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では朝に三つ、暮れに四つやるとしよう

現役世代の賃金抑制、65歳まで雇用…NTT(読売新聞)

 NTTグループは、社員を65歳まで継続して雇用するため、40~50歳代を中心とする現役世代の賃金上昇率を抑える新賃金制度を2013年10月から導入することで、労使間で大筋で合意した。

 企業に雇用延長を義務づける改正高年齢者雇用安定法に伴うもので、今後、他の大手企業でも同様の動きが広がる可能性がありそうだ。

 新賃金制度では、成果に応じた賃金部分を増やすことで、40歳代からの平均賃金の上昇を緩やかにする。成果を出している社員は収入が増える可能性もある。現役世代の賃金を抑えることで、60歳以上の社員に働きがいのある賃金を支払うようにする。

 従来の制度では200万円台前半だった60歳超の年収を、新制度では技術の熟練度などに応じ、300万~400万円まで引き上げる方針だ。

 

 年金支給開始年齢が加入者の同意なく65歳まで引き上げられて久しいわけで、では従来の一般的な定年退職時期であった60歳から65歳までの空白の5年間をどうすべきなのか、一応の答えとして企業への雇用延長の義務づけが法制化されることになったものの、完全にお門違いの筋違いの批判も少なくありません。先日の記事でも、我が国では代替的な補償を特権と呼ぶと書きましたけれど、この雇用延長への取り組みもまた例外ではなさそうです。60歳以上の雇用が延長されるために若者の雇用機会が脅かされる云々と、この年金支給開始年齢引き上げの代替策に噛みつく人もまた目立つところです。じゃぁ、定年で失職したのに年金ももらえない無収入の親を子供が働いて養う社会になれば良いとでも言うのでしょうかね(まぁ自己責任教の信者なら、当然そうだと答えることと思いますが)。

 実際に働いたことがある人なら、若年層と60歳以上の雇用延長対象者とでは任される仕事の範囲が全く異なる、ほとんど競合しないことは理解していると思います。それより問題なのは、60歳以上の賃金を引き上げる代わりに、40~50歳時代の賃金を抑え込んでおくことの方です。そりゃ雇用延長期間だからと行って非正規雇用並の年収200万円台前半(その辺の零歳企業ではなく天下のNTTですよ!)というのも酷な話ですが、40~50歳の内の取り分を減らして減らした分の支給時期を60台に遅らせるだけ、これぞ朝三暮四というものでしょう。雇用側からすれば、賃金の支給を後回しにしているだけです。年金受給開始年齢まで働いた場合の生涯賃金に差はなくとも、雇用延長を望まず60歳前後で会社を退いた人の取り分は少なくなる、この色々と微妙な新制度が「他の大手企業でも同様の動きが広がる可能性」云々と示唆されていますけれど、働く人にとってはあまり利のあることではなさそうに見えます。

 

「夫は働き、妻は家庭」20歳代男女で大幅増(読売新聞)

 内閣府は15日、「男女共同参画社会に関する世論調査」結果を発表した。
 
 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」と考える人が、2009年の前回調査に比べ、10・3ポイント増の51・6%となった。世代別では、20歳代が19・3ポイントの増加で、伸び率が最も高かった。1992年の調査から一貫して賛成派が減り、反対派が増え続けていた傾向が、今回初めて反転した。
 
 20歳代を男女別で見ると、「妻は家庭を守るべきだ」と考える男性は55・7%(前回比21・4ポイント増)、女性は43・7%(同15・9ポイント増)に上った。宮田加久子明治学院大教授(社会心理学)は、「長引く就職難や景気低迷で、若者たちは先行きに強い不安を抱き、家庭をよりどころにしようとしているのでは。東日本大震災の後、家庭を大事にする意識が強まったことも要因として考えられる」と分析する。

 

 ……で、これまた先日の記事では「選挙で若者の意思を~」的な主張を取り上げたものですが、実際のところ若者が何を望んでいるのか、それは中高年層とどこまでかけ離れているのかは先に考えられるべきでしょう。例えば、この家族観と言いますか男女の役割意識です。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」と回答したのが全体では51.6%、一方で20台は男性55.7%、女性は43.7%と平均すれば全体よりも僅かに少ないですが、概ね先行世代と若年層の意識の差はなくなっていると言えます。老人と子供は嗜好が似るとも聞くところ、この頃は若い人も中高年層も、あんまり考えることや好むことが変わらなくなっているフシもあるのかも知れません。

 希少性は価値を生みます。どれほど有用な物質でも世に溢れていればそう高価にはならない、しかし単なる装飾品にしかならない代物でも数量が限られ入手が困難なものであれば高値が付くものです。今なお男性よりは不利な扱いはあるにせよ、昔年に比べれば女性がバリバリ働いて会社でのし上がるのは容易になった、その一方で甲斐性のある男性を捕まえて夫の稼ぎで暮らすというのは格段に難しくなったのがこの十数年であったと言えます。そこで、より難易度の高い方に希少価値を見出す女性が増えたとしても何ら驚くには値しないでしょう。

 ただ、女性はともかく男性側は「女も働け」という方向に意識がシフトしてきた印象が強かっただけに、20代の男性の回答結果は少し意外に感じました。むしろ「会社で」働かない専業主婦層を不当な受益者のごとくバッシングの対象に捉える人が多いのではと思っていましたが、それはたぶん私がネットを見過ぎなのかも知れません。女も働け(ただし男の邪魔をしない範囲でな!)、といった風情のミソジニーはネット上でこそ勢いがあっても、現実の若い牡たちは意外に昔(=実は割と最近)気質で「妻を養う」という意識に溢れているものなのでしょうか。何とも、ご立派なことです。農家のヨメなんかを思い浮かべてみれば分かるように、元始、女性は太陽である以前に労働力でしたが、そんな古い時代までさかのぼるのではなく、謂わば自民党全盛時代(現代とは異なる意味で「保守」という言葉が使われていた時代!)の気質を見せているとも言えそうです。まぁ、会社で働きたくない気持ちは分かりますし、最愛の人に会社で働くという苦痛を与えたくない気持ちなら理解できます。

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