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大手紳士服チェーン4社の苦戦続く AOKIが4800円で販売する「アクティブワークスーツ」に期待

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コロナ禍で苦戦が続く紳士服大手4社

共同通信社

青山商事、AOKI、コナカ、はるやまの大手紳士服チェーン4社の大苦戦が続いています。

青山商事の2021年3月期第3四半期連結は、売上高が1057億4900万円(対前期比32・3%減)、営業損失156億2800万円、大幅減収赤字となりました。通期の見通しも同様で売上高1723億円(同20・9%減)、営業損失128億円、経常損失103億円、当期損失292億円です。

AOKIホールディングスは21年3月期連結見通しを売上高1420億円、営業損失75億円へと下方修正しました。

はるやまホールディングスの21年3月期第3四半期連結は売上高243億8600万円(同27.6減)営業損失38億8000万円でした。

コナカの21年9月期第1四半期決算は売上高159億4000万円(同12・8%増)、営業損失14億9800万円となっています。

コナカの売上高が増えたのは決算期の問題で、この第1四半期は2020年10月1日~2020年12月31日までの3カ月間で、この間はまだ緊急事態宣言が出されていなかったからでしょう。20年9月期決算では大幅減収赤字に陥っています。

約15年前から懸念されていたビジネススーツの需要減

大手4社の大苦戦の理由は、間違いなく新型コロナ感染によるものです。店舗休業・営業時短に加えテレワークの増加であることは言わずもがなです。

各社の店舗営業時間・日数が大幅に短縮されているだけでなく、テレワークの増加で従来型のビジネススーツ着用の回数が激減しました。その結果、買い替え・買い足し需要も減ったのです。

しかし、大手4社の苦戦傾向は2020年の新型コロナによるものだけではありません。15年くらい前から今後の苦戦については予言されていました。

まず、2005年のクールビズ導入です。2005年は半袖ワイシャツが爆発的に売れましたが、従来型の夏用スーツの売上高は減りました。

最高気温35度にもなる日本の夏に、好んでジャケットを着用したい人はほとんどいません。それが政府のお墨付きで着用しなくて済むのですから、わざわざ着る人はいません。その代わりにこれまで手持ちの枚数が少なかった半袖ワイシャツが飛ぶように売れたのです。

しかし、その一方で夏用のジャケット類は売れにくくなりました。シャツメーカー各社は長年積み上がってきた長袖ワイシャツの袖を切って半袖に改良して、不良在庫を一掃することができたといいます。

2007年には団塊世代のリタイアが始まるので、ここでもビジネススーツの需要減少が懸念されました。団塊世代というのは1947~1949年生まれを指し、2007年には60歳を迎え定年退職となるはずでした。

しかし、雇用延長が始まり2007年で完全引退した人数は当初の予想よりも少なかったのですが、その団塊世代も2014年には全員が65歳を越えてしまい、2015年以降はほとんどの人が定年退職してしまいました。

2021年だとこの人たちは72~75歳になります。現役を続けている人はごく一部でしょう。

定年退職を迎えてから、「わざわざ」ビジネススーツを着る人はまずいないでしょう。従って買い足し・買い替え需要もなくなります。

若者、女性など新たなターゲット層の開拓は好調

世の中にはスーツ好きの男性もいますが、仕事のない日でもビジネススーツを着る人はよほどの変わり者で少数派です。

そして2010年以降、クールビズに端を発したビジネススタイルのカジュアル化・簡素化は年々進んできましたから、コロナ以前から、カジュアル化の進行と団塊世代のリタイアによる需要減によって、メンズビジネススーツというジャンルが不振分野となることは知られていました。

大手紳士服チェーン4社もただ、手をこまねいていただけではありません。それなりに対応策を矢継ぎ早に打ち出してきました。

まず、取り組んだのが若者をターゲットとしたツープライススーツショップの展開です。このツープライスという業態はオンリー(京都市)が99年に新規出店した「ザ・スーパースーツストア」が嚆矢となります。

続いて青山商事がザ・スーツカンパニーを、コナカがSUIT SELECT(スーツセレクト)を、はるやまがパーフェクトスーツファクトリーを、AOKIがスーツダイレクト(現店名オリヒカ)を立ち上げ追随しました。

続いてレディーススーツの取り扱いです。男が減るなら女でカバーをするというわけです。2000年代前半と比べるとレディーススーツコーナーが各社とも大幅に増えています。

今では、就活女子学生のほとんどがこの大手4社のレディーススーツを着ています。

スーツのカジュアル化は各社いまいちの過去も

Getty Images

次に手を打ったのがカジュアル業態でした。ツープライスとレディーススーツはそれなりに成功しましたが、結果から先に述べるとカジュアルはほとんど成功しませんでした。

青山商事は一早く1994年にキャラジャというカジュアルショップの出店を開始しています。

この1994年というのはユニクロが中国地方から他地域へ進出し始めていた年で、恐らくそれに触発されたのではないかと考えられますが、その後鳴かず飛ばずの状態が続き、ユニクロの足元にも及ばないまま、2018年に完全撤退します。

続いて、リーバイスストアのフランチャイズ展開、アメリカンイーグルの日本国内導入などにも着手します。

リーバイスストアのフランチャイズは今も続いていますが、アメリカンイーグルは2019年で子会社である日本の事業会社をアメリカ本国のアメリカンイーグル本社に譲渡して終了しました。

AOKIはマルフルという関東圏のジーンズチェーン店を傘下に吸収しましたが、結局業績が上向かず、社内に統合し大幅縮小。現在ではその部署が存在しているのかどうかWEBサイトを見てもわからないほどで店舗も全てなくなってしまいました。

はるやまは、経営破綻したテットオムや運営会社の遊心クリエイションが解散後のイーブスなどを続けざまに買収しました。

しかし、2019年にイーブスは別会社に売却されてしまいました。売れていれば売却されなかったはずです。また同様に2019年にテットオムも売却されており、こちらもうまく行かなかったことがわかります。

ビジネススーツの売上減少を補うため異業種参入

Getty Images

コナカはあまりカジュアルには積極的に手を出しませんでしたが、2020年にレディースバッグで有名なサマンサタバサを連結子会社化しました。しかし、旬を過ぎていたサマンサタバサはその後も業績が上向くことなく、今に至ります。

最後に取り組んだのが異業種への参入です。この分野で最も進んでいたのはAOKIでしょう。

結婚式場、カフェ、カラオケ店運営など完全にアパレルとは別物の異業種に果敢に取り組んでいましたが、2020年3月からの新型コロナの拡大により、この分野も相当なダメージを負ってしまいました。

以上のようにこれまでの経緯を見てくると、これら大手4社が決して無策のまま座していたわけではなく、不成功に終わった取り組みもありましたが、メンズビジネススーツの減少を補填するために様々な施策に取り組んでいたことがわかります。

コロナ禍で注目を集める「機能性セットアップ」

そして、今、注目されているのが、新型コロナ以降の在宅勤務に適した機能性セットアップです。

現在、世間的に注目を集めているのはAOKIの上下セット4800円のアクティブワークスーツ、同じく上下セット4800円のワークマンのセットアップ、リブランディングにユナイテッドアローズの重松理名誉会長を起用したオアシススタイルウェアが展開する「WWS」ではないかと思います。

いずれも共通しているのは機能性合繊主体の生地を使用することでシワになりにくい、とか、速乾性がある、などの機能性が高いことです。

しかし、こうした商品が注目されていたのは実はコロナ以前からのことになります。だいたい2015年頃からミズノやデサントなどのスポーツウェアメーカーと協業したアクティブスーツが開発されただけでなく、各セレクトショップも合繊主体のセットアップを2万円台くらいで発売するようになりました。

ラルディーニというイタリアの高級ブランドでさえ、合繊を使用してシワになりにくいパッカブルセットアップを発売するようになっていました。

そして、2015年頃からすでに繊維・アパレル業界では従来のウールスーツではなく、合繊セットアップを着る人が増えていました。

理由は1、安いから 2、機能的で便利だから です。特に出張時にはこうした機能性セットアップを着用する人が増えていました。

こうした流れは、新型コロナの在宅勤務でさらに加速したといえます。

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