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「監査役の乱」ならぬ「監査役の権限濫用」?

来年早々にも出版予定の新刊書の原稿チェックに追われておりまして、あまりブログを更新する時間もないまま過ごしております。お寄せいただいている常連の皆様のコメントにも満足にご回答できず誠に申し訳ございません。年末年始も原稿チェックが続きそうなので、もうしばらくお待ちいただければ幸いです。

(さてここから本題になりますが)3年ほど前、監査役が経営執行部と対立し、会社法上の監督権限を行使する企業紛争事例が目立ちました。当ブログでも、そういった事例をご紹介するたびに「監査役の乱」といったフレーズを用いて、マスコミや法務関係者の方々にも(そこそこ)ウケていたことを記憶しています。

ところが最近は「監査役の乱」というよりも、「監査役の権限濫用」といったほうがよいのではないか・・・と考えられる問題も発生していることが報じられています。本日(12月19日)にTDNETでリリースされておりますダイヤ通商さんの「不正調査委員会の終了に関するお知らせ」を読みますと、元監査役の善管注意義務違反の有無が委員会の調査対象となっていたようです。結論としては大株主と会社側が和解的解決を図ることができたため、調査委員会を続行する意味がなくなり、当該元監査役さんの職務執行の法的責任の有無は判断されずじまいになりました。ただし、同調査委員会からは「監査役は党派的な行動を慎み、特定の株主ではなく、株主共同利益の観点から、その職務を執行しなければならない」とのコメントが出されています。

この元監査役の方は、調査委員会設置に関するお知らせを読みますと、取締役会等に何等の報告もなく営業活動を行ったり、社内ルールに従わずに自社株式を市場で売却していたことが、そもそも監査役の職務として善管注意義務違反にあたるかどうか、が問題となっていたようです。大株主からの推薦で社外監査役として選任されていましたので、おそらく大株主の利益になる行動が目立っていたものと思われます。

実は同様の監査役の行動については、私自身も「噂」として耳に入ることもありますし、また最近発売された金融法務事情1958号の巻頭でも「監査役制度への過度の期待は禁物」とのテーマで、某著名な弁護士の方が、類似の「監査役リスク」を紹介されておられます。監査役の持つ監査権限は会社法の度重なる改正によって強大なものになっています(ただ、現実にはなかなか行使されないというだけのことでして)。もし、この監査役の目が取締役にではなく、大株主に向いている、ということになりますと、時として大株主の利益を最優先するために強大な権限が行使される、ということも十分に考えられるところです。たとえ権限が行使される、というほどのことでなくても、監査役であるがゆえに優先的に入手しえたビジネス情報を、大株主側に有利に活用してしまう、ということもありえます(これは監査役の忠実義務違反?)。

このたびの会社法改正の話題のなかで、親会社監査役が子会社の社外監査役に就任できなくなる、といったことが実務上で大きな影響を及ぼすものとされています。親会社の監査役であれば独立性に問題がないのだから、子会社の社外監査役に就任してもよいのでは・・・とも思えるのですが、いくら独立性があるとしても、親会社出身の社外監査役であれば、やはり親会社の利益を優先して子会社の監査活動を行ってしまうのではないか、との危惧が残りますので、そのあたりが「親会社監査役もダメ」となった趣旨ではないかと思われます。

もちろん監査役は非業務執行役員たる立場にありますので、自ら会社の業務執行に勤しむというのは監査役の権限の枠内では収まりきれない行動です。自らの権限行使に付随した職務執行であれば問題がないのですが、そもそもすべての株主の共同利益のために行動すべきなのですから、出身母体に有利な取引を画策する、ということになると善管注意義務に反する行動に該当することも十分に考えらると思います。問題は、だれがこういった監査役の権限濫用行動に待ったをかけることができるか、ということころかと。取締役の違法行為については監査役が指摘する立場にありますが、監査役が善管注意義務に反するおそれのある行動に出ている場合、仲間である監査役からの指摘がないと口に出して問題化する、ということがむずかしいのかもしれません。

監査役の権限が強化され、また実際にモノ言う監査役さんが増えれば増えるほど、今度は当該権限を「濫用」してしまう悩ましい事案も増えてくるようです。他にも同様の事案があれば、また過去に振り返って検証してみたいと思っています。

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