、ユーロ圏の国の長期金利の動きにも現れている。ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアなど債務危機が維持されていた国々の長期金利は低下傾向を示しており、これに対して安全資産と言われた米国や英国、そしてドイツの長期金利は今後の動向次第でもあるが底を打ってきた可能性がある。

もうひとつの懸念材料でもあった米国の財政の崖問題も、最終的な落としどころを探る動きとなっている。このため米国経済への影響もさほど大きくはならないと予想される。そもそも予測できる危機には、当然ながらそれを取り除こうとするであろう。

このように世界的なリスク回避の動きに変化が生じてきており、それが欧米の長期金利に影響を与えている。当然ながら同じ安全資産として買い進まれていた日本国債にも影響が出ることが予想される。つまり日本の長期金利にも上昇圧力が加わることが予想される。

リスク回避の動きの反動が起きるとなれば、外為市場では円高圧力が後退しその修正の動きが強まることが予想される。そこに日本の貿易赤字の拡大なども拍車をかける要因となる。12月19日に発表された11月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、貿易収支は9534億円の赤字と、この赤字額は比較可能な1979年以降で過去三番目に大きな赤字額となった。これにより、2012年の貿易収支額は過去最大の赤字になる公算が大きくなったそうである(日経新聞)。

実際に外為市場ではすでに円安の動きが強まり、ドル円は84円台、ユーロ円は112円台をつけている。この円安もあり、日経平均株価は12月19日に1万円の大台を回復した。このあたりはひとつの節目ではあるが、通過点となる可能性がある。この円安・株高も日本長期金利の上昇要因となる。

そんな中にあって、12月16日の衆院総選挙で自民党が圧勝し26日にも安倍新内閣が発足する。すでに大型補正編成の動きも出ているなど、今後は財政拡大策がとられることが予想され、それは国債の増発とともに財政規律に対する懸念も強めさせることになり、これは直接的な長期金利の上昇要因となりうる。

また、安倍政権は日銀に対して2%程度のインフレターゲットとアコードを押しつけようとしている。今後は強力な金融緩和策がとられることも予想されるが、これについては金利の低下要因というよりも、財政ファイナンス等への連想も働くことで、こちらもむしろ長期金利の上昇要因となる可能性がある。

まだ安倍政権の今後の動向も不透明であり、海外でもたとえばユーロ圏ではイタリアの政情不安等も出てきている。さらに注意すべきは12月の日銀短観でも示されたように足下の景気悪化という問題も存在する。円高調整による株高にも限度がいずれ出てくることも予想される。

しかし、長期金利についてはこれまでのように低下基調を強めるようなことは予想できず、むしろ当面は超低金利からの反発が予想される。長期金利の1%割れが続くことそのものが以前では予想しづらかったはずである。1%割れの要因のかなりの部分がユーロ危機に基づいていたものであったとすれば、ある程度の金利上昇はあってもおかしくはない。問題はそこに財政リスクプレミアムがオンされてしまうかどうかであり、そのようなリスクシナリオも一応、念頭に置いておく必要もあろう。

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