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『スマホ脳』 時間泥棒から身を守るための脳科学

スマートフォン、略してスマホを使わない日は私は一日もない。朝はスマホの目覚ましで起き、眠気ざましにSNSをベッドの上でだらだらチェックし、起きぬけに計った体重と体脂肪率を登録し、顔を洗ったりヒゲを剃ったりしている間に音楽を流し、YouTubeで朝ヨガの動画を流して軽く体を動かし、カレンダーアプリでその日の仕事の予定を確認し、朝食をとった後は教育系のYouTubeの動画を視聴し、仕事前に英語発音練習アプリでウォーミングアップをし、いざ仕事を開始すると矢のように各種連絡がテキストやチャットアプリに入るなど、朝起きてから休むことなく稼働し続けている。

私の一日の使用時間は3ー4時間ほどであり、平均より少ないのではないかと思うが、それでも起きている時間の多くをスマホと向き合っていることには変わりはない。

2人の子供にもスマホを買い与えているが、親としては彼らの使用頻度の方も気になる。高校生になる娘は、一時期目が飛びでるような時間をスマホに費やしてきていたが、自分なりにコントロールする術を模索して、決して少なくはないが、ティーンの平均よりは少ない時間におさめ上手く付き合っているが、中学生になる息子は伸び盛りの時期にスマホの利用時間も伸び盛りのようで、少し助けが必要なようだ。

本日紹介する『スマホ脳』は、本棚に平積みされているベストセラーであるが、自分自身、並びに家族のスマホ利用に頭を悩ませている方は必読の書と言えるだろう。本書が面白いのは、スウェーデンの精神科医であるアンデシュ・ハンセン氏が、ドーパミンが人間の脳の中で放出される仕組みを解説した上で、時間泥棒を企む企業がその脳の仕組みを如何に活用しているかを、説得力をもって語っている点だ。

また、本書で語られているドーパミン放出のメカニズムは、決してスマホ利用時間という特定のトピックに限定した知識ではなく、自分の感情やストレスのコントロールに活用できる汎用的な知識だ。

もう少し内容を深堀する。本書で語られている脳とドーパミンの関係を私なりにまとめると下記のような感じだ。

  • ドーパミンは、人を何がしかの行動に駆り立てるために放出される
  • 現代の人間の脳は、サバンナで狩猟をしていた頃の原始人の頃から変化は特に無く、サバンナで生き抜くことができるような行動を駆り立てるようドーパミンを放出する
  • 具体的には、環境の変化を見逃さないために、感知した新しい情報の内容を確認させるよう仕向けたり、集団からの孤立を避けるために人との繋がりを維持するような行動を駆り立てる、などの働きをする

太古の昔は、周囲の環境を理解すればするほど、より早く危険を察知することができ、また生き延びるための食糧を手に入れることができた。なので、新しい情報を探そうとする本能が人間にはあるのだという。また、技術の全く発展していなかった時代は、人は集団で暮らさなければ生き延びることができなかった。集団から外れるということは、それそのものが死を意味していたため、社会的な繋がりを作る行動を駆り立てるように脳は機能するのだという。

Facebookのアイコンに赤い更新通知が表示される、Twitterのアイコンに未読の通知が表示される、投稿した内容に知人や友人が「いいね!」を押してくれる、ブログで書いた記事がバズる、などのことに微弱ながらも刺激を受け、ついスマホに手を伸ばししまう、というのは脳科学的には理にかなった行為であり、その脳の仕組みを理解した上で頻繁にユーザがアクセスしたくなるような仕掛けを各SNS企業がかけている、というのが本書の肝である。

この現代人の脳の仕組みが狩猟時代から変わっていなく、それが現代社会に適合していないというのは、ダイエット関連の書籍にはよくでてくる話であるが、それをスマホと結びつけたというのが私には新しかった。

新しい視点を提供してくれたという点で読んだかいがあったのだが、少し物足りなさも残る。本書の中盤は、スマホが如何に集中力や記憶力を削ぐのかが、各種の実験結果と共に語られている。それはそれで興味深いし、感覚的にもわかるのだが、原典がきちんと表示されていないので、アカデミックさが欠けており私には物足りなかった。

また、後半部では、いよいよ解決策が語られるのだが、その内容が「運動しよう」であったため、正直こけてしまった。運動の効果を否定するものではないが、本書の骨子からの論理の飛躍感が否めない。もっと、「逆に脳のこういう特性を利用して、このように利用時間を減らすのが良い、時間泥棒からこのように身を守ればよい」、などの提案があったほうがより面白くもあり、参考になったと思う。

最後は若干勝手な見解を述べたが、本書は一読の価値あり、ということには何ら変わらない。本書で、紹介されている時間泥棒から身を守るための脳科学は、スマホの利用に少しでも悩んだことのある人は、必修事項だ。本エントリーを読んでいるスマホは横において、本書を手に取ることをお勧めしたい。

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