記事

「ウケる話はカットしちゃダメだよ!」くりぃむしちゅー上田晋也“中1娘と入浴騒動”の裏側 『経験 この10年くらいのこと』より #1 - 上田 晋也

 さまざまな番組で司会を務め、テレビで目にしない日はない人気芸人くりぃむしちゅーの上田晋也氏。独創的な例えツッコミはお笑いファンからの評価も高い。

【写真】この記事の写真を見る(5枚)

 そんな上田晋也氏がはじめて書き下ろしたエッセイ集『経験 この10年くらいのこと』(ポプラ社)が話題を呼んでいる。ここでは同書の一部を引用し、“お笑いモンスター”として着々と歩を進める愛娘とのほほえましいエピソードを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

◆◆◆

小1の娘に「『面白いことがあってね』という入り方はやめなさい。」

 私は、自分の子どもたちに、自分と同じ仕事に就いて欲しいとは、つゆほどどころかプランクトンの涙ほども思わない。特に、長女には面白い要素などまったく求めていないし、真面目にすくすくと育って欲しいと思っている。しかし、職業病というのか、もはや病気というのか――。

「娘が小学校1年生の時、学校から帰ってくると、ハイテンションで私に話しかけてきた。

「あのねお父さん、きょう、学校でおもしろいことがあってね」

 普通のお父さんなら、とびっきりの笑顔で喋り始めた娘の話を、菩薩のような微笑みで聞いてあげることだろう。しかし、私は自分のセンサーに引っかかったことを口走ってしまった。

「あのね、何か話をする時に『面白いことがあってね』という入り方はやめなさい。どんだけ面白いことがあったんだろう?』と、聞く人のハードルが上がるから。そういう時は、『今日、学校で不思議なことがあってね』とか『腹が立つことがあってね』という風に、聞いてる人の意識を他に持っていかせるようにしなさい」

 と。私は7歳の娘になんのアドバイスをしてるんだろう――。娘もきっとポカーンとしてるだろうなー、と思って娘の顔を見やると、娘は「なるほど、わかりました、はい!」と真剣な表情で、しかも私に対して初めて敬語で返答した。


くりぃむしちゅー上田晋也氏 ©getty

 いかん、いかん、芸人を育てるつもりなどないのだから、こんなことは教える必要も、インプットさせる必要もないんだ、と反省したつもりだったのだが、その後も、娘が学校のクラスアンケートで、面白い女子1位に選ばれた、と聞くと「よし、良くやった!」と、星野監督ばりに抱きしめて褒め讃えたり、娘が変顔をしたり、面白い動きをした時に限って、「もう一回それやって」とアンコールをお願いし、その都度ビデオカメラを回して記録する、という行動を繰り返してしまっていた。

気付くと「お笑いモンスター」に成長していた

 そして、娘が小学校3年生のある日のことである。

 娘と幼稚園の年中の息子と私の3人でお風呂に入っていた。私は体を洗いながら、思わず屁をこいた。すると真横にいた5歳の息子が「あーっ、おとうさん、いまオナラしたでしょ?」とニヤニヤしながら、問いかけてきた。

 「いや、お父さんじゃないよ、お前がしたんじゃないの?」

 息子「ぼくじゃないよ、ぜったいおとうさんだよ」

 「いや、お父さんじゃないから。じゃあお姉ちゃんじゃないの?」

 その時娘は、髪の毛をシャワーで洗い流しているところで、私と息子のやり取りはまったく聞いていなかったようであった。

 「ん?なんか言った?」

 「いや、お父さんオナラしたでしょ、って言うから、お父さんじゃないよ、お前だろ、って言ったら、僕じゃないって言うから、じゃあお姉ちゃんじゃないの、って言ってたの」

 「ちょっとやめてよー、失礼な。私じゃないわよー」

 「じゃあさ、誰がオナラしたと思うか、せーので指差そうよ」

 息子「いいよ」

 「いいよ」

 3人「せーの!」

 それぞれ、オナラの犯人だと思う人を指差した。息子は私を指差した。当然である。私が犯人なのだから。私は、そこまでの話の流れもよくわかっていないであろう娘を指差した。そして娘が誰を指差しているのか確認すると、娘はなんと娘自身を指差していた。それを見た息子が驚いた顔で問い詰めた。

「なんでおねえちゃんオナラしてないのに、じぶんのことさすの?」

 その問いに対する8歳の娘の返答に、今度は私が驚愕した。

「あのね、こういう時は本当かどうかなんてどうでもいいの。その時面白いと思うほうをえらびなさい」

 私は思った。モンスターを育ててしまった、と。

 この話を後輩芸人にすると、「いやー、それは確かにモンスターですね。だって2年目の芸人でも、そこで自分を指差せるかどうかわかりませんよ」と、自分のライバルが登場したかのように神妙な顔つきで呟いていた。

 その後も、娘のモンスターぶりは成長の一途を辿っており、小学校6年生の時、同じくクラスアンケートで、今度は面白い女子2位になった時、娘は、その結果が載っている学級新聞を恐る恐る私に差し出しながら言った。

「お父さん、ゴメン! 2位になっちゃった。私、皆にバンバン突っ込んでたのに、突っ込み側の人間って評価されにくくない?」

 と、デビュー4、5年目の突っ込み芸人が味わうジレンマに陥ったりしていた。

「一緒にお風呂」でバカにされるよりもウケを選んだ中1娘

 そして、その翌年のこと。『おしゃれイズム』の収録で、ゲストに俳優の堤真一さんがいらしたのだが、トークの途中、堤さんが幼稚園児の娘さんの運動会を見て泣いたりするし、娘が結婚するなんて、とても考えられない、という話をされた。そして、「そのうち『一緒にお風呂入らない!』とか言われたらショックだなー」と、少々暗い表情でおっしゃったので、私が自分と娘の話をした。

「ウチの娘は中学1年生なんですけど、いまだに一緒に僕とお風呂入るんですよ。それでこの間一緒にお風呂に入ってる時に、こんなやり取りをしましてね――」

 「お父さんは最近、毎回お前と一緒にお風呂入るの今日が最後なんだろうなあ、と思って入ってるよ」

 「なんで?」

 「だって、もし同級生とかに、お父さんと一緒にお風呂入ってるとかバレたらバカにされるかもしれないじゃん」

 「とっくにバカにされてるんですけど!」

 「は⁉」

 「友達にもバレてるし、バカにされてるに決まってるじゃん! でもいいじゃん、別に。私が一緒に入りたいんだから」

 「......」(ジーン)

 この話を聞いた堤さんは、「じゃあ、ウチの娘もまだまだ当分一緒にお風呂入ってくれるかなぁ?」と、明るい表情になってくれた。

 続けて私は、スタッフに向かってこう言った。

「でもゴメンなー、この話オンエアはしないでくれる? 放送されると、さらに多くの友達にバレて、娘が『アンタお父さんと一緒にお風呂入ってんの?』とかバカにされたり、イジメられたりするかもしれないし、それを機に俺と一緒にお風呂入ってくれなくなったりするかもしれないし」

 そしてその日、家に帰ってこの話を娘にして、こうなだめた。

「でも大丈夫!オンエアはしないでくれって言ったから、ちゃんとカットしてくれるから」

 すると娘は、私の肩口辺りを強目に引っ叩いてこう言った。

「なんでカットしてくれ、なんて言ったの! その話ウケるじゃない!」

 私は再び思った。モンスターを育ててしまった、と。

「は? 本当にオンエアしてもいいのか? それで次の日から、バカにされたりするかもしれないよ?」

「そんなのはどうでもいいよ! ウケる話はカットしちゃダメだよ!」

そして娘はモンスターとしてさらなる成長を遂げる

 娘から許可を得て、私はその場でスタッフに電話をかけた。

「カットしてくれって言った部分、もちろんオンエア上いらないならカットしてかまわないけど、オンエアしたいのに俺がカットしてくれって言ったから、カットしなきゃ、っていう考えは持たなくていいよ」

 数週間後、そのくだりはオンエアされていた。

 人づてに聞いたところによると、この話がオンエアされた後、私はネットで散々叩かれたらしい。やれ「上田はデリカシーがない!」とか、やれ「娘さんがかわいそうだ! これで娘さんがグレたらどうするつもりだ!」とか。俺がオンエアして欲しいと言ったわけじゃないんだけどなぁ。カットしちゃダメって言ったの、娘、いやモンスターなんだけどなあ。

 その娘も、最近私が入っているお風呂に入ってくることはさすがになくなった。淋しいような、女性としては真っ当に成長をしているのかな、というちょっとホッとしたような複雑な心境だ。と、ちょうどこの文章を書いている時に、娘からLINEが来た。開いてみると、ひたすら変顔写真のオンパレード。やはり真っ当には成長していないようだ。

【続きを読む】相方からかけられた「終わったな」の一言…くりぃむ上田が尋常ではなくヘコんだ“世界一受けたい授業事件”とは

相方からかけられた「終わったな」の一言…くりぃむ上田が尋常ではなくヘコんだ“世界一受けたい授業事件”とは へ続く

(上田 晋也)

あわせて読みたい

「くりぃむしちゅー」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    兵庫県うちわ会食のうちわ配布が一転“とりあえず中止”に 県職員は「驚きです」

    BLOGOS しらべる部

    04月14日 20:21

  2. 2

    カンニング竹山さんへの小池都政抗議文入手。都民ファースト都議は番組ドタキャン

    上田令子(東京都議会議員江戸川区選出)

    04月14日 17:59

  3. 3

    大阪のコロナ 病床 医療者が足りない もう自衛隊しかない?

    中村ゆきつぐ

    04月15日 08:19

  4. 4

    毎日飲んでるトリチウム水。原発処理水、海洋放出を巡る3種の反対・慎重論について検証する

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    04月14日 09:49

  5. 5

    緊急事態宣言はやればやるほど効き目がなくなります

    おか たかし (元・大田区議会議員・国民民主党)

    04月15日 08:42

  6. 6

    河井元法相公判供述・有罪判決で、公職選挙に”激変” ~党本部「1億5千万円」も“違法”となる可能性

    郷原信郎

    04月14日 11:29

  7. 7

    経産省と「幹部の過半数」に見切られた東芝・車谷社長「男子の本懐」

    新潮社フォーサイト

    04月15日 08:48

  8. 8

    田中邦衛さんのこと  『北の国から』と北海道らしさと、さだまさしの破壊力

    常見陽平

    04月14日 14:22

  9. 9

    厚労省職員5人が新型コロナウイルスに感染 老健局の感染者は15人に

    ABEMA TIMES

    04月15日 08:12

  10. 10

    "最後の行方不明者"探す両親。報道陣を面罵する家主…熊本地震5年、地元紙記者の葛藤

    塩畑大輔

    04月14日 10:25

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。